『メアリと魔女の花』(米林宏昌監督)を発表したスタジオポノックが、短編アニメーションの制作レーベルとして「ポノック短編劇場」を新設し、第一弾となる『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』が8月24日に公開される。このほど、制作現場の模様が一部公開され、西村義明プロデューサーが各作品についてコメントした。
本作は、『メアリと魔女の花』の米林宏昌監督の自身初のオリジナルストーリーとなるカニの兄弟の大冒険ファンタジー「カニーニとカニーノ」、高畑勲監督の右腕として活躍してきた鬼才・百瀬義行監督が実話をもとに描いた母と少年の人間ドラマ「サムライエッグ」、宮崎駿監督作品の中心を担ったアニメーター・山下明彦監督が、見えない男の孤独な闘いをスペクタクルアクションで魅せる「透明人間」の3つの短編からなる。
6月某日、東京・武蔵野市にある制作会社スタジオポノックで『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』の制作が佳境を迎えていた。プロデューサーの西村義明は「ポノック短編劇場」というレーベルの第1弾として発足した新プロジェクトには、様々な挑戦が課せられている、と3作品について語る。
昨年公開された『メアリと魔女の花』を発表した米林が題材に選んだのは、カニの兄弟が父を探しに生まれて初めての旅にでる物語。昨年末、第2子が誕生し出産のために母親の不在を乗り越えていく長男の姿を目の当たりにした米林は、自身がいまこの瞬間に描ける物語として、初のオリジナル脚本に挑戦。西村は「麻呂さん(米林の愛称)が描こうとしているのは現実と幻想の合間です。美しい手書きのアニメーションが持ち味ですが、そこに優れたCGクリエイターの技術を組み合わせることで手書きの限界を超えた新しい世界が出来上がると思いました」と語る。
実話をもとにした、たまごアレルギーをもつ少年と母親、二人の生きる力強さに触れた百瀬。西村は「きわめて写実的に描くというアプローチもありますが、それでは実写を作るのと変わりありません」と制作にあたり、新たな表現技法を模索し試行錯誤を重ね「絵本がそのまま動いて」いるような画面を実現。水彩、色鉛筆、CGなどの様式を駆使し一見相反するドキュメンタリー的な緊張感を浮かび上がらせようとする。家族の優しさと強さ、儚さを包容する百瀬ワールドが満を持して登場する。
「透明人間」を手掛けた山下を「人物を動かすのは天才的にうまい」と評し、「そんな山下さんだからこそ、目には見えない透明人間をどう動かすのだろうと思ったことが企画の発端。透明人間の物語は現代の孤独と不安の再生の隠喩になっており現代性があり哲学的なテーマも含んだ色々な見方ができる作品になりました」と西村は振り返る。あらゆるアニメーション表現を用いて繊細かつアクロバティックに描いたスペクタクルアクションに仕上げている。
『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』
8月24日(金)全国ロードショー
「カニーニとカニーノ」
監督:米林宏昌
音楽:村松崇継
声の出演:木村文乃 鈴木梨央
「サムライエッグ」
監督:百瀬義行
音楽:島田昌典
声の出演:尾野真千子 篠原湊大 坂口健太郎
「透明人間」
監督:山下明彦
音楽:中田ヤスタカ
声の出演:オダギリジョー 田中泯
企画制作:スタジオポノック
配給:東宝
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