怪談・オカルト研究家の吉田悠軌が登壇!『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』初日トークイベントレポート

オカルト否定派の心理学者が超常現象の調査で遭遇する恐怖体験を描いた、マーティン・フリーマン出演のホラー映画『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』が7月21日に公開初日を迎え、同日にヒューマントラストシネマ渋谷にて行われたトークイベントに、TBS番組「クレイジー・ジャーニー」でも有名な怪談やオカルト研究家である吉田悠軌(よしだゆうき)が登壇した。

まず、映画の感想を聞かれた吉田は、「監督さん2人(ジェレミー・ダイソン&アンディ・ナイマン)は、ホラーも好きなんだろうけど、怪談も好きなんだろうな、という感じでしたね。(2人は)怪談をよく分かっている」とコメント。MCから“怪談”と“ホラー”の明確な違いを聞かれると、吉田は「キッパリと分かれている訳ではないんですけど、恐怖文化という意味では同じですが、ホラーと怪談は分けて考えて欲しいですね」と答え、「ホラーというのは例えば、怪物にワッと出てきて襲われるような恐怖、命の危険にさらされて、何度かそれと緊張を保ちながら、逃げたり、戦ったりするという感覚。殺人鬼に追いかけられるような恐怖ですよね。恐怖ってそれだけじゃなくて色んな感情のヒダがあるんですよ」と説明。すると、ここまで話したところで、吉田は左前方の客席に目をやり、突然「え、そこの人、何で首が逆さまになっているんですか?」と観客に語り掛け、会場も「え?」と一瞬静まりかえり、すぐに笑い声に包まれた。続けて吉田は「…って、なったら怖いじゃないですか(笑)。これは殺人鬼に追いかけられる感情とはまた違う感情ですよね。怖さの質が違うので、笑いにも色んな種類の笑いがあるように、恐怖にも色んな恐怖があるんです。怪談というのは、ホラーよりはそこまで露わじゃなく、ちょっと隠されていて、想像させられるものだと思います。直接、命の危険にさらされるというよりは、何か異世界のものが一瞬だけふっと現れて私たちに接触してくる。そういった恐ろしさですね」と語った。

古くから多くの怪談がある日本と“オカルトの本場”イギリスの共通性について、吉田は「イギリス人はオカルト全般も好きなんですが、怪談も好きですね。実はイギリス人と日本人は世界で双璧を成すくらい“怪談”好きなんです。どちらかといえば他の国々が好むのは“ホラー”なんですよね。血がバーンと飛び出るような。でもイギリス人って、怪談的な怖さが好きなんですよね。イギリスと日本って、どちらも島国で様々な文化の到着点にもなっています。様々な民族の人々が流れてきて、文化や歴史が地層のように重なり、今でも残されている。ストーンヘンジとかもそうですし。異世界のものがすぐそばでリアルにある中で、そういうものに接し続けてきた。(両国とも)そうして千年、二千年と培ってきたから、恐怖の感性が共通しているんだと思います」と、二つの国に共通する感性の理由を語った。

今回、吉田は劇場パンフレットにもイギリスのおすすめの心霊ツアーについて寄稿したが、そこに書かれていない話についてもMCから質問が。吉田は、一時期イギリスで流行った“泣く少年の絵”を挙げ、「1960年頃にデパートとかで売り出されていて、インテリアとしてその絵のレプリカが売れたようです。実は、(絵に描かれている)その子は家を火事で失くしてしまった孤児で、その子も“火をおこす能力”があったようなんです。画を描いたのはイタリアの画家なんですけど、その男の子が“自分の周りのものが全部すぐ燃えてしまうので悲しい”と泣いている姿を書いたのがその絵なんです。その画家のアトリエもその画家自身も、その後火事で燃えてしまって、男の子はその後、交通事故で亡くなったらしいです。その後、イギリスのある地方では、消防士たちがまず気付いたようですが、よく最近火事が起こる、その燃えた家の跡からは、その“泣く少年の絵”が燃えずに残っているというのです。それがイギリス『サン紙』がゴシップ的に記事にして大流行となったようで、絵を持つ人々がその絵を燃やしまくったようです」と驚きの話を語ってくれた。さらに、「まだ絵はいくつか残されていて、今でもebay(オークションサイト)で買えます。僕の友人も買いましたし(笑)」と明かした。

実際に幽霊に会った事はあるかと聞かれると、吉田は「僕は見たことは一切ないです。霊感もないですし。周りには体験している人はいますが」とコメント。映画では、オカルト否定派の教授が心霊現象は“ない”と信じトリックを暴いていくが、改めて実際はいると思うか聞かれると、「絶対いると思っていないし、絶対いないとも思っていないですね。いるってなった時点で、それはもう幽霊じゃない。科学的に証明された時点で、それはもう心霊現象じゃなくなる。いるのか、いないのかって宙ぶらりんになっているのが心霊現象だと思います。それが怖いし面白いところ」と答えた。また、最近はJホラーが世界の映画に影響を与えていると言い、「Jホラーの成功以降、怪談的な表現というのは、それ以前と比べると増えたかなと思いますね。ホラーの中でも、何か幽霊とかがフッと通り過ぎるとか、特に不条理な何かが起こるとかの怖さとか、そういう気持ち悪い怖さや日本人的感性のものが増えたかなとは思います。Jホラー自体も、元はイギリス的な感性を参考にしていたりするんです。それはイギリスで活躍した米国人作家、ヘンリー・ジェームズの小説『ねじの回転』というホラー小説だったり、映画だったりがJホラーに影響を与えていると思います」と語った。

そして、今月の「月刊ムー」への紹介記事の中で、日本とイギリスの関連について吉田が書いた記事の話題へ。19世紀後半から20世紀初頭にかけて台頭した、幽霊の存在を科学的に証明できるのではないかという“英国心霊主義”について言及すると、吉田は「本作には『SHERLOCK/シャーロック』のマーティン・フリーマンが出演しているということもあり、彼のファンが多く(この会場に)来場されていると思いますが、あのコナン・ドイルも(英国心霊主義に)ドはまりしたんですよね。それで、当時、三菱の創始者である岩崎弥太郎も英国ケンブリッジ大学にいたので、影響があったのかな?といような記事を書いたんです。心霊現象は合理主義のコインの裏表というようなところがあって、いわゆる近代合理主義から生まれたシャーロック・ホームズが、観察して、分析して、解明するという一番の象徴的なキャラクターじゃないですか。でも、そこまで行き過ぎると、そうじゃない物、そこから漏れるものが、逆にホラーとか幽霊とか心霊にくるっと反転したりするんですね。そのあと、コナン・ドイルは神秘主義、心霊主義にドはまりしていましたし」と説明した。続けて、「日本ではというと、推理小説とホラー表現などは相性がいいんですよね。江戸川乱歩や横溝正史もそうです。観察して、分析して、解明するという完全に近代自然科学の手続きで、逆にそこからこぼれ落ちるものが、神秘、心霊、オカルトと相性がいい。異世界とか、死とかは解明できないものですから。解かれない不思議に惹かれるのはイギリス人の特徴だし、日本人も似たようなところがありますね」と語り、イベントを締めくくった。

『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』
7月21日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて公開中
監督・脚本:アンディ・ナイマン&ジェレミー・ダイソン
原作:アンディ・ナイマン&ジェレミー・ダイソン「ゴースト・ストーリーズ」
出演:マーティン・フリーマン アレックス・ローサー ポール・ホワイトハウス アンディ・ナイマン ジル・ハーフペニー

【ストーリー】 心理学者のフィリップ・グッドマン教授は、イギリス各地でニセ超能力者やニセ霊能者のウソを暴いてきた。ある時グッドマンは、長らく行方不明になっていた憧れのベテラン学者・キャメロン博士から、「自分ではどうしてもトリックが見破れない」という3つの超常現象を調査するよう依頼を受ける。初老の夜間警備員、家族関係に問題を抱える青年、妻が出産を控えた地方の名士…3人の超常現象体験者に話を聞いてトリックを暴くため、グッドマンは旅に出る。しかし、そこで彼を待っていたのは、信じがたい怪奇現象の数々と想像を絶する恐怖だった…。

© GHOST STORY LIMITED 2017 All Rights Reserved.