名作『スタンド・バイ・ミー』、『恋人たちの予感』、『ミザリー』のロブ・ライナー監督による初監督作品で、架空のロックバンド「スパイナル・タップ」の全米ツアーに密着した、1984年製作のモキュメンタリー映画『スパイナル・タップ』が6月16日より公開中。このほど、7月1日に新宿武蔵野館にてトークショーが行われ、音楽家で弦楽器奏者の高田漣と、LOVE PSYCHEDELICOのNAOKIが登壇した。
偶然にも同い年の高田漣とNAOKI。本作を最初に観たときの衝撃についてNAOKIは「15、6年前、GREAT3の高桑圭君がVHSを渡してくれたんだよね。バンドのミーティングをするときにも『スパイナル・タップ』を流しながらやるから、あれを観ながら真面目な話をしなくちゃいけないの。ミーティングの途中でボリューム11のシーンになったりすると“ちょっと待って!ここ観て!”って止められたりして(笑)」と話し、高田は「僕も10数年前。pupaをやっていたときに高橋幸宏さんとかが好きで。で、すぐにDVDを買って観てみたんだ」と振り返った。
バンドマンにとっては本当に身につまされる映画だという本作。高田が「全く脚色されてないような映画だよね。普通に楽屋からステージまでの道で迷ったりするもんね」というと、NAOKIは「そうそう。ステージに上がる前にメンバーで円陣を組むんだけど、舞台袖でやるとお客さんに聞こえちゃうからちょっと離れたところでやるの。でも、あんまりにも離れたところでやると、ステージに行くまでに冷めちゃったりさ…」と言い、二人で「あるある、だからライブ前に観ないほうがいいよね」と笑った。ステージセットの誤発注のシーンから、「ステージで実際に起きたアクシデント」について話が及ぶと、NAOKIが「絶対に名前は出せないある大物ミュージシャンの話だけど…」と切り出し、「ツアーも半分くらいまで差し掛かったところで、ある有名ミュージシャンが地方のリハが終わりそうなときに、ステージの緞帳を指さして“これ動くの?”って聞いたんだって。で、スタッフは“動くけど、もう幕を動かすリハーサルはできません”って止めたんだけど、その大物ミュージシャンは“10曲目が終わった時に幕を一旦下ろして、ほどよいタイミングでまた上げよう”って譲らなかったの。それで本番、10曲目が終わった後に実際に下ろして、1分くらいたってからまた上げたんだけど、思った以上に幕が上がるのがすっごく遅くて。そのツアーを何公演も観ているお客さんなんかザワザワしちゃって(笑)。こういうの本当にあるんですよ!」と話すと、高田は「やっぱり音楽やる人ってどこか社会不適合者みたいなところあるから、変な演出すると失敗するんだよね」と自虐気味に笑った。劇中で、ライブ中にワイヤレスが関係のない音声を傍受してしまうシーンがあるのだが、それも「バンドマンあるある」のことなのだそう。高田は「例えば、外でやってるとアンプが無線を傍受しちゃったりね」と話すと、NAOKIは「スパイナル・タップのおかげかもしれないけど、今はちゃんとワイヤレスのチャンネルが何番を使えるか確認してやるよね。リハーサルやってて、イントロを弾こうと持ったら、まだ弾いてないのに『キル・ビル』のメロディーが流れてきて(笑)。隣の部屋で布袋さんが練習してたってことがありました(笑)」と笑った。
6月30日に発売された公式Tシャツ第2弾の話に及ぶと、Tシャツの裏面に印刷されたスパイナル・タップのキャンセルされた公演も含めた全公演のラインナップを観て、「本当にキャンセルが多いよね~!4公演もキャンセルされてる!よくできてるよね~!」と2人とも大爆笑。
最後に、高田は「この映画って1984年に作られていて、今見ているとこの時代にこうゆうバンドが本当にいたように見えるんだけど、実際はヴァン・ヘイレンがやっと出始めたくらいで、スパイナル・タップみたいなバンドは新しいんだよね。むしろ先取りしてる。だからすごい作り込まれているというか、ディテールまでこまかく作り込んでいるから、34年たっても笑えるんだと思う。何度見ても新しい発見があって本当に面白い作品です。ぜひ繰り返しみてほしい」と言い、NAOKIは「まさしくそう。30年たっても、こうやって新しいお客さんが観ても笑えるのは作り手が愛を持って作っているからだと思う。でも、若いミュージシャンは(ショックを受けちゃうこともあるので)観ない方がいいかもね(笑)」と冗談まじりに話した。
『スパイナル・タップ』
6月16日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開中
監督:ロブ・ライナー
製作:カレン・マーフィ
出演:ロブ・ライナー マイケル・マッキーン クリストファー・ゲスト
配給:アンプラグド
【ストーリー】 「スパイナル・タップ」は60年代にデビューし、かつて一世を風靡したイギリスの人気ロックバンド。ビートルズ・スタイル、フラワーチルドレン…時代とともに音楽性も変化させてきた彼ら。そして時は80年代、最先端であるハードロック・スタイルを武器に現在に至っている。そんななか、アルバム「Smell the Glove」のリリースが決定、大々的な全米ツアーを行うことになった!彼らの大ファンである映画監督マーティ・ディ・ベルギーは、ツアーに密着を決意。映し出されるのは、結成秘話からメンバーたちの苦悩、歴代ドラマーの怪死、トラブルから感動のステージまで、次々と明かされるファン必見のエピソードの数々。伝説のロック・ドキュメンタリー『スパイナル・タップ』がここに誕生する―!!
©1984 STUDIOCANAL All Rights Reserved.