小笠原諸島で自然と共に生きる男とその光景を捉えた、映画監督の豊田利晃が贈るドキュメンタリー映画『PLANETIST』が、2019年に公開されることが決定した。
昭和43年(1968年)6月26日に米国の統治下から日本へ復帰、平成30年(2018年)に日本へ返還されてから50年が経過し、“東洋のガラパゴス”と呼ばれ、世界でも類い稀な自然に囲まれた小笠原諸島。この島で自然と共に歩み生きるのは、宮川典継、65歳。サーファーたちのレジェンドで、野生のイルカと泳ぐ世界初のドルフィンスイムを確立した「海のターザン」だ。宮川の尽力なくして小笠原諸島世界自然遺産の誕生はなかったと言っても過言ではない。島には、何かを求めてやってくる者や、人生の壁にぶち当たった者、心に傷を持った者たちが多数訪れ、宮川はそんな旅人たちに、小笠原の自然を魔法の装置のように提示し興奮させる。
本作では、窪塚洋介、渋川清彦、GOMAらミュージシャンや役者、アーティストたちが、宮川の案内によって島で想像力を解き放ち、見たことのない小笠原が呼び出され、その歓喜の瞬間を捉える。監督・企画・撮影は、『泣き虫しょったんの奇跡』(今秋公開)が控える映画監督の豊田利晃。『アンチェイン』(2001)以来のノンフィクション作品にして、2014年から制作開始し、足掛け5年の月日を経て2時間46分の超大作を完成させた。
■豊田利晃監督 コメント
僕が島へのゲストを決めて、宮川典継が場所、時間、日にち、風、波、島の脈動の流れを読み、この島を祝福するような、祭宴を作り上げる。その時、その場所でしか起こらない奇跡。それを、地球の流れを読み、成立させていく。その祭宴に参加する者は、地球との一体感を感じて、それぞれが、それぞれの想像力を刺激され、何かを見る。僕は、それを『怪獣』と例える。これが、このドキュメンタリーというには作為的な映画の運動だ。地球と遊ぶこと。そのドリーミングな一瞬を観客と共有したいと思う。素敵な時間である。この一瞬のために人生があったのではないかと錯覚する。僕が死ぬ前に思い出す景色がこの映画に収められている。このドキュメンタリーの終わりは時間だ。2018年。小笠原返還50周年。結末はわからない。ただ時間だけが迫っていく。これ以上はないと思える光景が最後に見えるだろう。そんな夢を僕は見ている。南の島へ行くといつも戦争の記憶と出会う。その記憶は放置されたまま現在もそこにある。辺境の島は国家の姿が丸見えだ。小笠原諸島は国策で作り上げられてきた。明治から昭和初期にかけて父島要塞と呼ばれた軍事島に変貌した。硫黄島の硫黄は火薬の燃料だ。硫黄の発掘とコカの栽培。第二次世界大戦の重要な拠点になった。伊豆大島から15歳のときに硫黄島に渡ってきたのが、宮川典継のおじいさんだ。戦争の時代をくぐり抜け、世界自然遺産の平和な島への変貌。その記憶をひとつに、2018年の光景として、この映画のクライマックスになるだろう。それが、プラネティストとしての宮川の決意である。宮川は小笠原で自然保護の仕事に従事している。島の生態系を守ること。それが仕事であり、彼の生き方である。世界的に見て、生態系が守られている場所は珍しい。小笠原が東洋のガラパゴスと呼ばれるように。生態系を守ることは地球を守ることである。
『PLANETIST』
2019年公開
監督・企画・撮影:豊田利晃
音楽監督:ZAK
音楽:大野由美子 コーネリアス ヤマジカズヒデ
ナレーション:小泉今日子
出演:宮川典継 GOMA 窪塚洋介 渋川清彦 中村達也 ヤマジカズヒデ
配給:VAP
©PLANETIST FILM PARTNERS