リリー・フランキー、是枝裕和監督、城くん&みゆちゃんも登壇!『万引き家族』三世代試写会イベント レポート

今年5月に開催された第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて最高賞のパルムドールを受賞した、是枝裕和監督の長編14作目『万引き家族』が6月8日より公開となる。それに先だち、6月3日、東京・神楽座にて、親子や祖父母と孫などの三世代の家族を観客として招待した「三世代試写会イベント」が行われ、リリー・フランキー、城桧吏(子役)、佐々木みゆ(子役)、 是枝裕和監督が舞台挨拶に登壇した。

映画の家族にちなんで、祖父母、父母、娘さん、息子さんのように、世代をまたいだ家族が集まった会場から、温かい拍手で迎えられ登場したリリー、城くん、みゆちゃん、是枝監督。「三世代で同じ劇場で映画をみる機会ってあまりないと思うし、こうやって一緒にみたことは将来ずっと覚えていると思うので、とても良い企画だと思いました」(リリー)、「みてくれてありがとうございました!」(城くん)、「えーと…来てくれてありがとうございます!よろしく願いします!」(みゆちゃん)、「刺激的なタイトルでショッキングな設定だったけど、三世代の暮らしぶりは今僕らが失ってるものがあって、どこかで共感や懐かしいと思いながらも犯罪だから悪いことだしといったふたつの気持ちでみてほしいと思ってつくった映画です。今日は楽しんでいただけたらと思います」(是枝監督)とそれぞれから挨拶があった。

カンヌについて質問が及ぶと、是枝監督はカンヌでの反応について「授賞式の後の映画祭の公式ディナーで、とにかく役者が素晴らしいといろんな方に声をかけていただきました。『ブレードランナー 2049』の監督でもあるドゥニ・ヴィルヌーヴには子役が素晴らしかった!どう撮ったの?そこで僕らは恋に落ちたと言われ、台湾の俳優のチャンチェンには、家族が縁側で見えない花火を見上げるシーンがとにかく素晴らしかったと言ってくれました。審査する側と審査される側ではあるんだけど、純粋に映画が好きな者同士で感想をいい合いながら過ごした感じで、その時間がとてもよかったです」と明かし、日本での反応については「同級生とかからもおめでとうと連絡をたくさんもらって、少し顔が浮かぶのが難しいと思うひともいましたけど(笑)、嬉しかったです」と語った。

世界的な評価を得た本作だが、完成した作品をみての感想について問われると、城くんは「自分が映ってることが不思議に思いました。良い作品に出来上がったなって嬉しかったです」とコメント、一方のみゆちゃんはなかなか答えが出てこず、その様子をみかねた是枝監督が耳元でささやく形でアシストし「海で遊んだことがすごく楽しくて、オーディションを受けられてよかったと思いました!」と元気よく答え、会場からは笑いと拍手が起こった。

パルムドール受賞発表を受け、世界中から注目が集まっている中で、日々の生活に変化などがあったか問われると、リリーは「一人でいるときに、おめでとうと言われると面映ゆい感じで…でもお祝いだから!ってシャンパン開けられて、ただ飲みたいだけじゃねーかってことがあったりもしますけど、周囲の方が喜んでくれるのは純粋に嬉しいですね」といい、子供たちふたりは学校で大人気なようで、城くんは「学校のひとからおめでとうとかすごいねって言われます。でも、生活に変化はないです」、みゆちゃんは「“佐々木みゆ”ちゃんだよねって声をかけられたり、学校で四年生が急に飛び出してきて、めっちゃかわいいって言われました」と明かした。また、是枝監督は「コンビニのレジの方にもおめでとうって言っていただいて、今後買うものを精査しないといけないなって思ったり…(笑)。タクシーの運転手さんにもいっていただいたり、関係者ではない方にそんな風に声を掛けられるのは嬉しいですね」と明かした。

そして今回、是枝監督が城くんとみゆちゃんの為にパルムドール像を会場に持参。実物を前に、興味津々に近くでまじまじと見たり、触ったり、実際にふたりで像を持ち上げてマスコミへの写真撮影に応じるなどしたふたり。重さ4キロある像は、子供にとっては少々重かったようで、城くんは「重かったです。今日はこの手を洗いません!」、みゆちゃんは「腕が痛い…マイクよりも重い」などと漏らし、会場からは笑いが起こった。

映画と同様にまさに15~87歳まで三世代にわたる家族が来場したイベントということで、これから作品をみる家族の方に向けて、是枝監督は「色んな目線でみられるようにつくりました。リリーさんとサクラさんの目線だと切なくて、子供の目線だと最後に少し希望を感じられる映画になっていると思います」とコメントした。

その後は、観客からQ&Aに応えた。

Q:父と母と祖母と娘の四人で来ました。是枝監督に質問ですが、なぜこの映画をつくろうと思ったのですか?

是枝監督:『そして父になる』をつくったときに、家族を繋ぐのは血なのか時間なのか、究極の二者択一を迫って福山雅治さんをいじめるということをしたんですが(笑)、そのあと、どういう問いをたてようかと思ったときに、血縁を超えて繋がる家族の可能性を探ってみたくなったんです。結果的にはストレートにはいかず、犯罪や利害関係でつながった家族のはなしにしましたけど、そういった関係性の先には何があるのかという話をつくってみたくて脚本を書きました。

Q:息子と母と祖母の三人で来ました。城くんとみゆちゃんに質問ですが、今後はどういった役を演じてみたいですか?

みゆちゃん:(なかなか言葉が出てこず、是枝監督にアシストしてもらう形で、)この映画の続きをやってみたいです!

城くん:是枝監督さんの映画にもまた出たいし、アクションとかホラー系もやってみたいです!

Q:母と祖母と娘で来ました。城くんとみゆちゃんに質問ですが、撮影をしていて大変だったこと、楽しかったことがあれば教えてください。

城くん:大変だったのが、スーパーでお菓子をリュックに入れる最初のシーンで、なかなかリュックにお菓子が入らなかったことです。楽しかったのは、魚釣りのシーンと海のシーンと大雨の中、家に帰るシーンです!

是枝監督:大雨のシーンは、たまたま夕立が降ってきたので、どう使うかは考えずとりあえず走ろうっていって撮ったシーンなんです。

みゆちゃん:せみの幼虫をお兄ちゃんととったのが楽しかったです!大変なシーンは特にありません。

最後に、「本当に撮影をしているときからすごくいいものが出来上がっていく風景を見ていました。ずっと監督にパルムドールを獲ってもらいたいと思っていたけど、人生で願いが叶うことってそうそうないわけで、だからすごい嬉しかったです。是非劇場でご覧ください」(リリー)、「6月8日(金)に劇場でもみてください!」(城くん)、「今日は来てくれてありがとうございました!」(みゆちゃん)、「さっきみゆちゃんが大変なシーンはなかったと言ってくれていたけど、真夏のシーンはほとんど真冬に撮っていて寒くて大変だったはずです。台本も渡していなくて、大人の役者を相手によく受けてくれて、ふたりとも本当に頑張ってくれました。大人の役者も子供たちをうまく包んでくれて、演技ではないとてもよい表情を引き出してくれました。カメラがまわっていないところでも温かな繋がりをつくれて、素敵な時間を過ごせました。僕らが感じたぬくもりがこの映画にも残っていると思うので、そういったものも感じてもらえればと思います」(是枝監督)とそれぞれに挨拶してイベントは終了した。

『万引き家族』
6月8日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:リリー・フランキー 安藤サクラ 
松岡茉優 池松壮亮 城桧吏 佐々木みゆ
緒形直人 森口瑤子 山田裕貴 片山萌美 / 柄本明
高良健吾 池脇千鶴 / 樹木希林
配給:ギャガ

【ストーリー】 高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく─。

(C)2018『万引き家族』 製作委員会