平栁敦子監督が登壇!『オー・ルーシー!』公開初日ティーチインイベント レポート

日本人監督作品として10年ぶりにカンヌ国際映画祭批評家週間に選出される快挙を成し遂げた話題作『オー・ルーシー!』が4月28日に公開初日を迎え、それを記念して、平栁敦子監督によるティーチインイベントがユーロスペースにて行われた。

本編の上映後MCの呼び込みにより平栁敦子監督が登壇すると、会場からは割れんばかりの拍手が起こった。MCから公開初日を迎えた心境を聞かれると、平栁監督は「カンヌ国際映画祭で上映してから約1年が経ち、ようやく日本で公開となり感無量です。日本のお客さんの反応が楽しみです」と日本で初日を迎えたことに喜びの表情を見せた。また「海外とは違って日本ではティーチインイベントなどでなかなか手が上がらないイメージですが今日は期待しています」と会場の観客に呼びかけ、日本での反応に期待を寄せた。その後早速ティーチインイベントが行われ、まずはなぜ節子のようなキャラクターを主役に選んだのかという質問に平栁監督は「節子のキャラクターは大学院のクラスでの『身近な人を題材にする』という課題から生まれたものです。節子のような無口な人ほど本当は喋りたいことが多いのではないかと普段から考えており、ルーシーというキャラクターを通じて節子に本音をしゃべらせたかったのです」と本作の主人公が生まれた経緯に加え、自身の映画制作の真髄を語った。

また劇中で南果歩が演じた、主人公の節子に冷たくあたる嫌味な姉、綾子が自分の姉や母親にそっくりだったという観客の声が多数聞かれ、平栁監督は「寺島さんと南さんが演じる姉妹のアイディアは、私の母に姉妹がいたことや私自身2児の母であることから得たものだと思います。やはり上が下を支配するという構造が生まれてくるのでしょうね。でも綾子に似ている人がいるという反応は海外では受けなかったので日本独特で面白いですね(笑)」と日本と海外の観客のリアクションの違いを楽しんでいた。

遂には「綾子と同じ年代の母がいるが、どういう風に接すればいいですか?」という質問も。これには会場からも笑いが起こったが、監督は「ホルモンのせいだと思いますよ(笑)。適度な距離感で接すればいいと思います」と独自のアドバイスを送っていた。本作の主人公である節子はOLであり、OLという職業が海外にはなく海外では「節子は仕事場で何をしているのか?」という質問も多かったという。監督自身若くして渡米しておりOLの経験はなかったが、平栁監督は「節子の会社での様子などについては色々リサーチもしましたが、私自身のアルバイトや部活動での経験もいきていると思います。アルバイトや部活動の場でもヒエラルキーは少なからず存在し、会社はその延長線上なんだと思います」と語り、「実は本作の題名『オー・ルーシー!』(英題:OH LUCY!)もOLという職業からきているんですよ」と最後には題名の裏話も披露し会場からは納得の声が漏れた。ティーチイン終了後にはロビーでサイン会も実施され、多くの観客が列をなす大盛況ぶりであった。

『オー・ルーシー!』
4月28日(土)ユーロスペース、テアトル新宿他にて公開中
監督・脚本:平栁敦子
共同脚本:ボリス・フルーミン
出演:寺島しのぶ 南果歩 忽那汐里 役所広司 ジョシュ・ハートネット
配給:ファントム・フィルム

【ストーリー】 節子43歳、独り身。職場では空気のような存在、一人暮らしの部屋は物だらけ。そんな節子の毎日は、姪の美花に代わって受講した怪しげな英会話教室で金髪のウィッグをかぶり“ルーシー”になった瞬間、色鮮やかに一変する。「ヘイ!マイ・ネイム・イズ・ルーシー!」「ワッツ・アップ?」“ルーシー”によって自分の中に眠っていた感情を呼び起こされた節子は、ハグしてくれたイケメン講師ジョンに恋をする。そんな幸せも束の間、突然ジョンは美花と一緒に日本を去ってしまう。自分が置かれた人生に納得できない節子は、二人を追ってカリフォルニアへ!旅の果てに節子は誰とハグできるのか—?

(c) Oh Lucy,LLC