金子雅和監督、山口晃(画家)、松蔭浩之(現代美術家)が登壇!『アルビノの木』凱旋上映記念トークショー レポート

2016年に公開され、世界各国の国際映画祭で11の賞を受賞した金子雅和監督作『アルビノの木』が、4月21日より池袋シネマ・ロサにて凱旋上映中。それを記念して、4月14日から20日に「金子雅和監督特集」が開催され、20日には、当日上映された短編『水の足跡』に主人公の師匠写真家・肩山役で特別出演している画家の山口晃氏、山口氏の盟友であり金子組常連俳優でもある現代美術家の松蔭浩之氏、そして金子雅和監督が登壇し、撮影時の思い出や、美術家から見た金子作品についてのトークが行われた。

キャスティングについて金子監督は「『水の足跡』という作品は、群馬県桐生市で開催されているきりゅう映画祭の助成企画。脚本も出来て、いざ撮影となった時に、折角だから桐生出身の人をキャスティングしたいな、と思ったんです。調べたら山口さんが桐生出身だと知って」と語ると、松蔭氏は「僕は現代美術家だけど、金子くんの映画には俳優としてこれまでに5作出てるんです。今回は金子くんから山口さんに出演お願いしたいけど話を通してもらえないかと言われて。何で俺じゃないんだと思ったね(笑)」と複雑な胸中だったことも語り笑いを誘った。

作品の感想について山口氏は、「(『水の足跡』ロケ地の)桐生の印象はもっとくすんだ感じ。あんなにキラキラしてない。桐生を知っているからこそ“どこにあんな素敵な場所が?”と不思議な感じがしました」と、出身地であるからこそよく知る風景と映像の中で語られる風景の違いを語ると、松蔭氏は「金子作品は初期作から一貫はしてるんだけど、絵がどんどん良くなってるね。ロケハンに一度付き合ってみたい。金子くんは人生の大半はロケハンしてるのでは?」と映像の美しさを称えた。

撮影について金子監督は、「良い絵を撮ろうとしてあれこれ考えたときは大して良い絵が撮れないんですね。カメラをざっくり置いたときに良い絵が撮れると思うんです」と語ると、写真を使った作品が多い松蔭氏も「うん、ちょっと物足りないかな、と思って赤いポールを置いてみたり、とか手を加えていくとどんどん駄目になるね」とうなずく。一方、画家である山口氏は、「絵は全部自分で描くから、考えるとダメ。子供は頭で考えないでまず自分の一番描きたいところから描くから、構図がしっかりしてる。そのほうが良い絵になる」と映像・写真・絵画における風景の切り取り方の違いについて語った。

また、トークはフェティッシュという論点で金子作品の分析に移ると、「金子くんは滝・手・水・凍ってるもの・蝶など、すごくフェティッシュに自然を撮るよね。逆に山口さんは電線とか電柱、トタンなど、一見美とは違うものを題材にするのが面白い」(松蔭氏)、「人がひと手間加えない自然は茫洋としてるけど、アングルを選んだ時点でひと手間入ってくる。(金子作品は)単に自然を撮っているのでなく、どの作品にも仕掛けがある。そういう人為的な部分に惹かれる物があります。見ていて、どのカットも構図が気持ちいいなあと思った」(山口氏)、「『水の足跡』はそれまでの金子作品と比べると温かいよね」(松蔭氏)、「この作品は原案があって、今までと違うテイストになりました。その経験が『アルビノの木』の作品の幅を広げたと思います」(金子)と言及された。

最後に金子監督が、「『アルビノの木』は『水の足跡』を三倍以上に拡大したような、大自然のロケーションで撮りました。今回の特集で上映された作品全部の要素が入ってる。複数の小さな川がひとつの大きな川に合流したような感じ。ぜひ池袋シネマ・ロサでの凱旋上映でご覧ください」とPRし、アートな雰囲気に包まれたトークイベントは終了した。

『アルビノの木』
4月21日(土)より、池袋シネマ・ロサにて公開中
監督・脚本・撮影・編集:金子雅和
出演:松岡龍平 東加奈子 福地祐介 増田修一朗 山田キヌヲ 長谷川初範
配給:マコトヤ

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