松坂桃李 × 三浦大輔監督 『娼年』映倫も驚いた!困難と言われていた映画化実現の鍵とは?

2001年の直木賞候補になり、性の極限を描いたセンセーショナルな内容が話題を呼んだ石田衣良の同名恋愛小説を、2016年の舞台と同じ松坂桃李と三浦大輔監督のコンビで映画化した『娼年』が、4月6日より全国公開となる。このほど、困難と言われていた映画化の実現について、本作のプロデューサーが裏話を明かした。

shonen sub3

原作は、2008年発表の「逝年」、小説すばる誌で現在連載中の「爽年」と続く人気シリーズの原点となった小説「娼年」。本作では、ありのままの女性の欲望と、娼夫として女性たちに向き合うことで変化を遂げていく主人公・リョウの姿を繊細な表現で描く。

本作の小西プロデューサーによると、撮影前にレイティングを確認するため、映画倫理機構(以下、映倫)に台本を持ち込んだところ、担当者はすでに原作小説を読んでいたという。映倫担当者は、過去に何度か映像化が企画され、性描写などについて相談を受けたことがあり、気になったため原作を読んだ、とのこと。しかし、その質問や相談の多くが「R18+指定にならないような描写にするにはどうしたらよいか?」というもので、さらに、主人公リョウを含め演じる俳優がなかなか見つからなかったため、どの企画も実現に至らなかったようだ。小西プロデューサーは、「そもそもあの原作を映像化するにはR18+でないと無理なんだと再認識しましたし、松坂さんや出演者の方々の役者魂を改めて物語っているエピソードだと思います」と説明している。

こうした背景があったため、 台本を読んだ映倫担当者は、「本当にこのままやるんですか?」「主人公を松坂桃李さんがやるんですか?」と目を丸くし、驚きを隠さなかったという。台本は、“R18+指定にならないような描写”ではなく、「“性描写”に関しては一切妥協しない」と三浦監督が語る通り、半分以上が性描写というもの。実は、原作者の石田も「娼年」の執筆にあたり、編集者に、大学生の娼夫がたくさんの女性と性の仕事をしていくなかで、ひとりの人間として成長していくストーリーであることと、「セックス表現からは絶対に逃げないで書きたい」と語っている。

他の企画とは真逆の“R18+も厭わない”アプローチによって、結果、映倫担当者からは「R18+なら何の問題もありません」と太鼓判を押され、さらに帰り際には「この小説を描写も含め中途半端に映画化するならやる意味がないと思う。応援していますから是非実現してください」とエールを送られたという。主演の松坂も「ここまで精神的に追い込まれた現場は初めてかもしれません」と語るように、監督、スタッフ、俳優陣が全身全霊で臨んだ本作。娼夫になる領を通して描かれる性、その性を通してひとりひとりの奥深くに潜む人間ドラマに一層期待が高まる。

shone_B1_poster_B__OL_saisai

『娼年』
4月6日(金)、TOHOシネマズ 新宿 他 全国ロードショー
監督・脚本:三浦大輔
原作:石田衣良「娼年」(集英社文庫刊)
出演:松坂桃李 真飛聖 冨手麻妙 猪塚健太 桜井ユキ 小柳友 馬渕英里何 荻野友里 佐々木心音 大谷麻衣 階戸瑠李 西岡德馬 江波杏子
配給:ファントム・フィルム

【ストーリー】 主人公の森中領(もりなかりょう)は東京の名門大学生。日々の生活や女性との関係に退屈し、バーでのバイトに明け暮れる無気力な生活を送っている。ある日、領の中学校の同級生で、ホストクラブに勤める田嶋進也(たじましんや)が、美しい女性をバーに連れてきた。女性の名前は御堂静香(みどうしずか)。「女なんてつまんないよ」というリョウに静香は“情熱の試験”を受けさせる。それは、静香が手がける会員制ボーイズクラブ「Le Club Passion」に入るための試験であった。入店を決意した領は、その翌日に静香の元を訪れ、娼夫「リョウ」として仕事を始める。最初こそ戸惑ったが、娼夫として仕事をしていくなかで、女性ひとりひとりの中に隠されている欲望の不思議さや奥深さに気づき、心惹かれ、やりがいを見つけていく。

(C)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会