『桐島、部活やめるってよ』、『紙の月』など、人間の光と闇を描き続ける吉田大八監督の最新作で、錦戸亮主演で贈る『羊の木』が2月3日より公開中。3月2日、池袋HUMAXシネマズにて大ヒット御礼トークイベントが行われ、優香、細田善彦、監督の吉田大八が登壇した。
殺人歴のある元受刑者・太田理江子を演じた優香は吉田監督から「色々なところで優香さんの演技が評判ですよ。“色っぽい”という反響がある」などと聞かされると、北見敏之とのキスシーンを回想して「(これまで)爽やかなキスシーンはあったけれど、ああいうのはないですね」と照れつつ「自分には健康的なイメージがあり、そういったエロスは想像がつかないと思った。だからこそやったら面白いと思った」と引き受けた理由を説明。映画公開後は「伊集院光さんやリリー・フランキーさん、ムロツヨシさんに『エロい』と言われました。そういった言葉を人生でいただいたことはなかったので…」と反響の大きさを実感していた。
さらに優香は、撮影初日がキスシーンだったと明かし「なので、ここを乗り越えたらもう大丈夫だと思った」と笑わせ「その後に閉館後の遊園地で打ち上げのようなBBQが行われ、皆さんとお話しする機会を持つことができて心が開けたと思う。そこで団結できた。メリーゴーランドも綺麗で」と現場の粋な計らいに感謝。吉田監督も「キスシーンを務めた優香さんと北見さんに皆でお疲れ様を言いたかった。ホテルで考え込むよりはいいからね」と労をねぎらった。
主人公・月末(錦戸亮)が勤める市役所の後輩・田代を演じた細田は、吉田監督から「一番の悪人は彼。色々なことの引き金を引くのが田代。可愛げと破局を巻き起こすバランスが大切だったので、キャスティングには時間がかかった」と舞台裏を紹介されると「本当ですか!?」と驚きつつ「先輩の月末にかまってほしくてしょうがない感じを出せればと。撮影中も錦戸さんにかまってもらいたくてずっとくっついて回った」と役作りに余念がなかった様子だった。
本編鑑賞は2回目という優香は「1回目は叫んだりして忙しく見たけれど、今日はゆっくりと見れました。それに1回目とは違って松田龍平さん演じる宮腰が可愛く見えた。窓から顔を出すとことか、いちいち可愛かった」と元殺人犯を演じた松田に注目。その一方で細田が演じる田代を「1回目はそうは思わなかったけれど、超怖かった。一番悪い奴!」とバッサリで、横に座る細田を恐縮させていた。
そんな細田は本日で4回目の鑑賞という。「ソフトクリームを食べる北村一輝さんが最高。何をやっても面白い」と凶暴な見た目の元殺人犯を演じた北村推し。これに吉田監督は「北村さんは実は甘いものが苦手。ソフトクリームを渡すときに『俺嫌いなんだよね』と言われた時は月末のようにビビった。ソフトクリームを舐めるシーンを何回やったら怒るのかと思ったり…。でも何度もやってくれて、相当舐めてもらいました。」と北村トリビアを挟んで、会場を盛り上げた。
改めて今回の役どころについて優香は「年相応の年齢に合った仕事がしたいと思っていたので、自分の年齢に似合う役をやらせていただけて嬉しかった」とキャスティングを喜び「今後も年齢にあった大人っぽい役柄を演じていきたい。時代劇好きなので、キャピキャピしない大人の女性を演じることができれば」と抱負を述べた。
一方、細田は「撮影地の富山で仲良くなった40代の地元の方とは今も仲が良く、一緒に飲んだりしている。富山の人たちは親切で優しい」とロケ地の方とのエピソードを明かし、人のよさそうな笑顔を浮かべた。
最後に吉田監督は「今回の映画では群像劇をやったので、次は今までにやったことのないようなことをしたい」と念願の企画『羊の木』を終えた今、次作への期待も高まるコメントでトークショーは幕を閉じた。
『羊の木』
2月3日(土)より公開中
監督:吉田大八
脚本:香川まさひと
原作:「羊の木」(講談社イブニングKC刊)山上たつひこ いがらしみきお
出演:錦戸亮 木村文乃 北村一輝 優香 市川実日子 水澤紳吾 田中泯 松田龍平 細田善彦
配給:アスミック・エース
【ストーリー】 ある寂れた港町“魚深(うおぶか)”にやってきた見知らぬ6人の男女。平凡な市役所職員・月末(つきすえ)は彼らの受け入れを命じられた。受刑者を仮出所させ、過疎化が進む町で受け入れる国家の極秘プロジェクト。月末、町の住人、そして6人にもそれぞれの経歴は知らされなかった。しかし、月末は驚愕の事実を知る。「彼らは全員、元殺人犯」。犯した罪に囚われながら、それぞれ居場所に馴染もうとする6人。素性の知れない彼らの過去を知ってしまった月末。そして、港で発生した死亡事故をきっかけに、月末の同級生・文を巻き込み、町の人々と6人の心が交錯し始める。
© 2018「羊の木」製作委員会 ©山上たつひこ いがらしみきお/講談社