藤竜也「この映画は魂の映画」『東の狼』 初日舞台挨拶 レポート

なら国際映画祭の映画制作プロジェクトNARAtive(ナラティブ)として誕生した『東の狼』が2月3日に公開初日を迎え、同日、新宿ピカデリーにて藤竜也と大西信満が登壇し舞台挨拶が行われた。

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藤が「いかがでしたか」と語りだそうとした途端、客席から温かな拍手が沸き起きり、続けて藤は「いかかでしたか?と聞くと困ると思って言うのをやめようとしたのですが、思いがけず拍手を頂きありがとうございます」と喜びの笑顔を見せた。大西は「簡単な撮影ではなかったので、無事に初日を迎えることができてよかった」と安堵の表情を見せた。

共演をしてみた印象を聞かれると、大西は「藤さんは山のような、太くて重い木のような人でした。そんな人を少しでも揺らすことができるように、演技しました」と身心ともにずっしり構えた藤の印象を語った。監督のカルロス・M・キンテラ、そしてプロデューサーを務めた河瀨直美からのコメント映像がスクリーンに映し出されると、カルロスは「黒木和夫監督がキューバで撮影した『キューバの恋人』が作られてから 50年たち、『キューバの恋人』の続きともいえる『東の狼』を日本で撮影することができた。夢が叶いました。藤さんは父親のような人でした。ハグを送りたい」と日本での公開を祝した。続けて河瀨直美は「(藤は)一升瓶をもってきて、地元の猟師さんたちにドンと渡してさあ飲もうと振舞いました。俺は今日からこの村入りをさせてもらうよ、と入り口から猟師になる覚悟をしてくれたことがこの映画の成功に結び付いたと思う」と藤の役者魂に感謝の意を述べた。

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二人のコメント映像をみた藤は、カルロスとの製作エピソードを聞かれると「話すと2~3時間はかかる」と言うと会場から笑いが起こった。続けて藤は「カルロスさんも河瀨さんも“魂”という言葉を口にするのですが、この映画の感想を聞かれると、なんか“魂”なんです。カルロスにとって狼はただの生き物としての狼ではなく、カルロスが伝えたい意図を探ろうとした」と撮影時の苦労を語った。続けて藤は「ラストカットがかかった時に(あまりにも過酷な撮影だったので)カルロスを呼んでエアで殴ったら、カルロスもわかってるよって顔をして、最後は握手をしました」とエアボクシングを披露しながら、撮影終了時の思い出を語った。即興性のある撮影について聞かれると、藤は「本当はヒロインがいて、三角関係(藤・大西との)がある予定が、いつの間にかなくなってしまった」と急に大幅な脚本変更が行われるなど撮影の裏話を語った。

エグゼクティブプロデューサーを務めた河瀨直美について聞かれると藤は「カルロスが悩んで止まっているときに、現場にきてプロデューサーとして仕切っていました」と河瀨の敏腕ぶりを語ると、藤は「しかしのあの一番苦労したシーンはカットされているんだよね」と悲しげな表情を見せると会場からは笑いが起こり、大西も「本編の続きに、山の中に入っていろんなシーンをたくさん撮影しましたが全部なかったですね(笑)」と苦いエピソードを語った。

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観客からの質問コーナーに入り、お客さんからこだわりのシーンについて聞かれると、藤は「大西さんにいじめられたシーンの後はアドリブなのです。本当は寂しげにトラックが発進するだけでしたが、藤竜也としてもアキラとしても心がむしゃくしゃして、ギアをバックに入れてハンドルをめい一杯きってアクセル全開でガラガラと回ったら、監督からも喜んじゃって」と藤竜也の機転の利いた1シーンについて披露した。そしてお客さんから藤へ公開を祝した赤い花束が贈られ、会場から大きな拍手が沸き起こり、藤は笑顔を見せた。最後に藤は「この映画は決してわかりやすい映画ではないと思っていましたが、皆さんの温かい雰囲気で、楽しんだと言ってくださって嬉しいです。ありがとうございます」と自らの不安をかき消す観客の反応に驚きと喜びの笑顔をみせ、大きな拍手のなか舞台挨拶は終了した。

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『東の狼』
2月3日(土)全国順次公開
監督:カルロス・M・キンテラ
エグゼクティブ・プロデューサー:河瀨直美
出演:藤竜也 大西信満 小堀正博
配給:HIGH BROW CINEMA

【ストーリー】 100年以上の間、東吉野村の森では狼が目撃されていない。それでも年老いた地元の猟師アキラは狼がいると信じている。猟師会の会長を務めるアキラは皆の反対を無視し、猟師会の予算を狼探しに費やす。狼狩りに取り憑かれたように深い森へと入って行く…。

©Nara International Film Festival & Seven Sisters Films