150万人が犠牲となったアルメニア人大量虐殺事件に翻弄された男女3人の運命を描く映画『THE PROMISE/君への誓い』が2月3日より公開される。1月24日、テリー・ジョージ監督が初来日し、特別ゲストにイランで生まれ幼少時代を孤児院で過ごし、様々な苦難を乗り越えた経験を持つタレントで女優のサヘル・ローズが登壇し、トークイベントが行われた。
“ルワンダ虐殺”の真っ只中で人命を救うために尽力したホテルマンの実話を描き日本では劇場公開を求める署名活動まで巻き起こった話題作『ホテル・ルワンダ』に続き、再び悲劇に光を当てて描いた『THE PROMISE/君への誓い』の公開に先がけ、テリー・ジョージ監督が初来日し、プレミア上映前のトークイベントに登壇した。本作の日本語字幕監修を手掛けたアルメニア近現代史の専門家・吉村貴之の進行によりイベントがスタート。テリー・ジョージ監督は「『ホテル・ルワンダ』で日本で署名運動が起こったことを今回日本にきて初めて知りました。こうして来日が実現したことを大変うれしく思っています。到着したのは、日本に大雪の降った日でしたが、マイナス10度のNYから来たものですから、そんなに大したことではないです」と挨拶し、会場の笑いを誘った。「この作品は、非常にユニークな作品です。アルメニア系アメリカ人・カーク・カーコリアン氏が、熱心な思いで出資してくれたことでこの映画は制作できました。市井の“普通”の人間がとてつもない悪に立ち向かい、サバイブしていくストーリーです」と監督。
“アルメニア人大虐殺”という事実を、監督は『ホテル・ルワンダ』撮影時に知ったという。リサーチを重ねる中で、これはいままで語られることのなかった20世紀の大罪である、自分がやらねばならないテーマだと思ったという。そして虐殺事件、難民問題を描きながらも、より多くの観客へ届けるために3人の男女の人間関係も同時に進行していくエンターテイメント要素も盛り込まれた。イベントの中盤に差し掛かり、特別ゲストの女優、タレントのサヘル・ローズが登壇、アルメニアの国花“アネモネ”の花束をテリー監督へ贈呈した。サヘルは「先ほど初めてお会いしたんですが(監督が)こんなにお茶目で優しい方だとは…!『ホテル・ルワンダ』を中学生の時に母と一緒に観ました。地図の上ではこの国のことを知っていましたが、この場所であのような出来事が起きていたとは全く知らず、ショックを受けました。しかしこの体験はその後の私の財産になりました。“好きな映画は?”と聞かれると『ホテル・ルワンダ』と挙げています。これはお世辞抜きです!」と感無量の様子で監督へその思いを伝えた。「中東の多くの方はアルメニア人に起きたこの事件を知りません。教科書にも載っていなくて、閉ざされていた歴史だと思います。この映画を難民映画と構えないで観てほしい。登場するそれぞれの人物に共感しやすくて、必死でこの時代を生きていた人達の物語です。100年前は古い話ではなくて今も繰り返しています。この映画は過去を現代に映し出す鏡だと思います」というサヘルの熱弁に、「もう、完璧なレビューでした(笑)」とテリー監督が応える一幕も。最後に、これから鑑賞する観客へ向け、テリー監督は「もし観終わって、知人に薦める機会があれば、たんなる難民映画でなくて、“2018年最高のスーパーヒーロー映画だった”と伝えてほしい。空を飛べたりする訳ではないけど、ここに描かれている人達はリアルなヒーローです。もし署名が必要とあらば、僕も署名します!」とユーモアを交えつつも真摯なメッセージでトークイベントを締めくくった。
『THE PROMISE/君への誓い』
2月3日(土)より新宿バルト9他にてロードショー
監督:テリー・ジョージ
出演:オスカー・アイザック シャルロット・ルボン クリスチャン・ベイル ジェームズ・クロムウェル ジャン・レノ
配給:ショウゲート
【ストーリー】 オスマン・トルコの小さな村に生まれ育ったアルメニア人青年ミカエルは、医学を学ぼうと首都イスタンブールの大学に入学。フランス帰りのアルメニア人女性、アナと惹かれ合うが、彼女にはアメリカ人ジャーナリストの恋人、クリスがいた。第一次世界大戦とともにアルメニア人への弾圧が強まり、ミカエルは強制労働に送られてしまう。からくも脱走し、故郷に向かったミカエルは、アルメニア人に対して虐殺が行われている現実を目撃する。一方、クリスはトルコの蛮行を世界に伝えようと奔走し、アナも行動を共にする。それぞれの信念のもとに激動の時代を生き抜いた3人。ミカエルとアナ、クリスの愛の行方は?そして追い詰められたアルメニア人たちの命運は―?
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