近未来の日本を舞台に、「安楽死」という極めて重いテーマに真正面から切り込む社会派映画『安楽死特区』の完成披露舞台挨拶が、1月5日、東京・ユーロライブで行われた。当日は、主演の毎熊克哉をはじめ、大西礼芳、奥田瑛二、原作・製作総指揮の長尾和宏、プロデューサーの高橋惠子が登壇。作品に込めた思いや撮影現場での葛藤を、率直な言葉で語った。

冒頭、プロデューサーを務めた高橋惠子は、本来登壇予定だった監督・高橋伴明が療養中であることに触れながら、「安楽死に賛成か反対かという議論を超えて、一人の命、人がどう生きるのかを感じ取ってもらえたら」と観客に語りかけた。撮影は厳しい寒さの中で行われ、「命を削るような思いで現場に立っていた」と振り返り、本作が極めて切実なテーマと向き合って作られたことを明かした。
在宅医として2500人以上の看取りを経験してきた長尾和宏は、尊厳死と安楽死の違いを丁寧に説明。「海外では安楽死が認められている国が増えている一方で、日本ではほとんど議論が進んでいない。この映画をきっかけに、社会全体で考える場が生まれれば」と、本作誕生の背景を語った。
余命半年と宣告された難病のラッパー・酒匂章太郎を演じた毎熊は、役作りについて「ネットで調べられることよりも、実際に当事者の声を聞くことを大切にした」と明かす。「今は一人の話を聞かせてもらっているけれど、同じ思いを抱えた人が世界中にいる。その重みを背負って演じている感覚が、この役の核になりました」と、静かな覚悟をにじませた。
さらに、前作『「桐島です」』に続きタッグを組んだ高橋伴明監督については、「今回はより慎重だった印象。人の生き死にを扱う作品だからこそ、どの選択が正しいのかを、監督自身も探り続けていた」と現場を振り返った。
章太郎のパートナーでジャーナリストの藤岡歩を演じた大西は、「恋人としての感情と、ジャーナリストとしての使命感がシーンごとに入り混じり、撮影中は自分自身も混乱していた」と語る。毎熊との共演については、撮影後のエピソードとして「『僕たちの代表作になるね』と言ってもらえたことが本当に嬉しかった」と笑顔を見せた。
『安楽死特区』の特命医を演じた奥田瑛二は、「脚本がショッキングで、同時に非常に面白かった」と率直な感想を語り、「安楽死は危険なテーマ。だからこそ、医師として、一人の人間として自分の持っている核を信じて演じた」と、その覚悟を明かした。
イベントの締めくくりに、長尾は「この映画が議論のきっかけになれば」と語り、奥田は「立場や年齢で受け取り方が変わる、真摯に向き合わざるを得ない映画」と作品を表現。大西は「2026年の記憶に残る一本になってほしい」と願いを込め、毎熊は「観終わったあと、想像しているほど重たい気持ちにはならないはず。2026年を自分もしっかり生きていこうと思える映画になっています」と、力強い言葉で観客に呼びかけた。





■作品情報
タイトル:安楽死特区
公開日:2026年1月23日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
監督:高橋伴明
原作・製作総指揮:長尾和宏(小説「安楽死特区」/ブックマン社刊)
脚本:丸山昇一
出演:毎熊克哉、大西礼芳、加藤雅也、筒井真理子、板谷由夏、平田満、余貴美子、奥田瑛二 ほか
配給:渋谷プロダクション
上映時間:129分
©「安楽死特区」製作委員会

