韓国の名匠ホン・サンス監督のデビュー30周年を記念し、5カ月連続で新作を公開する特別企画「月刊ホン・サンス」。その第3弾として、**第73回ベルリン国際映画祭で物議を醸した話題作『水の中で』(原題:In Water)**のキービジュアル、予告編、場面写真が一挙解禁された。

キービジュアルには、海に向かう主人公ソンモの後ろ姿が静かに収められている。コピーは「ぼやけたままでいい」。“全編ピンボケ映画”という実験性を象徴しつつ、迷いながらも前へ進もうとする青年を静かに肯定するような余韻あるビジュアルに仕上がっている。
予告編では、焦点の甘い映像が連続し、被写体の輪郭が揺らぎ続ける独自の世界が提示される。ベルリン国際映画祭では上映前に「これからかかる映画は決して映写ミスではない」とアナウンスが入ったほど、これまでにない映像体験をもたらした本作。その世界観が短い映像のなかでも強烈に伝わる仕上がりとなっている。
本作は、カイエ・デュ・シネマ誌「2024年映画ベスト10」で第3位に選出された。『関心領域』『私たちが光と想うすべて』を抑え、著名批評誌の年間ベスト10で堂々の第3位に。“印象派の絵画のよう”と評されるその美しさと挑戦性が高く評価されている。
映倫審査でも「素材不備では?」と議論を呼んだという、徹底したボケ表現。しかし、ショットごとにフォーカスの度合いが繊細に異なり、登場人物の表情が見えるカットと完全にぼやけたカットが混在するなど、映像の“揺らぎ”を味わう作品になっている。
本作は、5カ月連続企画「月刊ホン・サンス」第3弾。企画では、2025年11月〜2026年3月まで新作5本を連続公開する。第3弾として本作『水の中で』が登場し、併催の「別冊ホン・サンス」ではシン・ソクホ主演作『イントロダクション』(20)も上映される。
▼予告編







■作品情報
『水の中で』
脚本・監督・製作・撮影・編集・音楽:ホン・サンス
出演:シン・ソクホ、ハ・ソングク、キム・スンユン
2023年|韓国|韓国語|61分|カラー|16:9|ステレオ
原題:물안에서|英題:In Water
字幕:根本理恵
配給:ミモザフィルムズ
2026年1月10日(土)より、ユーロスペースほかにて全国順次公開
ストーリー:
夏の終わりの済州島。自主制作で短編映画を撮ろうと決意した青年ソンモは、大学時代の同級生ふたりを連れて島へ渡る。しかしシナリオは一向に書けず、海辺をさまよいながら煩悶する日々。そんな中、一人の女性との出会いが彼に“語るべき物語”をもたらす。そして、波音に包まれた静かな撮影が幕を開ける──。“映画をつくる若者たち”を描いた瑞々しい青春映画でありつつ、ホン・サンス監督の新境地を示す、極めて実験的な一本となっている。
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