「クズとワルしか出てこない」小説であると話題の原作を、北村匠海主演で映画化した『悪い夏』が、2025年3月20日より公開される。それに先立ち、2月17日にイイノホールにて完成披露上映会が行われ、北村匠海、河合優実、窪田正孝、木南晴夏、伊藤万理華、毎熊克哉、箭内夢菜、城定秀夫監督が登壇した。
満員御礼で迎えたこの日、真面目で気弱な公務員・佐々木守を演じた主演の北村は「やっと完成上映会を迎える日が来たな、という思いです。自信を持って面白い映画だと言える作品が出来ました!」と充実した表情で開会宣言。親友である磯村勇斗が主演した城定秀夫監督の映画『ビリーバーズ』に感銘を受けたこと、そして向井康介による脚本に惚れこんで出演を快諾したそうで「脚本にパワーがあって、原作からの改変にも納得いくものがあったし、映画として発信する上での良さが詰まっていると感じました」と魅了されていた。
育児放棄寸前のシングルマザー・林野愛美役の河合は、初共演の北村について「現場で真剣な事が伝わってきますし、お芝居や作品作りが心から好きで楽しいと思って現場にいらしている方だと感じました」と振り返った。北村も河合について「凄い人出てきたなあ」という印象を抱いていたといい、本作での初共演を通して「シーンを見ている角度が同じで、同じ目線で一つ一つのシーンを見ている感覚があった。撮影中は気持ちのいい時間だと思っていました」と、初共演の喜びを明かした。
裏社会の住人で犯罪計画の首謀者・金本龍也役の窪田は、北村に「怖かった?」と尋ねると「怖かったっす…」とのリアクションに、「やりました!」としてやったりの表情。「皆を救いつつ、皆を食い物にする人。色々な事を考えている人で、凄く深い事も言う。でも引っ張られてはいけません、悪ですからね!」と役柄を紹介した。
夫に先立たれ息子と2人困窮した生活を送り、万引きに手を染めてしまう古川佳澄役の木南は「正気を失ってずっとボーッとしているような役で、現場でも皆さんとはあまり絡まない役だったので、現場でもボーッとしているだけで終わってしまいました」と少々寂し気に現場を振り返った。正義感に燃える佐々木の同僚・宮田有子役の伊藤は「ずっと区役所で一生懸命に働いていました!」と上映前ゆえに多くを語らなかったものの、これに北村も「そう、みんな一生懸命働いています!必死です!」と同僚として共感を示していた。愛美の友人で金本の愛人・莉華役の箭内は「監督も穏やかで、キャストの皆さんも優しくて。安心して撮影に臨むことが出来ました」と感謝。愛美に肉体関係を強要する佐々木の先輩・高野洋司役の毎熊は、城定監督とはこれで6度目のタッグだが「これまでの城定監督の(撮影の)早さと的確さに加えて、これだけのキャストが集まって(レベルの)高い話し合いが持たれていたのが印象的でした」と監督の力量の高さを改めて実感したという。それに対し城定監督は「これだけのキャストさんが揃っていたので、僕のやることはありませんでした」と俳優陣によるアンサンブルに自信を見せた。
自身が演じたキャラクター以外で「実はこのキャラクターが好きだった!クズすぎて笑ってしまった」というキャラクターについて尋ねられると、河合は謎のホームレスを演じたお笑い芸人・チャンス大城を挙げた。「全カット探した方が良いです!凄く素敵でチャーミングなので」と推すと、北村は「チャンスさんはずっとバラエティ番組のドッキリだと思って撮影をしていたそうです。僕の事も本物だと思っていなかったそうです」とまさかのエピソードを明かすと会場は笑いに包まれた。
続いて、映画のタイトル『悪い夏』にちなんで、自分の「ワルい」ところをフリップに書いて発表。北村は「サプライズが苦手です」と明かし「喜べないんです。喜んでいるけれど、それを全く表に出せないんです。頑張って嬉しそうなお芝居をするけれど、その芝居がド下手で…」と苦笑交じりに明かした。窪田から「役者だよね(笑)?」とツッコミを受けると「しんどい瞬間があって…。ありがたいけれど、申し訳ない気持ちになって…。極力やめていただきたい」と必死の懇願に会場から笑いが起こった。 河合は「方向音痴」を上げ、「わざとではないし、悪意はないけれど、生まれてからずっと方向音痴。建物内が一番わからない。ドアを開けたらどっちに行けばいいのかわからなくなる」と照れながら告白。窪田は「10円ガムを一万円札で買ってやった」とドヤ顔気味で言い「100円玉と千円札が欲しくて、コンビニでお金をくずそうとしたら一番安いものが10円ガムしかなかった。…だから買ってやりましたよ!」と役柄さながらのワルっぷりを見せ、会場を笑わせていた。木南は「ハマり症で飽き性」、伊藤は「友達のアイスを食べた」、毎熊は「目つき」、箭内は「一口ちょうだい、で一番美味しい所を食べる」と発表。発表されるたびに“ワルいね!”“それはワルくない!”とツッコミあうなど、仲の良さが垣間見えた。
舞台挨拶もあっと言う間に終了の時刻に。最後に城定監督は「日本映画を代表する方々に揃っていただき、自信作になりました。より多くの方々に観ていただきたいです。タイプの違うクズとワルが出てきますので、そんな点も楽しんで観て欲しいです」とアピール。主演の北村も「みなさん、覚悟はよろしいですか?」と観客を煽りつつ、「映画として面白い作品で、暑苦しいくらいそれぞれの人間模様がジェットコースターのように流れて、体から出るものすべてを出しながら全員がぶつかる見応えのあるシーンもあるし、皆さんの中に映画を観た後の多幸感が少しでも芽生えたら嬉しいです。それだけ自信を持ってお届けできる作品になりました!」と力強く呼び掛けると会場は大きな拍手に包まれ、イベントは幕を閉じた。
『悪い夏』
2025年3月20日(木・祝)全国公開
監督:城定秀夫
原作:染井為人「悪い夏」
脚本:向井康介
出演:北村匠海 河合優実 伊藤万理華 毎熊克哉 箭内夢菜 竹原ピストル 木南晴夏 窪田正孝
配給:クロックワークス
【ストーリー】 市役所の生活福祉課に務める佐々木守(北村匠海)は「職場の先輩・高野(毎熊克哉)が生活保護受給者の女性に肉体関係を強要しているらしい」と同僚の宮田(伊藤万理華)から相談を受け、真相究明の手伝いを頼まれる。真面目で気弱な佐々木は、正義感に燃える宮田の頼みを面倒くさいと思いながらも断ることができず、その女性、育児放棄寸前のシングルマザー・愛美(河合優実)のもとを訪ねる。愛美は高野との関係を否定するが、実は裏社会の住人・金本(窪田正孝)、その愛人の莉華(箭内夢菜)、手下の山田(竹原ピストル)と共に、ある犯罪計画の片棒を担ごうとしていた。そうとは知らず、徐々に愛美へと惹かれてゆく佐々木。ふとしたきっかけで万引きを繰り返すようになってしまった生活困窮者・佳澄(木南晴夏)らを巻き込み、佐々木にとって悪夢のようなひと夏が始まろうとしていた…。
©2025映画「悪い夏」製作委員会