広瀬すず「ブリしゃぶ」にハマる!「こんなに美味しい食べ物がこの世にあるんだと感動!」『ゆきてかへらぬ』完成披露舞台挨拶

監督・根岸吉太郎×脚本・田中陽造、2人の巨匠の16年ぶりのタッグに、女優・広瀬すずが共鳴し、ひとりの女とふたりの男の出口のない三角関係と壮絶な青春を描く『ゆきてかへらぬ』が、2月21日より公開される。それに先立ち、1月30日にTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて完成披露舞台挨拶が行われ、広瀬すず、木戸大聖、岡田将生、根岸吉太郎監督が登壇した。

まだ芽の出ない新進女優・長谷川泰子を演じた広瀬。艶やかな和服姿で、満員御礼での念願の完成報告に「撮影が2年前でオファーをいただいたのはもっともっと前なので、やっとこの日が来たことに感動しています」と笑顔を浮かべた。

脚本は『ツィゴイネルワイゼン』や『セーラー服と機関銃』で知られる田中陽造が40年以上前に書いたもの。広瀬は「今この時代に生きている私たちがどのような解釈でこの世界に入っていくのかは、ある意味でチャレンジでした。セリフの言い回し、男女の関係性、距離感すべてが新鮮で、感じたものを大切に演じる現場だったので、ビシビシと静かにみんなから伝わる熱量が心地よい現場でした」と回想した。しかし3人が演じたキャラクターの関係性は熾烈だったようで「物凄く激しいので疲れました。一周回って潔く気持ちのいい役だったけれど、毎日何かを削りながら生きている役なので、皆さんにも映画を観ていただければ伝わるのではないかと思います」とヘヴィな役柄だったと紹介した。

泰子と惹かれ合い、共に暮らす天才詩人・中原中也役の木戸は「今も支持されている中原中也を演じられるのは相当なプレッシャー」と心境を吐露し「泰子との芝居に関してはフィジカルなぶつかり合いだったので、プロレスでもやっているかのよう…。根岸監督もカットをかけないので、体力的にも勝負の役でした」と苦笑い。これには広瀬も「アクションをやっているようで、何の映画を撮っているんだ!?と思った」と現場の激しさを振り返った。

中也の友人であり、やがて泰子と恋仲となる文芸評論家・小林秀雄役の岡田。役作りのために資料を読み込んだそうで「小林さんの文章からは色気が溢れていたので、自分が演じるにあたり、ワンカットでもその色気が出てくれていたら良いなと思いながらやっている感じがありました」とこだわりを明かすと、広瀬は「あったよ!」と即答。しかし岡田はその早過ぎる反応に「ちょっと待って!言わされていないか?」と疑っていた。

16年ぶりの長編監督作となる根岸監督は「お三方以上に長い時間この映画と格闘していたので、この日を迎えることが出来て嬉しく思います」と喜びもひとしおで「瓦屋根の雨に濡れた美しさに重点を置いてやった」とレトロなセットのこだわりを述べると、広瀬は「冒頭のワンカットの画が美しくて、根岸監督の美学が詰まっていると思った。セットも『街じゃんこれ!』と思うくらい贅沢でした」と見どころを語った。

まだ何者でもなかった実在の若者たちの決して戻れない愛と、青い春を描いた本作にちなみ、「青春時代にやりたかったこと」をそれぞれ発表するコーナーも。仕事で行けなかった「修学旅行」を挙げた岡田は「仕事終わりに友達から毎日『今日はこうだったよ』という電話が来てその時は泣きました。同級生と修学旅行に行きたかったな」と遠い目だった。同じく学生時代から仕事をしていた広瀬も「学校帰りに皆で制服のまま遊びに行くのをやりたかった。制服のまま授業をさぼったり、その後に皆でご飯に行ったりが出来なかったので、遊園地に行ったりしたかった。その憧れは当時からありました」と願望を明かした。一方、木戸は「ダンスをやっておけば良かったなと思うことがある。リズム感は色々なところで活きるし、カッコいいし、本作のようになにかと踊らないといけないことが意外と多いので」と明かすと、広瀬は「なにかと多いのはわかる!自分としてはリズムが合っていると思ったのに人と合わせたら違うと気づいたときは…絶望だよね」と実感を持って共感。すると岡田も「凄く良くわかる。だから僕は歌とダンスはなるべくNGです」とぶっちゃけていた。

さらに「出逢ってしまった…!」と思うほど深くハマってしまった「ヒト・モノ・こと」も発表。広瀬は「ブリしゃぶ。こんなに美味しい食べ物がこの世にあるんだと感動!」とニッコリで、木戸は「今さらかもしれないけれど…生姜焼き!」とこちらも美味しそうなグルメをピックアップ。するとラストの岡田は「最近新しい事にチャレンジしようと思っていて…。でもこれは最後に言う事じゃないかもしれない」と前置きしつつ「私、水を飲むことにハマっています。嘘だと思うかもしれないけれど1日2リットル飲むと決めています」と発表。すかさず広瀬が「何を言っているのかわからないです」と鋭くツッコむと、岡田は「出会ったんだよ、水に!水を飲む良さに気づいてから、体が軽くなって元気になって明るくなっている。最近の岡田将生は元気なんです!それは水のお陰です!」と会場の爆笑をよそに熱弁していた。

最後に主演の広瀬は「根岸監督が約16年ぶりに映画を撮って、その作品が今日初めて皆さんに伝わるのも胸がいっぱいになります。ちょっと歪んだ愛と青春の物語ですが、皆さんにどのように伝わるのか嬉しさと同時に不安もありますが、最後まで見届けていただければ嬉しいです」と呼び掛け、舞台挨拶を締めくくった。

『ゆきてかへらぬ』
2025年2月21日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
監督:根岸吉太郎
脚本:田中陽造
主題歌:キタニタツヤ「ユーモア」
主演:広瀬すず 木戸大聖 岡田将生 田中俊介 トータス松本 瀧内公美 草刈民代 カトウシンスケ 藤間爽子 柄本佑
配給:キノフィルムズ

【ストーリー】 京都。まだ芽の出ない女優、長谷川泰子は、まだ学生だった中原中也と出逢った。20歳の泰子と17歳の中也。どこか虚勢を張るふたりは、互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめる。価値観は違う。けれども、相手を尊重できる気っ風のよさが共通していた。東京。泰子と中也が引っ越した家を、小林秀雄がふいに訪れる。中也の詩人としての才能を誰よりも知る男。そして、中也も批評の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになる。才気あふれるクリエイターたちにどこか置いてけぼりにされたようなさみしさ。しかし、泰子と出逢ってしまった小林もまた彼女の魅力に気づく。本物を求める批評家は新進女優にも本物を見出した。そうして、複雑でシンプルな関係がはじまる。重ならないベクトル、刹那のすれ違い。ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。それはアーティストたちの青春でもあった。

©︎2025 映画「ゆきてかへらぬ」製作委員会