垣根涼介の「室町無頼」を原作に、腐りきった政治と世の中を叩き直そうと、命がけの戦いに挑み、自らの力で時代を切り拓いた“無頼”たちを描いたアクション・エンタテインメント『室町無頼』が、1月17日より公開される。それに先立ち、1月7日に外国特派員協会記者会見が行われ、大泉洋、入江悠監督が登壇した。
外国特派員協会での試写上映後、会場から大きな拍手で迎えられた主演の大泉洋は「世界で日本の時代劇が盛り上がっていますので、『室町無頼』も世界に羽ばたく映画になったらいいなと思っています」、入江悠監督は「『室町無頼』は完成までに8年かかっていて、僕の作品では最長。今回は大泉さんと登壇できて本当に嬉しいです」と挨拶した。
MCから完成まで年月がかかった理由について聞かれると大泉は「コロナ禍があったり、私と堤さんのスケジュールが合わなかったりと、色々な要因があって8年かかってしまった。8年前は43歳だったわけですが、8年でこんなにも驚きました(笑)。激しい立ち回りで満身創痍にで、そういう点では是が非でももっと早くやらなくては行けない映画だった」と笑いを交えて回答。監督は「大泉さんの答えに追加すると、東映の大作でも無理じゃないですかというくらいエキストラが多い。そして野外戦ではなく京都の市街戦があり、それを撮ることができる場所を探していたら年月が経ってしまった」と答えた。そして「この役を演じるために生まれてきたのでは」というMCの感想に「NHKの『ファミリーヒストリー』で私の先祖が仙台藩の武士だったことが分かりました。先祖代々芸人かと思っていたのですが、武士をやるべくして生まれた、まさに運命だったと思います」と返すと、会場からは大きな笑いが湧き起こった。
会場の外国人特派員から質問で、盟友であり宿敵となる兵衛と骨皮道賢(堤真一)の関係性について尋ねられた大泉は「兵衛と道賢は一緒に若い頃行動して、楽しいことも悪いこともした仲の良い間柄。日本は特に、会社での役割や肩書きで対立してしまったりしてしまうのかなと思います。もちろん今は違いますが、侍は『死』が身近にある時代。簡単に死んだり、殺してしまう。昔は仲が良かった2人が殺し合わなければいけない。そういう関係になってしまうのが物悲しいけれど、それが日本の時代劇を作るのに面白い部分。お互いの立場があるから戦うしかない、という部分を大事にして演じました」と演技について明かした。また“笑いの間”の演出についての質問に入江監督は「笑いの間合いは監督が演出で狙えるものではないので、大泉さんのものだと思います(笑)。兵衛の弟子となる才蔵役の長尾謙杜くんとのシーンでは、大泉さんとは『2人の思い出になるようなことがあるといいよね』という話をしていて、大泉さんの演技を長尾くんが受けるというのが現場で膨らんで行ってすごく楽しかったです」と現場を振り返った。
続いて、いつもとは違う役柄であることについての質問が挙がると大泉は「よく私がコミカルな役が多いとご存じでしたね」とひと笑い取りつつ、「このようなヒロイックな役は初めてだったので日本のスーパーヒーロー、三船敏郎を意識して、『用心棒』のセリフ“斬られりゃ痛えぞ”を真似をしてました。トシロウ・ミフネを追い続けてました。「斬られりゃ痛えぞ」、真似してください」と答え、会場から爆笑が生まれた。「黒澤明監督や「子連れ狼」、セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタンへのオマージュはあるのでしょうか?」という質問に監督は「ご指摘いただいたとおり、兵衛を大泉さんが演じるにあたって最初に思い浮かべたのは『用心棒』でした。大きな使命感を持っているわけではなく、風と共に訪れて去っていく。『用心棒』がマカロニ・ウエスタンに影響を与えて、僕はマカロニ・ウエスタンが大好きなので今この時代に返す、という循環が面白いなと。先ほど大泉さんが『三船を心に秘めて演じた』と言っていましたが、同じものを追い求めている感じがしてとても嬉しいです。映画ではとてつもない風を吹かしていて、それも『用心棒』をイメージしました。セリフが聞こえないとキャストからは苦情はありましたが(笑)、黒澤も同じだったのかなと。IMAXだと風が靡いているのが見えるので、観てもらえてたら嬉しいです」と語った。
最後にMCから「時代劇はこれで最後になりますか?」と聞かれた2人は「これから時代劇しかやらないかもしれません!」と大泉、「時代劇が大好きなのでこれがヒットしてまた作れることを願っています。大泉さんにはこれに懲りずまた殺陣をやって欲しいです」と入江監督が答え、会場からは大きな拍手が起き、盛況のうちに会見は終了した。
『室町無頼』
2025年1月10日(金)IMAX先行上映
2025年1月17日(金)公開
監督・脚本:入江悠
原作:垣根涼介「室町無頼」
出演:大泉洋 長尾謙杜 松本若菜 遠藤雄弥 前野朋哉 阿見201 般若 武田梨奈 水澤紳吾 岩永丞威 吉本実憂 ドンペイ 川床明日香 稲荷卓央 芹澤興人 中村蒼 矢島健一 三宅弘城 柄本明 北村一輝 堤真一
配給:東映
【ストーリー】 1461年、応仁の乱前夜の京(みやこ)。大飢饉と疫病が同時にこの国を襲った。加茂川べりにはたった二ヶ月で八万を超える死体が積まれ、人身売買、奴隷労働が横行する中世の暗黒時代(ダークエイジ)。しかし、時の権力者は無能で享楽の日々を過ごすばかり。貨幣経済が進み、富める者はより一層富み、かつてない格差社会となっていた。蓮田兵衛は、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぐ自由人。しかし、ひそかに倒幕と世直しを画策する無頼漢。京とその周辺の悲惨な状況と窮民を見た兵衛は、立ち上がる時を狙っていた…。一方、才蔵はすさまじい武術の才能を秘めながらも天涯孤独で夢も希望もない日々を送っていた。しかし、兵衛に見出され、鍛えられ、彼の手下となる。やがて、決死の修行を生き延びた才蔵の武器となるのは、“六尺棒”。修行を終えた時、超人的な棒術を身につけた才蔵の前に敵は無い。時は来た。才蔵だけでなく、抜刀(後の居合)術の達人、槍使い、金棒の怪力男、洋弓の朝鮮娘ら、個性たっぷりのアウトローたちを束ねる兵衛。ついに巨大な権力に向けて空前の大暴動を仕掛ける。行く手を阻むのは、兵衛のかつての悪友・骨皮道賢率いる幕府軍。“髑髏の刀”を手に一党を動かす道賢を前に、兵衛は命を賭けた戦いに挑む。
©2025『室町無頼』製作委員会