村田沙耶香の小説を、気鋭の映像ディレクターである川村誠が監督のほか脚本も手掛けて映画化する『消滅世界』が、2025年秋に公開されることが決定した。
本作の原作「消滅世界」は、現在累計170万部を超える芥川賞受賞作「コンビニ人間」直前の2015年12月に刊行された長編小説。超少子化の先、「性」が消えゆく世界で激動する「恋愛」「結婚」「家族」のあり方に翻弄される若者たちを描いた本作は、「常識」という枠の中でもがく現代の私たち自身を映し出した合わせ鏡のような作品。「日本の未来を予言する小説」と各メディアで大きな話題となった圧倒的衝撃作だ。
今、日本人作家ブームの中心的小説家として世界中のファンから支持を得ている村田沙耶香は、性や夫婦、家族というものの根源に迫り、「正常」とは何か、誰もが当たり前だと思っている「正しさ」とは一体何なのかを、奇想天外なストーリーテリングを駆使して繰り返し問い直してきた作家である。
村田は自身初となる映画化について「私の個人的な感覚」と前置きしつつ、「監督さんの作家性や俳優さんたちのその瞬間の演技など、私には想像がつかないもので化学変化のようなことが起き、映像という形に凝縮されて新しく生まれ直すことなのかな」と映像化に対しての考えを述べ、さらに「まだ未知の世界で想像できませんが、とても楽しみにしています」と完成を待つ現在の心境を寄せている。
日本の未来を予見するかのような圧倒的衝撃作に、映像ディレクター・川村誠が脚本とともに映像化に挑む。MTV出身の川村は、RADIOHEAD、OASIS、MASSIVE ATTACK、THE SMASHING PUMPKINSなどのフェス/ライブ映像や、BOOM BOOM SATELLITES、BIGMAMAなど様々なアーティストのミュージックビデオを制作。その他COKE ZEROなどのCMやショートフィルム、NHK大河ドラマドキュメンタリーなど多岐にわたるフィールドで独自の世界観を築いてきた。その映画的・音楽的感性を存分に活かして、本作では繊細かつ耽美な異世界観を追求。本作が長編映画の監督デビュー作品となる。
脚本とともに映像化に挑む川村は原作との出会いについて「足元が揺らぐような衝撃を受けた」と述べ、これは「今」語られるべき物語と確信し映画化を熱望。さらに「狂おしく切ないストーリーを、美しく繊細に映像化することを目指しました」と完成を間近に控えた心境を吐露。最後に「最高のキャスト・スタッフと共に作り上げた本作を是非劇場で味わっていただき、今を生きる皆さんの心に少しでも突き刺さる何かが残れば幸せです」と劇場公開を待ち望むファンの方々へメッセージを送った。
『消滅世界』
2025年秋公開
監督・脚本:川村誠
原作:村田沙耶香「消滅世界」
配給:ナカチカピクチャーズ
【ストーリー】 人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為はタブーとされ 恋や性愛の対象は「家庭の外」の恋人か、二次元キャラというのが常識に。そんな世界で「両親が愛し合った末」に生まれた主人公・雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。家庭に性愛を持ち込まない清潔な結婚生活を望み、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園(エデン)で一変する。