日本映画界の寵児・二ノ宮隆太郎監督の商業デビュー作にして、名優・光石研の12年ぶりの映画単独主演作『逃げきれた夢』が6月9日より公開される。このほど、予告編とポスタービジュアルがお披露目となった。
本作は、人生のターニングポイントを迎えた中年男が新たな一歩を踏み出すまでの可笑しくも切ない物語。
予告編は、周平が家族とコミュニケーションを取ろうと試みるも上手くいかず、なんだか情けなく見える姿から始まる。一大決心として「学校辞めるわ、俺」と告げるも妻も娘も無関心。空回る日々を過ごす周平はある日、元教え子・南の働く定食屋でお会計をせず立ち去ってしまう。「俺、病気なんよ、忘れるんよ」周平は最低ではないが最高とも言い難い、冴えない自分の人生を見直し始めるが、認知症により息子の顔を見ても反応のない父親に「どうしようかねぇ、これから」と将来の不安を漏らしてしまったり、旧知の仲である石田と会話を弾ませるも「なんか問題あるんだったら言え、どうせ言わんのやけど」と胸の内を見透かされてしまったりと、テキトーにしていた人間関係の精算は難しい。さらに、かつての教え子たちに掛けられる「逃げんでね、先生」、「やけん、なんか言ってよ」という言葉は周平をどこへ導くのか。いまさらジタバタ右往左往するほど若くもないが、最期を迎えるまでじっと待つにはまだ早い。そんな中年男が選ぶ新たな一歩が可笑しくも切ない物語を紡いでゆく。最後に瀬々敬久監督が本作に寄せた「描かれている世界は小さいけれど、大きなものが伝わってくる。言葉にならない感動というものがあるとしたら、この映画に違いない」というコメントで本映像は締められる。
ポスタービジュアルは、どこか不安げで心許ない表情で遠くを見る周平のワンショットスチールをベースに、「いやー参ったどうしようかね、これから」「本当、人間期待したらいけんって、なんにでも。私、思うんですよ」「ずっと恵まれとうのに……なんなんやろうな」といった、人生絶賛悩み中の周平らしいセリフの数々が印象的に目を引くビジュアルになっている。
『逃げきれた夢』
2023年6月9日(金)より、新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国公開
監督・脚本:二ノ宮隆太郎
出演:光石研 吉本実憂 工藤遥 杏花 岡本麗 光石禎弘 坂井真紀 松重豊
配給:キノフィルムズ
【ストーリー】 北九州で定時制高校の教頭を務める末永周平。ある日、元教え子の南が働く定食屋で、周平は支払いをせず無言で立ち去ってしまう。記憶が薄れていく症状によって、これまでのように生きられなくなってしまったようだ。待てよ、「これまで」って、そんなに素晴らしい日々だったか? 妻の彰子との仲は冷え切り、一人娘の由真は、父親よりスマホ相手の方が楽しそうだ。旧友の石田との時間も、ちっとも大切にしていない。「これから」のために、「これまで」を見つめ直していく周平だが…。
©2022『逃げきれた夢』フィルムパートナーズ