木村多江「小さき美が溢れている」日常の美を追求するアートドキュメンタリー『うつろいの時をまとう』2023年3月公開

日本の美意識をコンセプトに独自のスタイルを発信し続けている服飾ブランドmatohu(まとふ)の創作を追ったドキュメンタリー映画『うつろいの時をまとう』が2023年3月25日より公開されることが決定した。併せて、予告編とポスタービジュアルがお披露目となり、俳優の木村多江、詩人の谷川俊太郎より推薦コメントが寄せられた。

本作は、matohuの服飾デザイナー堀畑裕之と関口真希子の視点や哲学を通して、日常の中に潜む美や豊かさを再発見していくドキュメンタリー。彼らは、身近な風景や物に目を向け、そこから得たインスピレーションを“ことば”に変えて服に昇華していく。たったひとつの“ことば”から形となって現れた服は、着る者の想像力をかきたてる。二人の創作から見えてくるのは、日本人が長い歴史の中で育んできた“ものの見方”であり、普段は見過ごしてしまいがちな足元の“美を見つける心”。大量消費、情報過多の時代に、本当に大切なことは何か、本当に必要なものはどこにあるのか。気鋭の服飾デザイナーのクリエーションを通して、日常の身近な気づきに出会う旅へ。驚きと発見に満ちたファッション・ドキュメンタリーが誕生した。

監督を務めるのは、実験映画の制作を経て、これまで『躍る旅人‐能楽師・津村禮次郎の肖像』(2015)など、伝統芸能をテーマにコミュニケーションと身体のありようを描き続けてきた三宅流。これまでは自身で撮影も兼務してきたが、今回初めてカメラマンと手を組み、新たに「ファッション」という分野に挑んだ。

ポスタービジュアルは、matohuが「かさね」「ふきよせ」「なごり」など日本の古来からある美意識をテーマに、8年にわたり17章のコレクションを発表してきた『日本の眼』シリーズの「なごり」コレクションからデザインされたもの。民藝運動の指導者・柳宗悦が晩年に病床で書いた論考のタイトル「日本の眼」に由来する。日本の原風景であるススキの景色の上に、着物の要素を取り入れながら、“和服でも洋服でもない新しい服”として、ブランド設立時から作り続けてきた代表的なアイテム「長着」のシルエットが折り重ねられ、「風景に心をよせる。服が、生まれる。」というメインコピーが添えられている。雄大な時間の流れ、そして長い歴史の中で培われてきた美への感覚をも感じさせるようなコンセプチュアルなデザインが施されている。

予告編は、matohuのデザイナー二人が思考する哲学を感じるインタビューが。「ファッションに対する一つのアンチテーゼでもあった」と語るその意味とは。さらに妥協しないものづくりの裏側を丹念に捉え、うつろいゆく地上の時間や物のディテール、そして服のテクスチュアを繊細な映像美で紡いでいく様子を垣間見ることができる。彼らが風景や物へのイメージから導く“ことば”を手がかりにして作られた服の数々、そして服作りを支える職人の手仕事とデザイナーとの協業による創作からは、何気ない日常に美を見つける感性や新しいファッションのあり方が見えてくるだろう。

■木村多江(俳優)コメント
日常には、拾い上げないと通り過ぎてしまう小さき美が溢れている。その一瞬を愛おしむ心が日本にはあり、彼らの服が静かにそれを物語る。日常の美が、祈りにも似た感謝を教えてくれる気がした。

■谷川俊太郎(詩人)コメント
手と心が生む美しいものを創る人たちの日々、体温を感じさせるドキュメンタリーです。

『うつろいの時をまとう』
2023年3月25日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督:三宅流
出演:堀畑裕之(matohu) 関口真希子(matohu) 赤木明登 津村禮次郎 大高翔
製作・配給:グループ現代

【ストーリー】 2020年1月。東京・青山のスパイラルホールで、服飾ブランドmatohuの8年間のコレクションをまとめた展覧会『日本の眼』が開催された。matohuは“日本の眼”というタイトルのもと、「かさね」「ふきよせ」「なごり」など日本古来の洗練された美意識を表す言葉をテーマに2010年から2018年までの各シーズン、全17章のコレクションを発表してきた。デザイナーの堀畑裕之は大学でドイツ哲学を、関口真希子は法律を学んでいたが手仕事や服作りへの思いからファッションの世界に飛び込む。堀畑はコム デ ギャルソン、関口はヨウジヤマモトでパタンナーとしてキャリアを積む。そして2005年にブランド「matohu」を立ち上げ、彼らは“長着”という独自のアイテムを考案した。着物の着心地や着方の自由さから着想を得ながら、今の生活に合わせた形で作り出されたモダンなデザインの服である。2018年、matohuは『日本の眼』最後のテーマとなる「なごり」コレクションの制作に取りかかり、伝統的な技術を持つ機屋や工房と協業しつつ、テキスタイルを作り上げていく。堀畑と関口はアトリエで激しい議論を繰り返しながら妥協することなくデザインを完成させ、そしてファッションショーの日を迎える。

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