河瀨直美監督を審査員長に迎え、2017年に発表された第1回木下グループ新人監督賞で241本の中から栄えあるグランプリに選ばれた、吉沢亮主演の青春物語『AWAKE』が、12月25日に公開初日を迎えた。それを記念し、公開初日舞台挨拶が池袋HUMAXシネマズで行われ、吉沢亮、若葉竜也、落合モトキ、馬場ふみか、山田篤宏監督が登壇した。
棋士になる夢を諦めた最強将棋ソフト開発者・英一役の吉沢は「演じるにあたり外見の変化を意識。体重を増やしてみたり、将棋以外何もないような印象をつけたかった」と熱のこもった役作りを明かし「将棋映画ではあるけれど、人間の成長やライバルと交差する話。誰もが感動する普遍的な映画で、シンプルに泣けます」とアピールした。
英一のライバルで人並み外れた強さを誇る棋士・陸役の若葉も「将棋がメインではなく、あくまで青春映画。そこには人がいて、挫折があって、夢がある」と人間ドラマとしての面白味を強調。英一の先輩で変わり者のプログラマー・磯野役の落合は、初共演の吉沢のファンといい「綺麗な顔をされている。そしていい演技もされている」と吉沢にゾッコンだった。磯野の妹・栞役の馬場は「撮影中の空気が素敵でした。(吉沢と落合の演技は)目の前で見ていて圧倒された。私はその中で優しく柔らかく存在できればいいなと思っていました」と撮影を振り返った。
また地方ロケでのエピソードとして落合は「みんなでゴハンを食べて夜の10時過ぎくらいにホテルに帰ったら、(吉沢が)吸い込まれるようにインスタントラーメンの自販機をポチっとして『じゃあ!』みたいに部屋に戻った。そんな姿を見たときに、この人も人間なんだ、若いなと思った」と夜食に走る吉沢の姿を暴露。すると当の吉沢は「役作りです」と照れたように弁解し、「ラーメンとビール2本を寝る30分前にあえて体に流し込んで寝る生活をしていた。次の日の体調の悪さはハンパなかったけれど…」と役にかけるストイックすぎる一面を告白した。
本作で第1回木下グループ新人監督賞グランプリを受賞した山田監督は「初日を迎えたという現実感がない。いまだにホント?という気持ち」と夢にまで見た商業映画デビュー作の公開に信じられない様子。吉沢らキャストについては「みんな真面目で、それぞれアプローチが上手。そもそも上手な人しか選んでいないので」と全幅の信頼を寄せ、「俳優が褒められることがこんなに嬉しいことだと初めて気づいた」と感慨深げに語った。
この日はクリスマス。もう少しで新年を迎える。そんな状況下で2021年にチャレンジしたいことを聞かれた登壇者たち。馬場は「幼い頃にやっていたバレエ」、若葉は「できることならばチャレンジはしたくない!」とニヤリ。落合は「自粛期間中に結成したユニットで芝居をしたい」と抱負を述べた。一方、主演の吉沢は「僕がどうこうできる話ではないけれど…」と前置きしつつ「来年は仕事のないクリスマスを過ごしたい。もちろん今日は今日で素晴らしいですが、仕事のないクリスマスも素晴らしい」と多忙ならではの嬉しい悲鳴を上げていた。
最後に吉沢は「この映画は、個人的に今まで自分が出演してきた作品の中でもかなり好きな作品です。将棋の世界は特に勝ち負けがはっきりしますが、それまでのプロセスも大事。この映画を通して、挫折したり努力したりしたこれまでの自分を褒めてあげたい」と作品への思い入れを口にしていた。
『AWAKE』
12月25日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー中
監督・脚本:山田篤宏
出演:吉沢亮 若葉竜也 落合モトキ 寛一郎 馬場ふみか 川島潤哉 永岡佑 森矢カンナ 中村まこと
配給:キノフィルムズ
【ストーリー】 大学生の英一(吉沢亮)は、かつて奨励会(日本将棋連盟の棋士養成機関)で棋士を目指していた。同世代で圧倒的な強さと才能を誇る陸(若葉竜也)に敗れた英一は、プロの道を諦め、普通の学生に戻るべく大学に入学したのだった。幼少時から将棋以外何もしてこなかった英一は、急に社交的になれるはずもなくぎこちない学生生活を始めるものの、なかなか友人もできない。そんなある日、ふとしたことでコンピュータ将棋に出会う。独創的かつ強い。まさに彼が理想とする将棋を繰り出す元となるプログラミングに心を奪われた英一は、早速人工知能研究会の扉をたたき、変わり者の先輩・磯野(落合モトキ)の手ほどきを受けることになる。自分の手で生んだソフトを強くしたい。将棋以外の新たな目標を初めて見つけ、プログラム開発にのめり込む英一。数年後、自ら生み出したプログラムを“AWAKE”と名付け、コンピュータ将棋の大会で優勝した英一は、棋士との対局である電王戦の出場を依頼される。返答に躊躇する英一だったが、相手がかつてのライバル、若手棋士として活躍する陸と知り…。
©2019『AWAKE』フィルムパートナーズ