19世紀にフランスにジャポニズムブームを巻き起こし、西洋近代絵画の源流となった世紀の絵師・葛飾北斎の知られざる生涯を、柳楽優弥と田中泯のダブル主演で描く映画『HOKUSAI』が、2020年初夏に公開されることが決定した。
葛飾北斎は、平均寿命が40歳と言われた時代に享年91歳という長寿人生を送り、代表作「富嶽三十六景」を描いたのはなんと72歳の時、生涯を通して描き残した作品は3万点以上と言われているが、その人生に関する資料は少なく、これまでしっかりと描かれたことがなかった。本作は、構想約3年、数少ない史実をもとに独自の視点と解釈によって、青年期の北斎を目覚めさせた稀代の版元・蔦屋重三郎、そして老年期の北斎のパートナーとなる人気戯作者・柳亭種彦とのエピソードを軸に、“人間・北斎”と、彼が描いた“三つの波の秘密”が生まれるに至った物語を描く。
監督を務めるのは、『探偵はBARにいる』シリーズ、『相棒』シリーズの橋本一。ダブル主演で葛飾北斎に挑むのは、柳楽優弥と田中泯。その才能は認められながらも、売れない絵師として葛藤の中で筆をとり続けた青年期の北斎を柳楽が、芸術家としての情熱を失うことなく孤独に自らの画才を磨き続けた老年期の北斎を田中がそれぞれ演じる。さらに、青年期の北斎を見出した名プロデューサー・蔦屋重三郎に阿部寛、老年期の北斎とパートナーを組む人気戯作者・柳亭種彦に瑛太、青年期の北斎がライバル意識を向ける美人画の大家・喜多川歌麿に玉木宏と、豪華キャストが集結した。
さらに、本作の公開年である2020年に迎える北斎生誕260周年を記念し、「HOKUSAI2020 プロジェクト」が始動。パリ中心部のフランス国立グランパレ美術館で2014年に開催された過去最大規模の「北斎展」では約36万人の総入場者を記録、2017年にロンドンの大英博物館で行われた「北斎展」では、英デイリーメールやオブザーバー紙が5つ星評価をつけ、前売り券が完売、連日当日券を求めて長蛇の列が発生するなど、日本国外でも愛される北斎。オリンピックイヤーとして改めて世界の目が日本に注がれる中、マンガやアニメなど日本オリジナルのコンテンツの原点である北斎の知られざる人生を伝えるべく、海外映画祭への参加や海外配給を視野に入れた全世界同時プロモーションを展開する。
▼キャスト&スタッフ コメント
■柳楽優弥(葛飾北斎役/青年期・壮年期)
僕が演じさせていただいた若い頃の北斎は、あまり情報もなく、謎に包まれていたので、初めはどの様に演じるべきかとても迷いました。様々な資料を読んだり、監督と相談していく中で、逆に知られていないからこそ、僕たちで「北斎像」を作り上げていこうと現場に臨ませていただけたことは、とても楽しくやりがいを感じました。絵を描くことが本当に好きで、数々の壁にぶち当たりながらも徹底的に追求する「好きこそものの上手なれ」ということわざを体現したような世界的スターである北斎さえも、売れない時期や苦しい時代があったということを知れて嬉しかったですし、夢を感じました。世界中にいる北斎の熱狂的なファンの方達にもぜひ観て頂きたいです。
■田中泯(葛飾北斎役/老年期・晩年期)
葛飾北斎はもともと大好きでしたが、役の年頃が、ちょうど今私自身が差し掛かっている年齢でもあり、とんでもないタイミングでこの様なお話が来たな、とご縁を感じました。大勢の人の前で北斎になることができる、というチャンスをいただけたことは本当に幸せなことだと思います。おそらく僕が日常的にやろうとしてもたどり着かない“ある高み”へ引っ張り上げてもらえる、架空からまるで現実の時間のように変わっていく、起こらないことを起こしていくということが、この映画の持つ力なのだと思います。僕は、彼のような才能をこれっぽっちも持っていない人間ですが、ある種の世の中に対する、耐えられないものをずっと持ち続けて生きていることにはすごく共感しました。映画に出てくる北斎のいくつもの重要な言葉がわかると、彼が、単に絵だけで評価されているわけではないということがわかると思います。
■阿部寛(蔦屋重三郎役)
僕は、若き日の葛飾北斎を見つけ、才能を見抜きそして育てた、蔦屋重三郎という役をやらせて頂きました。今でいうプロデューサーであり、北斎や歌麿、写楽など様々な才能を集めて、自身の手で育てていくという先見の明を持ち、絶えず新しいことを作り出していった人物です。おもしろい役でした。果たしてこの人物をどうやって演じようかと、色々と調べましたが、最終的には、現場で実際に柳楽くんたちと対峙することによって作っていきました。北斎を演じた柳楽くんは、動物的というか反射神経というか、彼ならではのお芝居で、“思いのほか柔らかく、思いのほか強く”こういう感じで来るだろうという予測を大体外してきたので、一緒にやっていて楽しかったです。それぞれの絵師たちの生き様、そして僕の演じた蔦屋重三郎の生き様をぜひ見てほしいと思います。
■瑛太(柳亭種彦役)
時代背景問わず、今の日本でも芸術的な事に身を置く人間として何を覚悟して人前に立つのか、田中泯さん演じる、葛飾北斎から教わりました。共演は出来ませんでしたが、柳楽優弥くんの葛飾北斎も心から楽しみにしています。
■玉木宏(喜多川歌麿役)
喜多川歌麿という人物を、絵師ということを大前提にしながらも、ちょっとしたエロティシズムというか、どこかちょっと危うい感じになればと思い、いかにキャラクターのインパクトや作品のメッセージを残すか考え、演じさせていただきました。絵師たちと蔦屋重三郎との関係は、僕らの仕事とも通ずるものがあるように思います。プロデューサー的な存在が蔦屋重三郎で、僕らはアーティスト。皆それぞれに新しい芽が出てくるとそこに対して嫉妬心が生まれたり、プライドや孤独を感じながら自分と向き合っていく。それは現代にも通ずる、この作品の面白さであると思います。登場する浮世絵やセットも色彩豊かで、心に残る、心に響く、日本ならではの作品になっていると思います。
■橋本一監督
葛飾北斎、という人物を、どう描く。後世に残された作品を見て観て診て魅て、想像逞しく9割創造1割事実、なれど10割真実を目指し、撮影開始。彼岸の北斎先生、如何なる思いかは、知る由も術もなく。梅雨の京都、1ヶ月半の撮影中、一度たりとも夢枕に立たざりしは、呆れての無視ではなく、好きにおやりよ、と言う励ましと勝手に解釈、当代一級の出演者陣のチカラを借りての、精一杯の人間絵巻。出来上がるのは、青春活劇か、江戸群像劇か、性と暴力の寓話か、老と妄想の夢幻劇か。そのいずれもが正体にして正体にあらずの摩訶不思議な作品に仕上がれば、齢五十の未熟者の本望。ご期待あれ!
『HOKUSAI』
2020年初夏、全国ロードショー
監督:橋本一
出演:柳楽優弥 田中泯 阿部寛 瑛太 玉木宏
配給:S・D・P
©2020 HOKUSAI MOVIE