日越国交樹立45周年記念「ベトナム映画祭2018」にて上映された、社会主義国家ベトナムにおいて珍しい女性視点の“性”を美しい映像で描いた異色作『漂うがごとく』と、ベトナム戦争時世界中へ散っていったボートピープルたちの今を描く『ベトナムを懐(おも)う』が、3月23日より2本同時公開される。このほど、『漂うがごとく』の予告編と、2作品の場面写真がお披露目となった。
ベトナム映画市場は、近年アジアのなかでも目を見張る急成長を遂げており、ハリウッド映画や日本のアニメーション、国内産ジャンルムービーやエンターテイメント大作のほか、日本では2017年に公開された『草原に黄色い花を見つける』のような、海外で研鑽を積んだクリエイターがベトナムに戻り叙情的なドラマをヒットさせる例が増えてきている。
『漂うがごとく』は、ハノイを舞台に、満たされない想いを抱えながら、彷徨う現代のベトナム人女性を描いた、第66回ベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞受賞作。監督は第6回NHKアジア・フィルム・フェスティバル上映作品『癒やされた地』のブイ・タク・チュエン。ベトナムの鬼才映画監督ファン・ダン・ジーが脚本を担当した、ベトナム映画では少ないアート色の強い作品で、満たされることのない人間の孤独や欲望を表現し、登場人物がそれぞれ抱える心の乾きが、湿度の高いベトナムの風景や水の流れなど美しい映像と共に描かれる。主演のドー・ハイ・イエンは、17歳の時に『夏至』に出演し女優デビュー。初々しい新妻から、情念を身にまとった女に徐々に変わっていく姿を見事に演じた。共演者にも、ベトナム国内のみならず世界で活躍する俳優たちが揃った。
予告編は、主人公ズエン(ドー・ハイ・イエン)とハイ(グエン・ズイ・コア)の結婚式の賑やかさから一転、ある男との出会いを引き金に、ズエンの女性としての秘められた一面が花開いていく表情の変化が感じられる映像となっている。
場面写真は、ズエンと彼女の変化のきっかけとなる男トー(ジョニー・グエン)の悲しげに歪んだ表情や、ズエンの夫ハイが大混雑の街中を運転するカットのほか、ズエンのエロティックな表情を捉えている。
同時公開される『ベトナムを懐う』は、祖国を離れニューヨークで暮らす3世代のベトナム人たちを描いた戯曲を原作に、長く戦争が続いたベトナムの歴史を背負いながら、異国で故郷をおもう各世代の心情を丁寧に描く。監督は、『サニー』のベトナムリメイク版『輝ける日々に』のグエン・クアン・ズン。世代や文化のギャップが生むユーモラスな衝突から、祖国を捨てた息子とその父親、そして孫娘の3世代が対峙することで、ベトナム移民の哀しい背景を描き出した一作となっている。
場面写真は、回想シーンで登場するオリエンタルな結婚式のカットや、ニューヨークのグラフィティの前で故郷を懐う老いた主人公たちの姿を切り取っている。
『漂うがごとく』『ベトナムを懐う』
3月23日(土)より 新宿K’s cinemaにて2本同時公開
『漂うがごとく』
監督:ブイ・タク・チュエン
脚本:ファン・ダン・ジー
出演:ドー・ハイ・イエン リン・ダン・ファム ジョニー・グエン グエン・ズイ・コア
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
【ストーリー】 ハノイで旅行ガイド兼通訳として働くズエン(ドー・ハイ・イエン)と、タクシー運転手のハイ(グエン・ズイ・コア)は、出会って3ヶ月で結婚を決めた。式のあと酔いつぶれ、夫婦の寝室へ担ぎ込まれる新郎ハイを、ズエンはただ見つめることしか出来なかった。後日、式に来られなかった女友達のカム(リン・ダン・ファム)を訪ねた帰り、彼女の代わりに手紙を届けに行ったズエンは、受取人のトー(ジョニー・グエン)に襲われる。ハイとは正反対の 、どこか 危険な匂いのする男・トーに何故か魅了されていくズエン。だが女としての彼女の目覚めはやがてある悲劇を招く…。
『ベトナムを懐う』
監督:グエン・クアン・ズン
出演:ホアイ・リン チー・タイ ゴック・ヒエップ ディン・ヒウ ジョニー・バン・トラン トリッシュ・レ タイン・ミー チョン・カン オアイン・キウ
配給:アルゴ・ピクチャーズ
【ストーリー】 1995年のニューヨーク。雪の中を老人ホームから抜け出してきたトゥー(ホアイ・リン)は、息子グエン(ジョニー・バン・トラン)と孫娘タム(トリッシュ・レ)が暮らしているアパートに転がり込むが、ボーイフレンドの誕生日を祝おうとしていたタムは祖父の乱入に困惑を隠せない。祖父との時間に堪えきれなくなったタムの怒りは爆発、トゥーは家を飛び出すこととなる。そこへ帰って来た息子・グエンは故郷への哀しい思いを語り始めた。なぜグエンは祖国を捨てたのか。タムはベトナム移民である自分のルーツと家族の歴史を知ることになる…。
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