クリント・イーストウッドより2019年元旦を迎えた日本のファンに向けてメッセージ!『運び屋』制作秘話

『許されざる者』(1992)、『ミリオンダラーベイビー』(2004)で2度のアカデミー賞作品賞と監督賞を受賞、大ヒット作『アメリカン・スナイパー』(2014)を手掛けた巨匠、クリント・イーストウッド監督・主演最新作『運び屋』が2019年3月8日より公開される。このほど、2019年元旦を迎えた日本のファンに向けてクリント・イーストウッドよりスペシャルメッセージが寄せられた。

本作は、2014年6月に「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」に掲載された「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」という記事をもとに、イーストウッド監督作『グラン・トリノ』の名手ニック・シェンクが脚本化。商売に失敗した孤独な90歳の主人公アール・ストーンは、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられ引き受けるが、それは実は、メキシコの麻薬カルテルの“運び屋”だった。原題“THE MULE”は、“動物のラバ”、転じて“運び屋”を意味している。

■クリント・イーストウッド スペシャルメッセージ
映画化の出発点は、「脚本が先だった。『グラン・トリノ』の脚本家ニック・シェンクから送られてきた脚本を読んで、面白いと思った。物語の中のエピソードを、広げることもできる」と感じたイーストウッドは、2014年6月に“ニューヨーク・タイムズ”に掲載された「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」という記事の映画化権を取得し、その記事からアイデアをもらい、脚本を作り上げていった。

イーストウッドを惹きつけたのは“前代未聞の実話”だ。「一度だけ法を犯した時に、成功してしまったらどうなるのか。彼は高齢の男性だから、車を運転しても疑われない。停車して人助けをしたり、お金を与えたりする、どこか慈善家でもある。でも続けていくと、多額の金が舞い込むようになる。最初は彼自身も何をやっているかあまり理解していない」と、犯罪意識すらなくブツの運び屋を続けた男を語る。また、イーストウッド自身、88歳になった今も車を運転する。アールのモデルとなったレオ・シャープは、逮捕時は87歳、その後90歳で亡くなっている。映画化に際して本人と会えなかったが、「この映画のような彼を想像できた。彼が実際にそうしたのか、その時間があったのかはわからない。彼はひとりで運転して旅するのが好きだった。私も一人旅が好きだから、そこが共通点だ」と微笑む。

麻薬を運ぶことで多額の報酬を手にするアールだが、孫の結婚パーティや退役軍人クラブを助けるなど、人のために金を使った。犯罪行為について「年配も含め誰もが真似すべきじゃないが、ただ物語は面白い。高齢の恩恵か、誰もが彼を信じてしまう。彼は年寄りで、目立たないし、トラックを運転しているだけだから、誰も気に留めない。それがブツの運び屋として他人に勝る利点だった。彼はいずれにしても車で旅に出るつもりだったから、大金を稼げれば一石二鳥だった」とコメント。

さらに、映画監督、そして俳優としての想像力を信じるイーストウッドにとってレオ・シャープの行動を「リサーチする必要はまったくなかった。想像力で作り上げた。多くの映画は想像力で作られる。架空の人物を考えるのと同じことだ。年配の男がトラックを運転してアメリカを縦断する。麻薬を運ぶ以外は、何を作りたいか、想像力にかかっていた。映画を監督するたび、演技をするたびに、何かを学ぶものだ。ストーリーを語り、それを演じ、冒険をし、問題を解決することによって…。そういうことすべてを通して、自分自身について何かの感覚、あるいは感情を抱き、実際の人生で自分がどうするかを考える。だからこそ、この仕事はとても魅力的なんだ」と映画への愛を語る。

最後に、『運び屋』には、時間という誰にも共通するテーマがある。人は、永遠には走れない。「アールは、自分の家族を幸せにできていないことを知っていて、もう一生、許してもらえないかもしれないと気づいている。それは猛烈な一撃だ。私たちはいつも、まだ時間があると考える。だが、ないのかもしれない。あるのかもしれない。アールにさえ、あるのかもしれない」と結んだ。

『運び屋』
2019年3月8日(金) 全国ロードショー
監督・出演:クリント・イーストウッド
脚本:ニック・シェンク
出演:ブラッドリー・クーパー ローレンス・フィッシュバーン アンディ・ガルシア マイケル・ペーニャ ダイアン・ウィ―スト アリソン・イーストウッド タイッサ・ファーミガ
配給:ワーナー・ブラザース映画

【ストーリー】 アール・ストーン(クリント・イーストウッド)は金もなく、孤独な90歳の男。商売に失敗し、自宅も差し押さえられかけたとき、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられる。それなら簡単と引き受けたが、それが実はメキシコの麻薬カルテルの「運び屋」だということを彼は知らなかった…。

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