MC:原作の末井さんは、この映画が始まるにあたって主役の柄本さんにアドバイスをいくつかされたようですね。
末井:ネタバレになっちゃいますけど…すでにスチールで出ているからいいと思うんですけど、柄本さんの女装シーンがあるんですよね。その時にちょっとコツを教えてあげました。和服ですから下は何を着てもいいんですけど、女装はそれじゃだめなんですよ。まず、女性用のパンティを穿いてブラジャーもつけて、それから上に着ると。そこで気持ちが入っていくわけですよ、下着をつけている時から。そうしないとだめです(笑)。
MC:柄本さんは撮影の時はそのアドバイスを受けてちゃんと女性用をつけたと。
柄本:はい。「ブラジャーとパンティは絶対着用したほうがいいよ。完全にスイッチだから」と言っていただいたので、もうその足で衣装部さんのところに行って「すみません、パンティとブラジャーを用意してください」って言って胸囲を測られて(笑)。ブラジャーのサイズを測られて、取り寄せたパンティとブラジャーを着用して。フロントホックだったかな?(笑)。着用して着物を着て。つけてるときは何か変化があるかなと思ったんですけど、終わった後に、パンツを穿き替えなきゃいけないので、「着替え終わったら教えてください」って衣装部さんに言われて個室に入るわけですね。それで、パンティを脱いで自分のトランクスを穿く分は全然大丈夫でした。ただ、ブラジャーを外すときは、一人だったけどトップを思わず隠してしまうという(笑)、女性がトップを隠されるその気持ちがちょっとわかりましたね(笑)。
MC:なんという舞台挨拶ですか(笑)。私がそこに引っ張ったことを反省しております(笑)。
柄本:すみません(笑)。
MC:映画を観る時は、ブラジャーとパンツをつけてやっているということを皆さんも確認してください。もちろん見えませんけれども(笑)。
柄本:全然見えないし、たぶん始まったら忘れてると思いますよ(笑)。
MC:最後にせっかくですから、本作の映画タイトル『素敵なダイナマイトスキャンダル』ということで、皆さんの“素敵なスキャンダル”をお願いします。あるいは、皆さんが知らなければいいことですから、映画のエピソードでも構いません。では、柄本さんから。
柄本:これがなかなか思い浮かばなくてですね…ストリーキングするシーンがあるんですよ。ペンキをかぶって街中を全裸で走るという。そのシーンの撮影の時に、本当に丸出しでやってはあれなので、全裸に対して前を隠す“前貼り”というものを貼ります。それで、ペンキをかぶって何回かやっていたら、外れていたという(笑)。走っているうちに外れて半分くらい出ていたというスキャンダルでした(笑)。本当にただのスキャンダルを発表する形になりました(笑)。でも、即座に付け替えて。3回くらい付け替えましたけどね(笑)。
MC:なるほど(笑)。続いて、前田あっちゃん。
前田:女装に関係するんですけど、「女装は明後日くらいにするよ」みたいな、(柄本が)撮影ですごい自信を持っていたみたいで。すごかったですよ。「もう絶対きれいだから、俺!」みたいな(笑)。それで「写真送るわ」って、連絡先を知らなかったのに、撮影が終わった後にわざわざ(安藤)サクラさんを通してグループLINEを作られて、そこに写真を送ってきて(笑)。
柄本:作られてって、言い方悪いよなぁ!(笑)。
前田:(笑)。写真をわざわざ、LINEを交換してないのにすごい送ってきて。「どうだ!」みたいな(笑)。すごく自信を持っていましたね。
MC:実際に写真を見ての感想は?
前田:きれい…ではないです(笑)。
柄本:LINEの返信では「あー」くらいだった(笑)。「あー、お疲れ様ですー」みたいな(笑)。
前田:(笑)。
MC:スルーされてますね(笑)。続いて、三浦さん。
三浦:この映画に出ることを、ほぼほぼ親に事後報告したということですかね(笑)。親子関係は今良好なので大丈夫なんですけど(笑)。ほぼほぼ「やるよー」みたいな。もちろん今も(会場に)来ていますけど、「大丈夫」って言ってもらえる自信があったので、決まってから言いました。
MC:なるほど。では尾野さん、いきましょうか。
尾野:現場中でいいますと、着物なんですけども、転ばされてちょっとはだけているんですね。次のカットを撮るときにもう1回はだけなきゃいけないんですよ。その時に自分でやるのではなく、監督自らがサーッ!っと来て、乱すっていう(笑)。これは最高のスキャンダルでしょ!
MC:普通は女優さんが自分でやりますよね?
尾野:女優さんか衣装さんが来るんですよ。なのに、向こうのほうにいた監督がサーッ!と来てバーッ!とやって(笑)。
冨永:一番見ているのは監督ですから。監督がやるのが一番正確だと思うんですよ。
尾野:みんなびっくりしてますよ(笑)。「監督来るんだ!」って言ってますけど(笑)。監督だから、手直しすることもなく「どうぞ、どうぞ」とやるしかないですけどね!
MC:わかりました(笑)。では、原作者の末井さん。
末井:さっき柄本さんも言ったストリーキングのシーンがあるんですけど、あれは僕が実際にストリーキングをやって、それが再現されていて、その日が1970年11月25日なわけですよね。なんで僕がこんなにはっきり覚えているのかというと、その日は大変な日で。その11月25日の昼間に三島由紀夫が市ヶ谷で割腹自殺をして、それから時間的にはズレがありますけど、ニューヨークのハドソン川で、僕が尊敬するテナー・サックスの前衛的なジャズをやるアルバート・アイラーが浮かんでいたと。そういう1970年11月25日という、そのくらいの頃のことを皆さん想像しながら、その頃は生まれていない人もいると思いますけど(笑)、それで映画を観てもらうといいかなと。
MC:では、冨永監督、お願いします。
冨永:僕は予告編を自分で作っていないので、予告編を観て「あ!」っと思ったんですけど、結構“ピー”という音が入っていて。「そうか、これはだめなのか」と思って。映画の中にはいっぱい出てくるんですけれども(笑)。
MC:(笑)。それでは、いよいよこの後、皆さんに観ていただくのですが、主演の柄本さん、今日来てくださった皆さんに直前のご挨拶をお願いします。
柄本:去年の4月5日に撮影が終わって、みんなで出来上がった映画を観たのが7月半ばか頭くらいだったと思います。それから随分長い時間が経ったなぁという実感がありまして、今ようやく皆さんの手元に行くらしいなという(笑)。まだその実感がないんですが、皆さん、これから観ていただけるということで、この時代を疾走していく末井昭さんと、僕が思うのは、冨永監督の色気のある不可思議なこのストーリーテリングを楽しんでいただければなと思っています。後はとにかく、おもしろい!と思ったら、家族にバンバンバンバン言っていただくということが一番我々としては嬉しいので、もし「うーん…」という人がいても、何が「うーん…」だったのかを家族に話していただければ、“うーん…”なものをちょっと観に行きたいなという人もいるかもしれないので(笑)、どんな人がいるのかわかりませんので、とにかく観た感想などを周りに伝えていただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
MC:それではもう一度、冨永監督、お願いします。
冨永:この映画は、末井昭さんのお母さんの爆発から始まった数奇な半生になっています。末井さんが書かれた本とか末井さんから聞いたお話をモデルにして、この映画を作ったわけですけれども、たしかに70年代、80年代という少し昔を舞台にした作品になっておりますので、当時を知る方はちょっと懐かしかったり、ノスタルジーを感じていただいたりもするかと思います。僕らとしては、そんな昔のことは知らないという若い人たちにぜひ楽しんで観てもらいたいと思っています。というのは、すごくおもしろいことをしていた末井さんを僕は尊敬しておりまして、その末井さんの下で働きたいと思ったこともあるんですけど、それは昔なので叶いませんから、そういう気持ちで僕らにできることは何だろうと思ったら、それを映画にして今をおもしろくすることだと思ったんですね。そういう末井さんが雑誌を作ったり、何度もいろいろなことをされていたことの中に、つまらない時に何をすればおもしろくなるのかというヒントがすごく隠されていると思うんですね。それを少しでも、少なくとも映画を好きな人に観てもらいたいという思いで作った映画です。特に若い人に観てほしいです。そして、末井さんの本も読んでもらえたら、本当におもしろいと思いますので、何かの入り口になるといいかなと思います。そして、末井さんが今活動されているペーソスというバンドがあるんですけれども、ペーソスのことも…。
末井:ものすごくいっぱいあるね(笑)。
柄本:皆さん、責任重大ですよ!持ち帰るものがいっぱいありますから!
冨永:今壇上に上がっている、この素晴らしい俳優たちを見てください(笑)。よろしくお願いします。ありがとうございます。
MC:ありがとうございました。『素敵なダイナマイトスキャンダル』東京プレミア上映会舞台挨拶を終了させていただきます。ありがとうございました!
『素敵なダイナマイトスキャンダル』
3月17日(土)より、テアトル新宿、池袋シネマ・ロサほかにて全国公開
監督・脚本:冨永昌敬
音楽:菊地成孔 小田朋美
出演:柄本佑 前田敦子 三浦透子 峯田和伸 中島歩 落合モトキ 木嶋のりこ 瑞乃サリー 政岡泰志 島本慶 若葉竜也 嶋田久作 松重豊 村上淳 尾野真千子
主題歌:尾野真千子と末井昭「山の音」(TABOO/Sony Music Artists Inc.)
配給:東京テアトル
【ストーリー】 バスも通らない岡山の田舎町に生まれ育った末井少年は、7歳にして母親の衝撃的な死に触れる。肺結核を患い、医者にまで見放された母親が、山中で隣家の若い男と抱き合いダイナマイトに着火&大爆発!!心中したのだ─。青年となり上京した末井昭は、小さなエロ雑誌の出版社へ。のち編集長として新感覚のエロ雑誌を創刊。読者の好奇心と性欲をかきたてるべく奮闘する日々の中で荒木経惟に出会い、さらに末井のもとには南伸坊、赤瀬川源平、嵐山光三郎ら、錚々たる表現者たちが参集する。その後も発禁と創刊を繰り返しながら、数々の雑誌を世におくりだしていく…。
©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会