尾野真千子の歌は菊地成孔のお墨付き!映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』サントラ発売記念イベントレポート

伝説のカルチャー・エロ雑誌の編集長・末井昭の自伝的エッセイ「素敵なダイナマイトスキャンダル」(ちくま文庫刊)を、柄本佑を主演に迎え、冨永昌敬監督が映画化した『素敵なダイナマイトスキャンダル』が3月17日より全国ロードショーとなる。本作の主題歌が収録されたサントラの発売を記念し、3月15日に東京・新宿の週プレ酒場にてトークイベントが開催され、主題歌を歌った尾野真千子、音楽監督の菊地成孔、原作者の末井昭、冨永昌敬監督が登場した。

0315ダイナマイトスキャンダル

本作の主題歌「山の音(やまのね)」は、音楽監督である菊地成孔の発案で、“爆発する母”を演じた尾野真千子と原作者の末井昭が歌うという、前代未聞の時空を超えた“母子デュエット”となっている。イベントには、尾野は映画のイメージに合わせた艶やかな着物姿で登場。出演のオファーだけでなく、まさかの主題歌オファーに「戸惑いましたが、お母さん役だから。という逃げられない理由でしたので、お断りできなかったです(笑)」とコメント。劇中音楽を担当し、サントラのプロデューサーをつとめた菊地から「尾野さんの歌は、ほぼ無修正。プロの歌手でも修正しないことはあまりない」と賛辞をおくられ、尾野はレコーディング収録中ずっと「これでいいの?」と戸惑った気持ちでいたことなどを話した。

以下、主な質疑応答。
Q:尾野さんは今回、ダイナマイト心中をするお母さん役ということで、オファーを受けていかがでしたか?

尾野:脚本を読みまして、内容がとても過激でしたので、こんなに過激なものに出演しても良いのか迷ったのですが、すでに主演が柄本佑さんに決定していましたので、監督も冨永さんですし、面白くユニークなものになるのではないかと思い、お引き受けしました。

Q:末井さんは、ご自身のお母様役を、尾野真千子さんが演じられたわけですがいかがでしたか?

末井:びっくりしましたが、すごく嬉しかったです。とてもお洒落が好きな母親でしたので、尾野さんが演じていただけるということは喜んだと思います。

Q:菊地さんが映画に出演された経緯に、ある条件を出されたとのことですが?

菊地:末井さんに主題歌を歌ってもらいたいと考えました。さらに、映画に出演する女優陣が「We Are The World」のように、末井さんを囲んで皆で歌う、というアイデアを着想しました。そこで、「We Are The World」のマイケル・ジャクソンのような立ち位置で母親役の尾野真千子さんに歌っていただこうと考えたのです。劇中で、残された息子である末井さんと、死んでしまった母親のデュエットで、原作者と女優がデュエットすることは、映画史上、初めてのことだと思います。原作者や監督が歌うということは稀にありますが、原作者と女優のデュエットは、これまでもなかったことだと思うので、私自身どうしてもこれを実現したいという、音楽家としての気持ちが高まりまして、これさえOKをもらえれば、僕も映画に出演しようと思いました。ただ、当初の台本では、荒木さん役の出番が多かったので、出番を少なくしてもらい、女優さんが主題歌を歌うという、2点を条件に出演することにしました。

Q:尾野さんは今回が、初の主題歌歌唱ということですが、オファーの際はどのように思われましたか?

尾野:戸惑いましたが、お母さん役だから。という逃げられない理由でしたので、お断りできなかったです(笑)。

Q:レコーディング収録はいかがでしたか?

尾野:そうですね。最初は抵抗がありました。詳しく覚えていないですね。自分の歌が良いのか、悪いのかわからずに、何度か歌わせて頂いて、スタジオの奥からいくつか指示を頂いて、「そろそろ声が枯れてきたので今日はここまでにしましょう」と言われて、続きはまた別日に、という流れで収録しました。菊地さんたちが歌を聞いているブースの声が聞こえないので、とても不安でした。

菊地:歌い終わると、スタッフがコソコソと話している様子が見えるので、不安になりますよね。プロの方でもなりますよ。

尾野:ブースの声が聞こえないので、悪口を言われているような気持ちで、悶々とした気分で収録を終えました(笑)。

監督:尾野さんは、収録中何度も「これでいいの?」と確認されていましたよね?

菊地:不安だったんですね。女優さんは、声はもともとお綺麗ですし、何度か歌って頂くうちにどんどんクオリティも上がって、歌としてとても良いものを録ることができました。

尾野:それ、その場で言って頂きたかったです!(笑)。

監督:「始め抵抗があったけれど、徐々に馴染んでくる」というのは、荒木さんを演じた成孔さんにも同じものを感じましたよ。

菊地:歌手の方でもあまりいないのですが、尾野さんの歌は、ほぼ無修正ですよ。荒木役が“無修正”というとドキドキしますよね(笑)。でも本当に、全体に軽く修正しただけです。末井さんの歌は大修正でしたが!(笑)。

末井:あの歌、難しいんですよね。

菊地:実は、末井さん“無修正版”も持っているのですが、これはスゴイですよ。

末井:音程がずれている、ということですか?

菊地:いえ、リズムが悪いんです(笑)。どんどん先走ってしまうんですね。

末井:ああ、そうでしたか。僕リズム音痴なんですよね。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』
3月17日(土)より、テアトル新宿、池袋シネマ・ロサほかにて全国公開
監督・脚本:冨永昌敬
出演:柄本佑 前田敦子 三浦透子 峯田和伸 中島歩 落合モトキ 木嶋のりこ 瑞乃サリー 政岡泰志 島本慶 若葉竜也 嶋田久作 松重豊 村上淳 尾野真千子
配給:東京テアトル

【ストーリー】 バスも通らない岡山の田舎町に生まれ育った末井少年は、7歳にして母親の衝撃的な死に触れる。肺結核を患い、医者にまで見放された母親が、山中で隣家の若い男と抱き合いダイナマイトに着火&大爆発!!心中したのだ─。青年となり上京した末井昭は、小さなエロ雑誌の出版社へ。のち編集長として新感覚のエロ雑誌を創刊。読者の好奇心と性欲をかきたてるべく奮闘する日々の中で荒木経惟に出会い、さらに末井のもとには南伸坊、赤瀬川源平、嵐山光三郎ら、錚々たる表現者たちが参集する。その後も発禁と創刊を繰り返しながら、数々の雑誌を世におくりだしていく…。

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会