【全起こし】音尾琢真「通行人でもいいらか出してくれ」白石和彌監督「ありがたいけど面倒くさい」映画『サニー/32』トークイベント全文掲載

音尾:そんな中で、春樹先輩、僕の役、なんすか?!あれ!(笑)。申し訳ないなという気持ちになるぐらいの。

白石:(笑)。

音尾:たしかに台本上は22歳って書いてあったけど、きっと僕がやることで年齢設定上がっているんだろうなと思っていたんですけど、まんま22歳じゃないですか!(笑)。

白石:いや、逆に下げましたから。2歳ぐらい下げましたから(笑)。

音尾:(笑)。そんなところにあんなワンクッションに使われて!(笑)。

白石:私書箱に使いました(笑)。

MC:白石監督、最初はなぜ春樹先輩役を音尾さんに?

白石:ほんとにありがたいんだけど、面倒くさくて(笑)。とにかく「通行人でもいいから現場にいたい」と言ってくれるのは本当にありがたいんですけど、だからといってそうはいかないじゃないですか、どう考えたって。この映画は集団劇だから、みんながいないと成立しないんですよ。そこから逆算していくと、舞台がちょうど1年後に入っていて。稽古中だったかな?

音尾:稽古中ですよ。ごめんなさいね、そんなにスケジュールは空けられません(笑)。だけど「通行人でもいいです。出してくれ」と(笑)。

白石:そこが面倒くさい(笑)。それでいろいろやって「この日はどうなの?」って言ったら「そこはだめだ」と。「こっちはどうなの?」「だめだ」と。「じゃあもうここだけ!これ!」って。もう…春樹先輩…。

(会場爆笑)

音尾:24歳って書いてあった設定なんだろうね。

白石:やるっていうから(笑)。

音尾:もちろんやりますよ!「春樹先輩っていう役あるよ」「いいんすか?!やらせてください!」って。

白石:そうですね(笑)。

音尾:だから仕方なく春樹先輩になった(笑)。それでも出してくれる白石先輩はすごい!

白石:いやいや、仕方なくっていうのは話の流れではそうですけど、やっぱりポイントの役だし、明らかに地方のDQNのヤンキーで(笑)。その前に話をなんとなく振ってるじゃないですか、「春樹先輩はやべぇから」って言っていて、どんな人が出てくるのかなぁって(笑)。こいつでこんな感じかぁみたいな。だから撮影もほぼ1日ですよね。

音尾:1日ですよね。

白石:一応、前乗りしていたんですよね。朝早くからカメムシに絡まれながら(笑)。

音尾:すっげぇカメムシが出る支度場だったんですよ。実際に撮影所に使ったところで、あんなにカメムシがいるとこないですよ。札幌テクノパークっていう学校以来ですよ(笑)。

MC:地元トークに花を咲かせていますけども、音尾さんが白石監督に「通行人でも出たい」というきっかけとして『凶悪』をご覧になったんですよね。

音尾:そうです。『凶悪』を観て「うわ、すごい映画だな」と。それで、どうやら高校の1個上の先輩らしいという情報が舞い込んできまして、これまた大先輩の高校のOBがいまして、その先輩から教えてもらい、その方に繋げていただき、会って、その日から「すみません!出させてください!」、事あるごとに「出させてください!」。

白石:毎年お歳暮が届くようになり(笑)。

音尾:これがまたシャビーな内容のお歳暮で(笑)。決して豪華なものではないという(笑)。

白石:「音尾さん、ありがとう!」ってメールを送ると、「袖の下です!」って(笑)。

音尾:あからさまにね!「仕事ください!」っていうやつ(笑)。

MC:そこから『日本で一番悪い奴ら』があり、ロマンポルノの『牝猫たち』があり今回でしたけれども、3回目の現場はいかがでしたか?

音尾:相変わらず白石監督の現場はおもしろいんですよ。毎回言うんですけど、白石監督の現場での演出の指示のおもしろさ、ちょっとしたことなんですよ、ちょっとしたこと。たぶん今回も、北原里英さんが最初のほうで自分のアパートに帰っていくときにケーキを舐めてるのとか、あれも絶対その場で言っていますよ。ああいうちょっとしたことなんですよ!あれの積み重ねがこの映画のおもしろさに繋がる。そして人間性が出たり、その瞬間の何とも言えない悲哀が湧き出るわけです。そういうことを言ってくるのが得意なのがおもしろい!今回は何言われるんだろうと思って。今回は何言われたんだったかなぁ…。あれ?今回そんなに言われてないかも(笑)。

白石:現場で思いついたことでいうと、立ちションさせたんですよ、最後ね。

音尾:あ、そうだ。

白石:全部カットしてるんですけど(笑)。

音尾:そう!ショックだなぁ(笑)。

白石:言わなきゃよかったかな(笑)。やっぱり寒いからトイレを我慢していたんでしょうね、最後に立ちションしたときに、それがなかなか止まらないっていう設定にして(笑)、自分で出すぎてびっくりしてるっていうのをわざわざ単独で撮ったりしてるのに(笑)。

音尾:「これは白石監督だから使ってくれるんだろうなぁ、このおかしなシーン」と思ったらバッサリ!

白石:バッサリ切りました(笑)。

音尾:たしかにそうだ。あそこにあのシーンはいらない(笑)。

白石:おもしろいんですけどね(笑)。

MC:やっぱり出演された方々は、皆さん現場でのエピソードを聞くと寒かった、寒かったとおっしゃいますけれども。

音尾:そりゃあ寒いですよ。新潟県の長岡ですね。雪がある、通るんですから、寒さの中で。

白石:日本海に面しているから、やっぱり北海道よりも寒く感じなかったですか?

音尾:感じましたよ。

白石:風がひどいですよね。

音尾:ひどい、ひどい。映画の中でも信じられないような風が吹いているシーンもありますよね。あの砂の…ビーチですか?

白石:あれは日本海の向こうから厚い雲が見えるんですよ。信じられないスピードでこっちに迫って来て通過していくんですけど、それが上にあるときに雹が降るんですよ。ということを発見して、待とうと。

音尾:うわぁ…鬼?(笑)。

白石:何度も待って。それで風が強すぎて、一生懸命走っているんですけど、すごいスピードが遅かったですよね。だから前に進めないんです(笑)。

音尾:向かい風で?うわぁ、鬼!出演者にとっては鬼だけど、観てるとおもしろい!

白石:おもしろいですよ。

音尾:僕が最後死んだシーンだって、あれでさえ相当な寒さと風だったんですよ。「この現場はキツい現場だ。大変だな、みんな。お疲れ様でーす!」って思って、パパーッて帰ってきたんですけど(笑)。まさかあんなに大変なことがさらにあったなんて信じられない。

白石:とはいえ、あの日は明るいうちに終わらなければならなかったので、ばらしして長岡駅でご飯食べましたよね。終電ギリギリまで。

音尾:そうそう、長岡駅でね(笑)。延々に日本酒を飲み続けて、終電まで粘って飲み続けたっていうね(笑)。あそこでちょうど春樹先輩の後輩役にあたった松永くんと蔵下さん、後輩カップルのお二人と延々お酒を飲みましたよね。「僕が出すよ!」「いやいや!俺が!」と、どうにか白石監督におごるという(笑)、また袖の下を渡すということをしたうえで、今仕事が繋がっていると(笑)。

(会場爆笑)
IMG_5484