MC:おもしろいですね。役によってそれぞれ違うことをおっしゃるというね。そして、最後に二階堂さんなんですが、ハルナ、こうやってご紹介するだけでも枕詞が強烈なキャラクターの中に囲まれて、実はキャラクターという意味ではわりと薄めなんですよね。
二階堂:そうですね。
MC:そして生きる実感が希薄というか、虚無感みたいなものを感じたんですけれども。
二階堂:15、6、7、8ぐらいの私にもそういうところはあったんじゃないかなっていうのはやっていて思いましたね。リアルタイムじゃないからこそ、俯瞰して自分のキャラクターと自分というものを重ねながら現場にいることができたので、そこは大いにあったと思います。
MC:皆さんが一様におっしゃるのは、自分と役柄は全く一緒じゃないけれども、演じていくうえで自分に気づくと、それがすごくおもしろいなぁと、きっと観客の皆さんもそういう体験をされると思います。今日のこの完成披露にて、映画を観客の皆さんに初めてご覧いただくのですが、実は主題歌の小沢健二さんの「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」という曲がラストに流れるんですけれども、これはもう聴いている人はおかしいというか(笑)、今日が本当に初公開なんです。ですから、皆さんが初めてこの曲を映画の後に聴くという、立ち会っていただくということになります。監督、曲が小沢さんから届いたとき、どのように感じましたか?
行定:映画のラストで、最初はふみちゃんから聞いたのかな、「小沢さんがたぶん主題歌を書いてくれますよ」みたいな話を(笑)。「ほんとかよ!」って思って。ある種、『リバーズ・エッジ』の時代というものがよくわかっている人にエンディングは飾ってもらいたいというか、小説でいうと最後のあとがきみたいな役割をやってもらいたいなというところを、小沢さんは本当にドンピシャで作ってもらえたなぁと。僕が想像していたものとは違いました、正直。違ったので、(映画に曲を)あてる箇所も変わるんですよね。ちょっとだけですよ。ほんのちょっとだけ変わるんです。それで最後だけ、ちょっと意識的に観ていただくとわかるんですけど、最後だけ画も変わります。画としか言わないですけど、変わらせられたというぐらい、本当に90年代の『リバーズ・エッジ』、要するに岡崎京子がこの作品を生み出した時代というものをものすごく体感できる曲にしてもらったという。そういう意味ではエールにも聴こえたり、これから生きていく人間に対するエールとかにね、そういう意味ではあの人はやっぱり天才なんだなぁと。全然違うところに、観客とか僕ら作り手にちゃんと着地点を見出させてくれる、そういう意味では素晴らしい曲だなぁと思いました。
MC:今の言葉をお聞きになってもおわかりのように、いわゆる主題歌というものを完全に越えて、作品の一部、あとがきとおっしゃいましたけれども、そうなっているところをしっかりと聴いていただければなと思います。ちなみに、二階堂さんと吉沢さんはボイスとして参加もされていますので、そのあたりも楽しんでいただければと思います。
そして、この作品は先週ニュースで大きな話題となりましたけれども、今年のベルリン国際映画祭パノラマ部門のオープニング上映に決定いたしました!
(会場拍手)
MC:本当に素晴らしいことで、ベルリンは世界三大映画祭です。そのベルリンで日本の映画がパノラマ部門のオープニングに選ばれるというのは、山田洋次監督の2007年の『武士の一分』以来ですから11年ぶりということになります。ちなみに、行定監督はこれで5度目のベルリンへの参加ということになります。行定監督と二階堂さん、吉沢さんはベルリンに行って実際にレッドカーペットを歩かれると。行定さんはもう何度も歩かれているわけですよね。
行定:いや、レッドカーペットは歩いたことはないです。
MC:そういう意味では、5回目にしてレッドカーペットという。
行定:もうね、二階堂ふみからのプレッシャーがすごくて。「ベルリン行きたいなぁ、ベルリン行きたいなぁ」って言うんですよ。そんなねぇ、相手が決めることなんで(笑)。相手が選んでくれないと行けないですよね、映画祭って。何気に行っているような感じがするじゃないですか。お金か何か渡せば行けそうと思っている人がいると思うんですけど(笑)、そういうことは本当にないんですよね。特に三大映画祭は自分たちのプライドを持って映画を選んでくれるので、「いやー、行きたいよ、俺も」と言いながら(笑)。静かなる身内からの初めてのプレッシャーという(笑)。
MC:二階堂さんのプレッシャーをかけたかいがあったのか、叶いましたね!
二階堂:本当に行定監督のおかげで行けることが決まり、本当にありがとうございます(笑)。
行定:(笑)。
二階堂:せっかくこういう素敵な作品というか、力強い、魂のこもった作品になったと思うので、ぜひ海外の方にも観ていただきたいなと思いましたし、やっぱり岡崎京子先生の『リバーズ・エッジ』という名作も同時に、もちろんたくさんの方が知っているんですけど、もっともっと多くの方に知っていただきたいという気持ちもあったので。すみません、プレッシャーになっていたということはちょっと知らずに、純粋な気持ちで発言しておりました(笑)。
MC:そして吉沢さんは初めての海外の映画祭ということになりますね。
吉沢:海外どころか国内も映画祭というものに参加するのが僕は初めてなので。
MC:いきなりベルリンというのはすごいですね!
吉沢:本当ありがたいんですけど、だからもう本当にドキドキしています。行ったこともないし、映画祭ってそもそも何するもんなんだというところからなので(笑)。
MC:さっき本当に監督に確認されていましたものね。
吉沢:(笑)。本当に裏で「映画祭って何するんですか?」って聞いて(笑)。すごく光栄な話で、世界の三大映画祭と言われる映画祭に自分が行けたりとか、この作品で行けるというのは、僕自身もこの作品はすごく挑戦的な、魂がこもった作品になったのですごく嬉しいです。光栄です。
MC:我々もベルリンでどんなふうに受け入れられるのか見守りたいなと、そして土産話も聞きたいなと考えているところです。
それでは最後に、キャスト、監督を代表して二階堂さんから観客の皆さんにメッセージを頂戴できますでしょうか?
二階堂:皆さん、短い時間でしたがありがとうございました。私たちの言葉を、この映画に対する気持ちを皆さんにお伝えすることができて本当に嬉しく思います。この『リバーズ・エッジ』という作品を生み出した岡崎京子先生がこの映画を観てくださりまして、メッセージをいただくことができました。私が代わりに読ませていただきます。すごく素敵なお言葉をいただくことができました。
「みんな観てね!!岡崎京子」
すごく説得力あるお言葉だと思います(笑)。岡崎京子先生、主題歌を歌ってくださった小沢さんと一緒に観にきてくださって、本当に喜んでくださいました。私たちが頑張って作った作品です。今日は最後まで堪能していってください。今日はありがとうございました!
MC:『リバーズ・エッジ』完成披露舞台挨拶でした。どうぞ皆さん、盛大な拍手をお願いいたします!ありがとうございました!
『リバーズ・エッジ』
2月16日(金)より TOHOシネマズ 新宿他全国ロードショー
監督:行定勲
原作:岡崎京子
主題歌:小沢健二「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」
出演:二階堂ふみ 吉沢亮 上杉柊平 SUMIRE 土居志央梨 森川葵
配給:キノフィルムズ
【ストーリー】 「若草さん、今晩ヒマ? 僕の秘密の宝物、教えてあげる」。若草ハルナ(⼆階堂ふみ)は、彼⽒の観⾳崎(上杉柊平)がいじめる⼭⽥(吉沢亮)を助けたことをきっかけに、夜の河原へ誘われ、放置された“死体”を⽬にする。「これを⾒ると勇気が出るんだ」と⾔う⼭⽥に絶句するハルナ。さらに、宝物として死体を共有しているという後輩でモデルのこずえ(SUMIRE)が現れ、3⼈は友情とは違う歪んだ絆で結ばれていく。ゲイであることを隠し街では売春をする⼭⽥、そんな⼭⽥に過激な愛情を募らせるカンナ(森川葵)、暴⼒の衝動を押さえられない観⾳崎、⼤量の⾷糧を⼝にしては吐くこずえ、観⾳崎と体の関係を重ねるハルナの友⼈ルミ(⼟居志央梨)。閉ざされた学校の淀んだ⽇常の中で、それぞれが爆発⼨前の何かを膨らませていた。そんなある⽇、ハルナは新しい死体を⾒つけたとの報せを⼭⽥から受ける…。
© 2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社