【全起こし】高良健吾「多十郎が今の自分を作ってくれている」映画『多十郎殉愛記』完成記念プレミア上映会舞台挨拶レポート 全文掲載

MC:続きまして、溝口蔵人役の寺島進さんです。

寺島:抜刀隊隊長、溝口をやらせていただきました寺島進でございます。去年の今頃、この中島組で準備してまして、ちょうどその頃に、私は京都にいまして、メイク室に台本がありまして。だいたいキャストは決まってたんですけど、抜刀隊の溝口というのが空白で決まってませんで、自分が中島監督を見つけて、直談判しに行きました。そしたら監督が「実はこの役は松方弘樹さんにやってもらいたいんだよね」と言われて(笑)。自分はドキッと、身が引き締まる思いだったんですけど、松方弘樹さんの追悼だと思いまして、今回は、本当に真剣に。ここ十年ないぐらい、本当に真剣にやらせていただきました。よろしくお願いします。

MC:ありがとうございました。それでは、その経過なども含めて、お話をいただければと思います。中島貞夫監督です。

中島:ご来場、ありがとうございます。20年空白があったということなんですけど、僕の中ではそんな気持ちはありませんでした。いつも映画を作ろうと思い続けていたんですけれども、特に5年ぐらい前から、京都で映画作りを教えてもらった私としては、京都の映画作りの中で、何が一番大切なんだろうと。何が京都の映画の特徴だったんだろうと。助監督時代、立ち回りシーンは大嫌いでした。それはなんだったんだろう。いろいろ考えた中で、一昨年、「時代劇は死なず ちゃんばら美学考」というドキュメンタリーを作ってみました。京都の映画の歴史、そしてその中で扱われた、チャンバラというのは一体何だったんだろうか、その結論として、チャンバラはドラマであると。チャンバラは単なるアクションではない、そこには様々ないろいろな形のドラマがあったはずだと。ドラマとしてのチャンバラを撮りたい。その思いで、このシナリオを谷慶子くんと共に作りました。なんとかして、そうした作品を世に問うてみたいということで、この歳で皆さんにご迷惑をかけることは重々承知の上で、作品に取り掛かったということでございます。作品はこれから観ていただくわけで、これは皆さんのご判断にお任せするしかないわけですけれども、チャンバラというのが単なるアクションではなくて、そこにはドラマがあるんだと。どんなドラマが展開するか、それを楽しみに観ていただければと思います。ありがとうございます。

MC:ありがとうございました。寺島さんは直談判されたそうですが、他の皆さんは中島監督とは初めてお仕事をされる方がほとんどだったと思います。日本映画界の歴史を築いて来られたレジェンドですから、そういう監督さんとご一緒されてみていかがでしたか?高良さん。

高良:とにかく中島組でできるということが幸せでした。入る前から幸せでしたし、やってるときも幸せでしたし、これは冗談でもなく今も幸せです。ずっと続いています、多十郎に携われたことが今の自分を作ってくれているというか、それは綺麗ごとでもなんでもなくて、実際完成したものを観ても、思うことはたくさんありますし、さっきも言いましたが、それは30代の最初の主演だったということで気合は入っていて。その気合というものが、こうなるんだという個人的な思いもありますし、時代劇ってやればやるほどだと思うんです。やればやるほどの中で、まだ僕は時代劇というものはこれからもっともっと経験を積んでいきたいんですけど、だからこその自分に対しての伸びしろ感じるし、それに対しての悔しさもあるけれど、だけどあの時に中島組で感じられたこと、できたことは、あの時だけなんですよね。そのおかげで、この仕事を頑張れているというか、それだけの気持ちを持てた現場だったというのは、きっと中島監督だったからだと思うんですよね。それぐらい、中島組というのは僕にとって大きい組でしたね。

MC:監督は怖くなかったですか?

高良:…全く(笑)。ただ、たまにこの(中島監督が持っている)杖が殺陣の時に刀になるんですね。その時は、面白かったです(笑)。

MC:ありがとうございます。

高良:ありがたいですよね、監督が教えてくれるので。格好いいですよ。

MC:それが生かされて?

高良:生かしました。