東出昌大と濱口竜介監督がタッグを組み、芥川賞作家の柴崎友香による同名恋愛小説を映画化した『寝ても覚めても』が9月1日より公開中。このほど、第29回シンガポール国際映画祭にて、現地時間12月3日に行われたガラ・レッドカーペット、4日に行われた本作の公式上映に、主演の東出昌大が登壇した。
12月3日20時、気温は30度越えのシンガポール。熱さに負けない会場の熱気に包まれたレッドカーペットには、世界各国からゲストが来場した。日本からは本作を引っ提げ、初めてのシンガポール映画祭に登場した東出昌大は、ジバンシィを纏い颯爽と車から現れた。レッドカーペットに足を踏み入れた東出に、一斉にフラッシュがたかれ、他の登壇者よりもまばゆく光輝いた。ファンの歓声に笑顔で手を振り、サインを求めるファンにも丁寧に対応していた。
翌4日21時50分から行われた公式上映では、満席の会場につめかけたファンが東出の登場に歓声をあげた。「滞在時間は少ないですが、シンガポールはとても楽しいです!」と挨拶をした東出は、上映を観客と一緒に楽しんだ。これまで各国の映画祭で上映されている本作だが、今までの上映で一番多く笑いが起こっていたのではないかというほどの盛り上がりをみせ、特に伊藤沙莉演じる春代がシンガポール名を名乗るシーンでは大爆笑の渦に包まれ、エンドロールでは拍手が会場に響いた。
上映終了が24時少し前、終電が終わるかどうかという時間になり、東出の口からも「終電の方は無理せずに…」と前置きをしたものの、Q&Aには多くの観客が残り、東出の言葉一言一言に耳を傾けていた。この日の司会を務めたのは、長編作品がカンヌ国際映画祭に出品された経験を持つ、今シンガポール一熱い若手映画監督のブー・ユンファン。「美しく、素晴らしい映画だった。今回の役をどう演じられたんですか?」と問われると、東出は「麦と亮平を同時期に別の作品で一人ずつ演じていたような心持ちでした。お芝居をしようと意気込むと気負いが生まれてしまうが、監督から『普通に生活を送る生きてる人間は演じない、だから役を生きた人間として演じてください』と言われました」と濱口竜介監督から指示があったことを明かした。
また、方言について質問が上がり「舞台は大阪、東京、東北。でもこの3つはオーストラリア、イギリス、アメリカほどの言葉の違いがあるんです。麦はイギリス英語、亮平はアメリカ英語」という東出の例えに、会場からは「なるほど!」というような感嘆の声が聞こえた。原作との違いについては、「原作からは短くなっていて、新たに付け加えられたシーンもある。でも原作には映像化のヒントとなるような宝物がたくさん潜んでいるので、それを拾い集めて映像化されています」と回答した。
最後に本作で描かれる愛の形について質問が出ると「主題歌の『RIVER』に、『ふたりの愛は 流れる川のようだ 途切れることないけど つかめない』という歌詞があって、本編でも川について『濁ってる』『汚い』『綺麗』と表現するセリフがあるんです。いろんな形、色をしている川を『途切れることないけど つかめない』と表現したこの歌詞が、この映画の中で描かれる愛の解釈なのではないかと思っています」と回答。東出の映画本編と主題歌についての解釈に、会場は盛大な拍手を送った。
『寝ても覚めても』
9月1日(土)より全国大ヒット公開中
監督:濱口竜介
原作:柴崎友香「寝ても覚めても」(河出書房新社刊)
音楽:tofubeats
主題歌:tofubeats「River」(unBORDE/ワーナーミュージック・ジャパン)
出演:東出昌大 唐田えりか 瀬戸康史 山下リオ 伊藤沙莉 渡辺大知 仲本工事 田中美佐子
配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス
【ストーリー】 東京。カフェで働く朝子(唐田えりか)は、コーヒーを届けに行った先の会社で亮平(東出昌大)と出会う。真っ直ぐに想いを伝えてくれる亮平に戸惑いながらも朝子は惹かれていき、ふたりは仲を深めていく。しかし、朝子には亮平には告げていない秘密があった。亮平は、かつて朝子が運命的な恋に落ちた恋人・麦(バク)(東出昌大)に顔がそっくりだったのだ―。
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