10月25日から11月3日に開催される第31回東京国際映画祭で、日本映画をより世界へ強く発信していく企画として2つの特集を実施することが発表され、日本を代表する作品の数々を映画祭独自の視点でセレクションする「Japan Now部門」で俳優の役所広司を、今年のアニメーション特集としてアニメーション監督の湯浅政明を特集することが決定した。
近年の日本映画を振り返り、現在の日本を代表する作品の数々を、映画祭独自の視点でセレクションする「Japan Now部門」では、国内外で幅広く活躍する俳優の役所広司を、「映画俳優 役所広司」として特集。東京国際映画祭最優秀男優賞受賞作『CURE』(1997/黒沢清監督)、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞作『Shall we ダンス?』(1996/周防正行監督)、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『うなぎ』(1996/今村昌平監督)、米アカデミー賞作品賞ノミネート作『バベル』(2006/アレハンドロ・ゴンサレス・イリャニトゥ監督)など、出演作が国内外を問わず国際的に高く評価されている役所のこれまでの軌跡を辿りつつ、その魅力を世界に発信する。本部門では、これまでに原田眞人監督、岩井俊二監督のほか、昨年は特別編として女優の安藤サクラ、蒼井優、満島ひかり、宮﨑あおいの4名を特集した。今年は、昭和の時代の貴重な作品から最新作までを紹介する初の大規模上映となる。
さらに、今年のアニメーション特集として、国内外で多くの賞を受賞したアニメーション監督の湯浅政明を、「アニメーション監督 湯浅政明の世界」として特集する。昨年発表したオリジナル長編映画『夜明け告げるルーのうた』は、世界最大級のアニメーション映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭」にて長編部門グランプリにあたるクリスタル賞を受賞。宮崎駿監督、高畑勲監督に次ぐ、日本人史上3人目となる快挙を成し遂げ、これからの日本アニメを牽引する存在として期待されている。また、湯浅監督は「ちびまる子ちゃん」や「クレヨンしんちゃん」、「ドラえもん」など、日本を代表するアニメシリーズにも数多く携わり、2017年に公開された『夜は短し歩けよ乙女』は、第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞、さらに第41回オタワ国際アニメーションフェスティバルでは、日本人として初めて長編部門グランプリを受賞するなど、その作品群に世界の注目が集まっている。
Japan Now部門:「映画俳優 役所広司」
■役所広司 コメント
芝居に興味を持って、今年で40年。子供の頃から何一つ長続きしたものがない僕にとって、40年同じことを続けられるなんて奇跡です。役者という仕事は不思議で、どんなに恥をかいても、失敗だらけでも、一つの作品が終ると「ひょっとしたら、次は上手くいくかも知れない…」と思ってしまうのです。それがこの世界の毒なのでしょうかね?今回の特集上映、とても光栄です。そして、今まで自分に影響を与えてくれた全ての人に感謝します。
■プログラミング・アドバイザー 安藤紘平(映画監督・早稲田大学名誉教授) コメント
東京国際映画祭「Japan Now」のコンセプトは、「今日の日本映画を通じて、海外に“日本の今”とそこに在る日本の美意識、文化とその魅力を感じてもらうこと」です。本年は、“日本の今”を代表する俳優、役所広司を特集して、彼と日本映画の魅力を再認識していただきたいと思います。誰をも圧倒する彼の存在感は、役柄の幅の広さとその演技力にあります。あるときは、殺人犯の揺れ動く神秘的な心理をあたかも神のように演じ、またあるときは、猟奇殺人事件の担当刑事が怪物になっていく姿を、まるで悪魔のように演じます。ダンスに取り付かれたサラリーマンのラブロマンスをコミカルに普通の人として表現するかと思えば、日本の美意識を体現する武士から、歴史上の人物まで、極めて人間的に、そして独特の想像力をもって、その存在感をスクリーンに刻印します。日本のみならず、カンヌ映画祭をはじめ、毎年の映画祭で名前を挙げられないことはありません。日本を代表する国際的映画俳優“役所広司の魅力”を特集いたします。
アニメーション特集:「アニメーション監督 湯浅政明の世界」
■湯浅政明監督 コメント
世界中から作品が集まる国際映画祭で、まさか自分の名前のついた特集上映が実施される日がくるとは思いもしませんでした。このような機会をいただき、大変光栄ですし、とてもびっくりしています。いままで制作に携わってくださったスタッフ・キャストの皆さんの仕事が再び日の目を見る事も嬉しいですし、ぜひこの機会に、未だご覧になった事のない多くの皆様に観ていただく事ができればとても嬉しく思います。私自身も作品を振り返る機会をいただいたと思い、楽しみたいと思います。
■氷川竜介(アニメ特撮研究家・明治大学大学院客員教授) コメント
《天才》とは湯浅政明のためにある言葉だ。作風は自由闊達で、独自のカラフルさと胎内回帰を思わせる心地よい《ゆらぎ》に充ちている。自然や神秘の世界からハードバイオレンスやナイーブな心情まで、森羅万象を気の赴くまま独特の視点で切り取り、映像に焼きつける。中でも「絵の動き」はダイナミックで、アニメーションの魔法パワーを再確認させてくれる。一度見始めたら目が離せない、そんな湯浅政明監督の世界に浸ってほしい。
▲『夜明け告げるルーのうた』 (c)2017 ルー製作委員会