「普通の役作りは通用しない。最後は身一つでいくしかない」尾野真千子が覚悟で挑んだ“恐怖の河瀨組”

『たしかにあった幻』の完成披露上映会が、1月22日にテアトル新宿で開催され、河瀨直美監督をはじめ、尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏が登壇した。河瀨監督にとって久々となる舞台挨拶の場で、本作に込めた想いと、徹底したリアリズムを貫く“河瀨組”ならではの撮影現場のエピソードが語られた。

河瀨監督は、日本初お披露目となったこの日について「皆さんに映画を届けられる唯一無二の日。河瀨組をいつも支えてくれる皆とこの場に立てて感無量」と笑顔。ロカルノ国際映画祭での反響を振り返り、「割れんばかりの拍手と“河瀨、帰って来た!”という声に胸がいっぱいになった」と語った。

本作で、息子を亡くした母・めぐみを演じた尾野真千子は、『萌の朱雀』『殯の森』以来となる河瀨作品への参加。「『主演以外やるの?』って言われて『やるし!』って(笑)。やると決まったら“恐怖の河瀨組の日々”が始まるのは分かっていました」と率直に告白。「普通の役作りは通用しない。何を勉強すればいいのかも分からず、最後は身一つでいくしかないと思った。それが正解だった」と覚悟をもって撮影に臨んだことを明かした。これに河瀨監督は「100点超え。河瀨組の一番強いところが出た」と最大級の賛辞を贈り、尾野は照れ笑いを浮かべながらも喜びを噛みしめていた。

長編映画として初めて河瀨組に参加した北村一輝は、徹底したリアリズム演出について「本物を撮ろうとすれば、きつくなるのは当然。覚悟して現場に入った」と語り、役作りのために実際のお弁当屋を訪ねたエピソードを披露。「芝居を見せるというより、この映画が描く現実を“伝える人間”として現場にいた」と振り返った。

近年、河瀨作品への出演が続く永瀬正敏は、「物語の前後まで撮る監督の現場は、改めて身が引き締まる」と感慨深げ。さらに本作には編集の異なる複数バージョンが存在することが明かされ、「日本公開版では出ていなかったりして…」と冗談めかして会場の笑いを誘った。

イベント終盤には、「たしかにあった●●」をテーマに、それぞれの人生で大切なものを発表。尾野は「台本」と答え、「撮影が終わった台本やスケジュールは全部取ってある。押し入れがパンパン」と作品への深い愛着をのぞかせた。最後に河瀨監督は、「本当に会いたい人に会いに行く、諦めない想いを持つ――そんな気持ちを主人公コリーの最後に託した」と観客にメッセージを送り、温かな拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。

■作品情報
タイトル:たしかにあった幻
公開日:2026年2月6日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本・編集:河瀨直美
出演:ヴィッキー・クリープス、寛一郎、尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏 ほか
配給:ハピネットファントム・スタジオ

© CINÉFRANCE STUDIOS – KUMIE INC – TARANTULA – VIKTORIA PRODUCTIONS – PIO&CO – PROD LAB – MARIGNAN FILMS – 2025