「イジってイジリ倒してください。叩けば響く男ですから」綾野剛が語る“こじらせ男”の愛と可笑しみ

脚本・監督を 荒井晴彦が務め、主演に 綾野剛を迎えた映画『星と月は天の穴』が、12月19日(金)よりテアトル新宿ほか全国公開。公開初日にはテアトル新宿にて舞台挨拶が行われ、綾野をはじめ、共演の咲耶、田中麗奈、そして荒井監督が登壇した。

満員御礼の客席を前に、主人公・矢添克二と、彼が執筆する小説内の人物という二役を演じた綾野は、「無事に公開を迎えられてホッとしています」と率直な心境を吐露。「哲学的に見えるかもしれませんが、僕自身は“文学コメディ”のように感じている作品。思っていたよりも観やすいな、と軽やかに受け取ってもらえたら」と観客に語りかけた。

大学生・瀬川紀子役で、本作が初の初日舞台挨拶となった咲耶は、「とても嬉しい反面、もう映画を観終えた皆さんを目の前にすると、今どう思われているのか怖くもあります」と初々しい表情。一方、矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じた田中は、「咲耶ちゃん、素晴らしかったですよね?」と客席に呼びかけ、会場から大きな拍手が沸き起こる場面も。照れ笑いで「珍味でしたでしょう?噛めば噛むほど…」と返した咲耶に、荒井監督がすかさずツッコミを入れるなど、終始和やかな空気に包まれた。

荒井監督は、本作で“小説の文章を字幕として提示する”という演出について、「脚本家としては禁じ手。でもゴダールは昔からやっていた」と持論を展開。これに対し綾野が「今は配信などで字幕に慣れている人も多い」と応じると、荒井監督は「じゃあ、もっと増やせばよかったかな」と笑いを誘った。

また撮影裏話では、綾野が「“良かったね、お父さん”という台本にない咲耶さんの一言が、完璧すぎて一番笑いをこらえられなかった」と告白。「滑稽を本気で生きる、その瞬間が最高に楽しかった」と語ると、荒井監督も深く頷いた。田中も艶やかなシーンについて「愛おしさが溢れて、自然とああなった」と振り返り、会場は再び笑いに包まれた。

年末の話題では、咲耶が「この作品に関わった時間は宝物」と語り、田中は「邦画が豊作で、映画館に通った幸せな一年」と回顧。79歳を目前にした荒井監督は「父が亡くなった年を越えられるかがテーマ」とニヤリとし、綾野は新年の抱負として「健康第一。役に体を預けるための母体を整えたい」と俳優としての覚悟を語った。

最後に綾野は、「この映画をたくさん育ててあげてください。矢添克二も喜びます。イジってイジリ倒してください。叩けば響く男ですから」と、作品への深い愛情とユーモアを込めてメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。

■作品情報
タイトル:星と月は天の穴
公開日:2025年12月19日(金) テアトル新宿ほか全国ロードショー
脚本・監督:荒井晴彦
原作:吉行淳之介「星と月は天の穴」(講談社文芸文庫)
出演:綾野剛、咲耶、岬あかり、吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈
配給:ハピネットファントム・スタジオ
上映時間:122分
レイティング:R18+

©2025「星と月は天の穴」製作委員会