芥川賞作家・川上未映子が2011年に発表した初の長編恋愛小説『すべて真夜中の恋人たち』(講談社文庫)が、ついに映画化される。監督を務めるのは『あのこは貴族』(2021)で女性の生き方を繊細に描き高い評価を得た岨手由貴子。主演に岸井ゆきの、共演に浅野忠信という日本映画界屈指の実力派が集結し、2026年に全国ロードショーが決定した。
2008年『乳と卵』で芥川賞、2019年『夏物語』で毎日出版文化賞を受賞し、世界40ヵ国以上で翻訳されるなど国際的にも注目を集める川上未映子。その代表作の一つであり、国内累計発行部数40万部を突破した『すべて真夜中の恋人たち』は、女性たちから圧倒的な共感を得た恋愛小説だ。米TIME誌「2022年の必読書100冊」に選出されるなど、今なお世界的な支持を得る作品が、満を持して初の映像化を迎える。
物語の主人公は、人との関わりを避けて生きるフリーの校閲者・入江冬子。孤独を抱えながら生きる彼女が、年上の物理教師・三束と出会い、少しずつ閉ざした心を開いていく――。原作の静謐な世界観を丁寧にすくい取るのは、約5年ぶりの長編映画となる岨手由貴子監督。前作に続き、女性の心の機微を繊細に描く手腕で、川上文学が持つ柔らかくも鋭い感情を16ミリフィルムに焼き付けた。
冬子を演じるのは、『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱監督)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた岸井ゆきの。原作のファンでもあるという彼女は、「原作の文字のイメージから抜け出すのに試行錯誤した」と語りながらも、冬子の孤独と内なる変化を繊細に体現している。一方、三束を演じるのは『SHOGUN 将軍』(2024)でゴールデングローブ賞を受賞した浅野忠信。浅野は「彼の秘密をとことん考えた」と語り、岸井との静かな共鳴を描き出した。
「女と男が出会い、関係が変化していく」というありふれた物語を、川上×岨手×岸井×浅野という奇跡のコラボレーションが現代的な“孤独とつながり”の物語へと昇華させる。観る者すべてを優しい光で包み込む、究極の恋愛映画がここに誕生する。
【コメント抜粋】
岸井ゆきの
「この物語が映像として立ち上がるとき、冬子として立っていたいと思いました。原作を愛するすべてのみなさまに、もう一度冬子に出会っていただきたいです。」
浅野忠信
「三束さんという役をより確かなものにできたのは、岸井ゆきのさんが演じる冬子がいたからです。監督と共にフィルムで撮ることで、より深く作品を表現できました。」
監督・岨手由貴子
「原作に魅せられたスタッフ・キャストの出会いが、この映画をつくりあげました。多くの方に観ていただき、この物語について語り合ってほしいです。」
原作・川上未映子
「監督や俳優の方々によって、文章では知ることのできなかった感情や記憶に出会いました。皆さんに観ていただける日が今から楽しみでなりません。」
■作品情報
タイトル: 『すべて真夜中の恋人たち』
原作: 川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」(講談社文庫)
監督・脚本: 岨手由貴子
出演: 岸井ゆきの、浅野忠信
製作: 『すべて真夜中の恋人たち』製作委員会
製作幹事・配給: ビターズ・エンド
制作プロダクション: C&Iエンタテインメント
公開: 2026年、全国ロードショー
©2026『すべて真夜中の恋人たち』製作委員会