第47回ぴあフィルムフェスティバル2025特集企画部門「ヌーベルバーグ」で行われた上映後トークに、山中瑶子監督、吉田大八監督、そしてサプライズで石井聰亙(岳龍)監督が登壇。『人魚伝説』(池田敏春監督/1985)、『爆裂都市 BURST CITY』(石井聰亙監督/1982)という、日本映画史に刻まれる2作品を軸に、三者三様の視点から映画の力が熱く語られました。
山中監督がセレクトしたのは池田敏春監督の『人魚伝説』。「大学生の頃、石井隆さんに夢中になっていて、その流れで池田監督の作品も観るようになったんです。『人魚伝説』はただの復讐劇ではなく、私の心にはいつも(主演の)白都真理さん演じる“みぎわ”がいるんです」と語り、作品への深い思い入れを明かしました。
一方で吉田監督は、自らの転機となった『爆裂都市 BURST CITY』を挙げました。「映画にそこまで興味がなかった自分が、この作品を観て“自分も撮りたい”と具体的に動き出した。行動を促した映画は『爆裂都市』しかなかったんです」と振り返ります。また、自主制作した短編『爆裂家族』のエピソードを紹介し、「映画を撮るのは本当に楽しいと思った」と笑顔を見せました。
会場を大きく沸かせたのは、『爆裂都市』のメガホンをとった石井聰亙(岳龍)監督の突然の登場でした。「本当に邪魔はしたくなかったんですが、上映していただいたこと、池田監督とも親しかったこともあって、お礼を言わなきゃと思って来ちゃいました」と語る石井監督に、会場は大きな拍手。吉田監督は「監督の前で調子に乗って喋り過ぎた…」と戸惑いながらも、憧れの存在との邂逅に感無量の様子でした。
石井監督はキャスティング秘話や、盟友である相米慎二監督、池田敏春監督との思い出も披露。「映画監督って寂しい生物です。映画を作るたびに少しずつ人間になってきた気がします。今は日本映画は第二の黄金期。独創的な作品が次々と生まれている」と現代の映画界への熱い思いを語りました。
トークを締めくくったのはPFF荒木ディレクター。「出会う人みんな、石井聰亙さんで道を踏み間違えたという人ばかり。かくいう私もそうでした。やっぱり石井聰亙なくして道を誤ることはできない」と会場を笑わせつつも、映画祭だからこそ実現する“サプライズ”の魅力を強調しました。
【イベント情報】
第47回ぴあフィルムフェスティバル2025
開催期間:2025年9月6日(土)~9月20日(土)
会場:国立映画アーカイブ(※月曜休館)
© PFF(ぴあフィルムフェスティバル)