『バベル』で米アカデミー助演女優賞にノミネートされ、その後『パシフィック・リム』シリーズなどで国際的に活躍する菊地凛子が、20年ぶりに熊切和嘉監督とタッグを組み、初の日本映画単独主演を務める、2019年TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM脚本部門の審査員特別賞受賞作『658km、陽子の旅』が、7月28日より公開されることが決定した。併せて、特報映像がお披露目となり、菊地凛子をハリウッドで大抜擢した『バベル』(07)のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と、菊地凛子主演作『ナイト・トーキョー・デイ』(10)のイザベル・コイシェ監督よりコメントが寄せられた。
本作で監督を務める熊切和嘉は2001年『空の穴』の劇場デビュー作で当時新人の菊地をヒロインに抜擢。以降それぞれ別の道で活躍し、2021年熊切監督は本作で一人ヒッチハイクで東北を旅する主人公の陽子を、菊地凛子しかいないとオファー。菊地は「自分を見出してくれた熊切監督ならば」とオファーを快諾。20年の時を経た監督と俳優の邂逅となった。“陽子”は菊地がデビュー時代から過ごした時代背景そのままに就職氷河期世代。父の訃報を受け東京から青森県弘前市の実家まで、思いがけずヒッチハイクで向かう羽目に陥っていく。菊地は初冬の東北を舞台に過酷な状況に身を置く主人公を、全シーンノーメイクの体当たりで演じ切り、全幅の信頼を置く熊切監督に文字通り全てをゆだね渾身の演技を披露。ロスジェネとも呼ばれるこの世代が背負うリアルを見事に表現している。
“陽子”=1980年生まれ42歳、青森県出身。独身。東京在住。在宅フリーター。24年前、父に反対されながら上京したが、夢破れ挫折。自分の殻に閉じこもっていたある日、父親の訃報をきっかけに思いがけず一人ヒッチハイクで24年間帰っていなかった故郷・弘前をめざすことに。東京から福島、宮城、岩手そして青森、その道中での出会いやトラブルを通した一夜の旅で陽子の止まっていた時と心が動きはじめる。他人との密な関係を作らず生きることができてしまう現代、人との関わりが、ぬくもりが、後悔を抱え孤独に凍ったヒロイン陽子の心を溶かし癒していく。
特報映像では、長く続く海岸沿いの道を、ひたすら歩みを進めていく主人公・陽子(菊地凛子)の姿が。熊切監督作品『私の男』(13)に続き音楽を担当するジム・オルークの曲が心情を現すように響く中、波の荒い海を見つめ、砂浜に横たわり空を見つめるシーンが映し出される。人生を諦めて生きてきた彼女が、この旅を通して得られるものとは…。
■アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(映画監督)コメント
彼女が過去と対峙する姿に、悲しく胸を締め付けられた。彼女の苦痛や悲しみは、観客の心を突き刺し、目が離せなくなる。熊切和嘉は、主人公の痛みや雰囲気を探求し、見事に描き出し、素晴らしい仕事を成し遂げた。
■イザベル・コイシェ(映画監督)コメント
この映画は孤独と敗北を描いた、力強い物語だ。人生の岐路に立つ孤独な女性を映し出し、観客の心を確実に揺さぶるだろう。
『658km、陽子の旅』
2023年7月28日(金)より、ユーロスペース、テアトル新宿 ほか全国順次公開
監督:熊切和嘉
原案・共同脚本:室井孝介
共同脚本:浪子想
音楽:ジム・オルーク
出演:菊地凛子
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
【ストーリー】 42歳独身、青森県弘前市出身。夢破れ人生を諦め惰性で日々を過ごしていた就職氷河期世代のフリーター陽子(菊地凛子)は、かつて夢への挑戦を反対され20年以上断絶していた父が突然亡くなった知らせを受ける。従兄・茂の一家が葬儀のため弘前へ帰る車に無理やり乗せられ、しぶしぶ一緒に帰ることに。しかし、途中のサービスエリアでトラブルを起こした子どもに気を取られた茂の一家に置き去りにされてしまう。陽子は弘前に向かうことを逡巡しながらも、所持金がない故にヒッチハイクをすることに。しかし、出棺は明日。それまでに実家にたどり着けるのか。北上する一夜の旅で出会う人々…シングルマザー、人懐こい女の子、怪しいライター、心暖かい夫婦、そして若かりし父の幻…様々な人々との出会いにより、時を止めていた陽子の心が動きだす。
©2023「658km、陽子の旅」製作委員会