日本映画界の寵児・二ノ宮隆太郎監督の商業デビュー作にして、名優・光石研の12年ぶりの映画単独主演作『逃げきれた夢』が6月9日より公開されることが決定した。併せて、二ノ宮隆太郎監督とキャスト陣よりコメントが寄せられた。
本作は、人生のターニングポイントを迎えた中年男が新たな一歩を踏み出すまでの可笑しくも切ない物語。
本作の監督を務める二ノ宮隆太郎は、初の長編監督作『魅力の人間』(2012)をはじめ、『枝葉のこと』(2017)、『お嬢ちゃん』(2019)が国内にとどまらず海外の映画祭でも高く評価を受けるほか、俳優としては「全裸監督 シーズン1」(2019)、『ヤクザと家族 The Family』(2021)、「新聞記者」(2022)といった話題作に出演するなど、マルチに活躍の場を広げている。瀬々敬久監督が審査員を務めた2019年フィルメックス新人監督賞のグランプリ受賞作である脚本をもとに、二ノ宮監督自ら映画化することで、ついに商業デビューを飾ることとなった。
主演は映画デビューから45年、日本の映画・ドラマ界を支える重要な存在として活躍してきた名優の光石研。アテ書きの枠を超え、光石本人の人生を取材し、そのエッセンスを注入した物語を生まれ故郷であり、青春時代を過ごした地である“福岡県北九州市”オールロケで撮影。2011年公開作『あぜ道のダンディ』から12年ぶりの映画単独主演を飾ることとなった。
光石研が演じる主人公・末永周平は北九州の定時制高校で教頭を務めるが、あることをきっかけに人生をふと振り返ることで平穏な日々から一歩ずつ離れ、不安定に心が揺れ始める。物語のカギを握る周平の元教え子・平賀南には、光石研と同じく北九州出身の吉本実憂。総勢800人のオーディションを見事突破し、役を掴んだ若手女優のホープ。また、主人公の妻を坂井真紀、娘を工藤遥、さらに旧友役を光石研本人とも気心の知れた松重豊が務めるなど、フレッシュな演技と熟練の技がぶつかり合う姿も注目ポイントとなっている。
▼キャスト&スタッフ コメント
■光石研(末永周平役)
自分自身の故郷で、ほぼ等身大の自分自身を演じる。ここまでボーダレスな役は初めてだったので、不安と戸惑いを持って、やっていました。ただ、二ノ宮監督を初めスタッフの皆さんが、僕ら世代が抱える諸々の憂いを、しっかりリサーチし、ビジョンを持って導いて頂いたので、信じてついて行きました。可笑しくも哀しい老年期に差し掛かった男を、失笑してやってください。
■吉本実憂(主人公の元教え子・平賀南役)
脚本を読ませて頂いて、決して何か大きなハプニングがあるわけではなく誰しもが通るであろう日常の感情なのですが最後には涙が出ていました。些細なことでも“今”が点で繋がりあって線になって1人の人生を作り上げているということを私はこの作品を通して学びました。“今”という瞬間の大切さを感じられる作品なのではないかなと思います。
■工藤遥(主人公の娘・末永由真役)
二ノ宮監督の真っ直ぐな曇りのない目に「誤魔化せないな」と震え、光石さんの凄まじい包容力に身を委ね、貴重な時間を北九州市で過ごさせて頂きました。台本を読んだ後、演じている時、完成した映画を見た後、置かれている状況によってここまで受け取り方が変わるのかと、落ち着かなかった記憶があります。沢山の方に届きますように。
■坂井真紀(主人公の妻・末永彰子役)
脚本を読ませていただいた時、行間から人生の吐息が聞こえてくるようだと感じました。その吐息は、光石さん演じる周平が背負う哀愁となって、その哀愁は、様々な形に映り、私たちが分かち合えるものであると思いました。分かち合えることは、そっと、私たちの背中を押してくれることと、思っています。北九州の空気を纏い佇む光石さん、最高です。
■松重豊(主人公の親友・石田啓司役)
小倉の撮影現場の控え室の隣にカフェがあり、空き時間にふたりで行ったらチーズケーキが非常に美味かったんです。それを全女性スタッフに持ち帰って振る舞う光石さん。その控え室の向かいが古着屋で、覗くと店主が光石研コーデを準備して待っていたんです。さんざん試着して何も買わずに店をあとにする光石さん。そんな光石さんのすべてが詰まった映画ですよ、きっと。
■二ノ宮隆太郎(監督)
映画の世界を志してから、好きな俳優という質問に、必ず光石研さんと答えていました。ものすごく人間だから、光石研さんが好きだと答えていました。この映画は、ある人間の今までの人生と、これからの人生の物語です。観てくださった方の心に、ほんの少しでも、なにかを感じていただけましたら幸いです。
『逃げきれた夢』
2023年6月9日(金)より、新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国公開
監督・脚本:二ノ宮隆太郎
出演:光石研 吉本実憂 工藤遥 杏花 岡本麗 光石禎弘 坂井真紀 松重豊
配給:キノフィルムズ
【ストーリー】 北九州で定時制高校の教頭を務める末永周平。ある日、元教え子の南が働く定食屋で、周平は支払いをせず無言で立ち去ってしまう。記憶が薄れていく症状によって、これまでのように生きられなくなってしまったようだ。待てよ、「これまで」って、そんなに素晴らしい日々だったか? 妻の彰子との仲は冷え切り、一人娘の由真は、父親よりスマホ相手の方が楽しそうだ。旧友の石田との時間も、ちっとも大切にしていない。「これから」のために、「これまで」を見つめ直していく周平だが…。
©2022『逃げきれた夢』フィルムパートナーズ