山崎まさよし「この映画祭があったから、『影踏み』に出演した」

「64 ロクヨン」、「クライマーズ・ハイ」などで知られる作家・横山秀夫による犯罪ミステリーを、主演に山崎まさよしを迎え、『花戦さ』の篠原哲雄監督が映画化した『影踏み』が11月15日より公開される。このほど、本作の群馬県先行公開を記念し、11月8日に今年で19回目の開催となる伊参スタジオ映画祭にてスペシャルイベントが開催され、主演の山崎まさよし、田中要次、真田麻垂美、篠原哲雄監督、原作者の横山秀夫が登壇した。

伊参スタジオは、山崎の初主演作品にして、本作の監督である篠原と一緒に作り上げた『月とキャベツ』の撮影拠点としても使用され、本作もここ伊参スタジオを拠点として撮影が実施されるなど縁の深い場所。会場には朝の7時から並ぶファンの姿もあり、チケットも販売開始から30分ほどで完売した本イベントには300人の観客がつめかけた。

山崎はこの伊参スタジオ映画祭が本作の“誕生の地”と語り「伊参スタジオ映画祭で上映していただいて本当に光栄です。1年半前にここ群馬で撮影し、こうして上映することができて、色々なことがありましたが実を結んだ想いでいっぱいです」と感謝の気持ちを吐露。篠原監督は「一言では言い表せない感慨深さがあります」と言葉を詰まらせ、「『月とキャベツ』を19年連続で毎年この映画祭で上映してくださっていたり本当にありがたいです。19年連続で同じ映画祭で同じ映画を上映するというのはギネス記録にのるみたいなんですよね。『影踏み』もそうですがこのまま伊参スタジオ映画祭で上映を続けてほしいですね」と公開の喜びを口にした。また、前回の伊参スタジオ映画祭の際は審査員として登壇した横山は当時を振り返り「山崎さんとお会いして本当に感激したのを覚えています。この作品が完成して観させていただき、正直複雑でした。『影踏み』が篠原監督と山崎さんの物になっているなと感じて。ですので次は「麦踏み」とか作って山崎さんに麦を踏んでもらおうかなと思っています」と冗談を交え会場は笑いに包まれた。そして「正直、山崎さんに泥棒役をやらせるのは申し訳ないなと思ったんです。しかし、映画を観たらもうこれは山崎さん以外にいないなと思いました」と山崎を絶賛した。

そして、真田と田中は『月とキャベツ』にも出演していたこともあり今回急遽イベントに参加。真田は「どうも、ヒバナです(笑)」と『月とキャベツ』の役名で挨拶し会場を沸かせ、「伊参スタジオ映画祭は私のデビュー作『眠る男』でお世話になった映画祭です。今日はどうしても“花火”を応援したく参加させていただきました」と同じく『月とキャベツ』の山崎の役名で呼ぶなど仲の良さが伝わるやりとりがあり、「本当に少しの共演だったんですけど、スタッフの方が『月とキャベツ』の方々で、スチールカメラマンが『眠る男』の時の方で、とても懐かしい気持ちでいっぱいでした」と撮影時を述懐。そして田中は「私も今回短い出演でしたが、僕がどこに出ているかわかりましたでしょうか?」と会場に質問すると山崎から「わかるわ!(笑)」とすかさずツッコミが入り会場を盛り上げた。田中も「20年以上前にこのスタジオに泊まって撮影をして、山崎さんや鶴見辰吾さんと飲み明かしたことを思い出しました」と懐かしそうに語った。

同窓会のような温かい雰囲気の中、山崎は「“ミュージシャン”が“泥棒”になって帰ってきました(笑)」と再び『月とキャベツ』を引き合いに出し「よくこの映画の主演を引き受けた理由を聞かれるんですが、一番はこの映画祭があったからです」としみじみ語り、「3年前に篠原監督と横山さんとここでお会いしてから全てが始まりました。こうして戻ってくることができ、不思議な縁があるもんだなと感じています」と語った。

そして、トークショーが終了すると、山崎まさよしによるミニライブが開催された。『月とキャベツ』の主題歌にして自身の代表曲である「One more time,One more chance」や本作の主題歌である「影踏み」を伊参に集まった観客の前で披露した。最後に山崎は「これから全国公開となりますが、篠原監督など最高のスタッフで作り上げた作品です。何度も観ていただき咀嚼していただきたい作品ですので、何度も劇場に足を運んでいただきたいです」とコメントしイベントは終了した。

伊参スタジオ映画祭の実行委員長・岡安賢一は「今日、一つの夢が叶いました。『月とキャベツ』のおかげで誕生したこの伊参スタジオ映画祭ですが、3年前のこの場所で製作が決まった『影踏み』を伊参で上映することができました。皆さまには感謝しかございません」と感無量の様子でコメントした。

『影踏み』
11月15日(金)全国ロードショー
11月8日(金)群馬県先行公開
監督:篠原哲雄
原作:横山秀夫「影踏み」(祥伝社文庫)
脚本:菅野友恵
音楽:山崎将義
主題歌:山崎まさよし「影踏み」(EMI Records)
出演:山崎まさよし 尾野真千子 北村匠海 中村ゆり 竹原ピストル 中尾明慶 藤野涼子 下條アトム 根岸季衣 大石吾朗 高田里穂 真田麻垂美 田中要次 滝藤賢一 鶴見辰吾 大竹しのぶ
配給:東京テアトル

【ストーリー】 単なる「空き巣」ではなく、深夜に人の居る住宅に侵入し盗みを働く、通称「ノビ師」と言われる泥棒。寝静まった民家を狙い“現金”を盗み出す忍び込みのプロで、その中でも真壁修一(山崎まさよし)は一線を画すスゴ腕のノビ師。証拠も残さず決して口を割らない、その高く強固な壁を思わすしたたかさから、いつしか警察からは「ノビカベ」とあだ名された。ある夜、修一は侵入した稲村邸の寝室で、夫の寝ている側に火を放とうとする妻・葉子(中村ゆり)の姿を目撃する。咄嗟の行動で放火現場を止めに入ったが、その直後、修一は逮捕される。2年後、刑期を終えた修一を迎えてくれたのは弟・啓二(北村匠海)、そして恋人の久子(尾野真千子)だけ。ただ、修一の頭にはこの2年ずっと気がかりなことがあった。何故、あの日の侵入がバレていたのか?何故、自分だけが逮捕されたのか?そして、あの時夫を殺害しようとしていた妻・葉子の行方は…。

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