岩合光昭、立川志の輔が出演しなければ「この映画作るのやめます!」『ねことじいちゃん』完成披露試写会レポート

日本人の作品としては初めて「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙を2度飾った世界的に有名な動物写真家で、NHK-BSプレミアムで放送中の「岩合光昭の世界ネコ歩き」でも人気の岩合光昭が初の映画監督に挑み、落語家の立川志の輔が初主演を務める映画『ねことじいちゃん』が、2月22日に公開される。このほど、2月5日に新宿バルト9にて完成披露試写会が行われ、立川志の輔、柴咲コウ、小林薫、銀粉蝶、山中崇、葉山奨之、岩合光昭監督、そして猫のベーコンが登壇した。

多くの猫好きが集まった会場に蝶ネクタイ姿にスーツで登場の志の輔は、「私がじいちゃんです」とにっこり。写真展やNHKの番組を通して岩合の撮る猫たちの姿に感動を覚え、会って話をする中で、「ときどき言う冗談は面白くないけど(笑)、純粋で作品も人間性も素敵で、尊敬する気持ちを抱く中で今回のオファーをいただいた」という。当初は「何を考えてるんだ?」とオファーを断ったが「事務所からのメールだけで終わりにするのも申し訳ないと電話をかけたんですが、落語家の欲で『ワンカットくらい出してください』と言ったら、岩合さんの事務所で会うことになって、話すうちに、いつの間にやら『3月のひと月ほどで島で撮影するので来ませんか?』と言われて、気づいたら撮影が終わってました!(笑)」と振り返る。

撮影については、「初主演ということで、それなりに意気込んで行ったら、猫の脇役でございました(苦笑)」。「監督はネコのことはシーンごとに『お前は素晴らしい猫だ』って褒めるのに、私は1回もそんなこと言われなかった…」と、ぼやきも飛び出した。それでも今回、共演したタマ役の猫のベーコンには「監督の言うことを一番わかっているのはタマで、私がテイク1、テイク2、テイク3…となっても『いいんだよ、落ち着いてやりな』という感じで、タマの中に誰か入っているか?AIなんじゃないかというくらい素晴らしかった!」と感謝と称賛を口にし、会場は温かい拍手に包まれた。

続いて岩合は、志の輔の出演について「(最初に断られたことに)ショックを受けて、何回も挑戦して、最後の手段で『師匠に出ていただけないなら、この映画を作るのやめます!』と言った」と明かし、出演にこぎつけたときは「ホテルの天井に頭をぶつけそうになるくらい飛び上がって喜びました」と明かした。さらに、改めて完成した映画について、「素晴らしいキャスト、スタッフに恵まれてできました。もちろん、猫好きの方に見ていただけるかと思いますが、猫に興味のない方を引っ張って来ていただいて、ぜひ興味を持って、猫の味方になっていただければと思います」と客席を埋め尽くしたネコ好きの観客たちに呼びかける場面もあった。

次に、ヒロインの美智子役を演じた柴咲は、「まず岩合さんの初監督ということで、絶対にその『初めて』に参加したいと意気込んで、とにもかくにも出させてもらおうと、どういう役かもわからず引き受けました。志の輔さんの“初主演”ももちろん、今回限りのことですから、2つの『初めて』に立ちあえて嬉しかったです」と笑顔で述懐。島の住人であるサチを演じた銀粉蝶も、「のどかな島で、東京で毎日暮らしてたら考えられないようなのんびりした空気の中で撮影し、(タマ以外にも)ほかにも猫がいっぱいいて、猫好きなので天国でした」と楽しそうに撮影を振り返った。

さらに、志の輔演じる大吉の息子・剛を演じた山中は、「最初に(撮影が行われた)佐久島に行ったときは、風が強くて「どこに連れて行かれるんだろう?」という感じで船に酔ってしまったんですが…」と苦笑交じりに撮影当初を振りかえりつつ、「映画を見たら、のどかでいい空気が流れていました」と仕上がりに満足そうな表情。「食べ物もすごくおいしそうに映ってまして、(見ていて)お腹がすくと思いますが、この後おいしいものでも食べに行ってください!」と笑顔で呼びかけた。

また、島の郵便局員・聡を演じた葉山は、錚々たる豪華共演陣と並んでの登壇に「この先輩方とご一緒させていただき緊張してます!この中では一番若いので…(笑)」と終始興奮した面持ちを見せた。

そして、大吉の友人・巌を演じた小林は、撮影が行われた佐久島、宿泊した日間賀島の海の幸を堪能したそうで、「東京では考えられないような値段でとれたてで新鮮の魚やタコ、カキの蒸したのなんかを食べて、師匠と毎晩、飲んでました」とにっこり。志の輔も、「レジに立ってる小林さんを見るたびに『これが毎晩、続けばいいのに』と思ってました」とほろ酔い気分の撮影の夜を懐かしそうに思い出していた。

最後のフォトセッションでは、キャストに加えて、主演猫のタマを演じたベーコンが、キャストが集まる中央まで自ら歩いて登壇するというスーパーキャットぶりを見せ、その様子に会場は大盛り上がり。撮影中も会場は温かい笑い声に包まれ、本イベントは終了となった。

『ねことじいちゃん』
2月22日(金) ロードショー
監督:岩合光昭
原作:ねこまき(ミューズワーク)「ねことじいちゃん」(KADOKAWA刊)
出演:立川志の輔 柴咲コウ 柄本佑 銀粉蝶 山中崇 葉山奨之 田根楽子 小林トシ江 片山友希 立石ケン 中村鴈治郎 田中裕子 小林薫
配給:クロックワークス

【ストーリー】 2年前に妻(田中裕子)に先立たれ、飼い猫のタマと二人暮らしの大吉(立川志の輔)、70歳。毎朝の日課はタマとの散歩、趣味は亡き妻の残した料理レシピノートを完成させること。島にカフェを開いた若い女性・美智子(柴咲コウ)に料理を教わったり、幼なじみの巌(小林薫)や気心知れた友人たちとのんびり過ごしている。しかし友人の死や大吉自身もこれまでにない体の不調を覚えたりと、穏やかな毎日に変化が訪れはじめた矢先、タマが姿を消して―。1人と一匹、生まれ育ったこの島で、共に豊かに生きるためにした人生の選択とは―。

(C)2018「ねことじいちゃん」製作委員会