【レビュー】『パワーレンジャー』10代のヒーローならではのすがすがしさ、アメコミヒーローものとはひと味違う

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1993年から全米で放送が始まった日本発の特撮シリーズ「スーパー戦隊」の英語ローカライズ版は、社会現象となるほどの人気を獲得。クリスマスには玩具がバカ売れし、以後は毎年新シリーズが発表されるようになった。今回の『パワーレンジャー』は、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』をベースにしたTVシリーズ第1作『マイティ・モーフィン パワーレンジャー』をリブートしたもの。総製作費120億円を投じたアクション大作映画としてこのほど日本に上陸した。

変身中

小さな町エンジェル・グローブに暮らす5人の若者が、不思議なコイン(ゲーセンのヤツみたいなものでなく、メダルに近い)を手にした瞬間から、超人的パワーを得る。5人は現代に甦った悪の戦士リタ・レパルサを倒すため、コインに選ばれし新たなパワーレンジャーだったのだ(後で分かるが、この5人は同じ高校に通う生徒。コインさんもずいぶんピンポイントでセレクトしたものである)。

サブ⑧

5人の編成が興味深い。リーダーとなるレッド・レンジャーことジェイソンはアメフト部のスター選手、ヒロインのピンク・レンジャーことキンバリーは学校のアイドルと、いわばスクール・カーストの頂点にいたわけだが、問題を起こすなどしてその座から転げ落ちた。コインの導きで、本来ならば交わるはずのなかった変わり者のビリーやアウトローのザック、友達のいない転入生トリニーといった面々と行動を共にするようになる。赤がリーダー、ピンクがヒロイン、もうひとりの女子キャラがイエローというのは近年の日本の戦隊ものと変わらないが、クールなイメージのあるブルーにそそっかしいビリー、アジア系のザックがブラック。色が表わすキャラクターや役割が日米では異なるのかもしれない。

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コインがもたらすパワーを使いこなせない5人は、肉体が消滅した元レッド・レンジャーのゾードンと、おしゃべりなロボット、アルファ5による厳しい訓練を受けて成長していく。何せ最初はパワーレンジャーのスーツを装着するのもままならないのだ。アルファ5は無駄口が多いせいか、どうも5人に舐められているように見えるが(南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太による日本語吹替版が楽しい)、格闘戦などの訓練はハードなもの。やがて訓練を重ねるなかで、周囲もジェイソンをリーダーとして認めるようになる。この辺のくだりは説得力ある描写だ。圧倒的財力を持つ人間がチームリーダーのポジションに収まりがちなアメコミ映画のヒーロー・チームと違って、彼らは(コインが与えたパワー以外は、社会的な意味で)何も持たない若者たち。世間知に乏しい4人は、肩書や実績でなく、まさに資質だけでジェイソンをリーダーに選んだのである。

↓ゾードン
ゾードン

↓アルファ5
アルファ5

中盤以降、いよいよリタ・レパルサとの闘いに突入。戦闘員キャラとの白兵戦、大型戦闘マシン〝ゾード〟を操っての攻防、そして最後は合体ロボ〝メガゾード〟でリタに挑む。この辺りは日本の戦隊シリーズのテンプレートを忠実になぞっているようだ。だが120億円を投じただけに、戦闘シーンは桁違いの迫力に満ちている。
リタ役にはエリザベス・バンクスが扮していて、これはナイス・キャスティング。『ハンガー・ゲーム』シリーズでもそうだったが、彼女は日常生活では着られないような派手なコスチュームをまとうと、俄然スクリーンにエネルギーを放射するタイプの女優らしい。今回も緑のメタル素材の衣装に魔法の杖と、特撮ものの悪役の見本のようないで立ちで、リタを嬉々として演じている。

↓リタ・レパルサ
リタ・レパルサ

5人は何かの見返りを求めるわけでもなく、危険な戦いに身を投じる。正義や友情といったものに無償で身を捧げるのを厭わないのは10代や20代の若者だからこそ。戦いの後、普段と変わらぬ教室に集まりながら、満足げな表情を浮かべる彼らが非常にすがすがしい。願わくば、続編で5人の成長を見届けたいものである。

『パワーレンジャー』
2017年7月15日より全国ロードショー
監督:ディーン・イズラライト 脚本:ジョン・ゲイティンズ
出演:デイカー・モンゴメリー ナオミ・スコット RJサイラー ベッキーG ルディ・リン エリザベス・バンクス
配給:東映
公式:http://www.power-rangers.jp/

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