ドラマ「スカム」は、09年の東京近郊を舞台に、リーマンショックの影響で新卒切りの憂き目に遭い、振り込め詐欺に手を染めてしまった若者の運命を描く、実話を基にした社会派詐欺エンタテインメント。本作で図らずも詐欺稼業でのし上がっていくことになる主人公・草野誠実を演じるのは、16年の役者デビュー以降、ドラマ、映画を問わず数々の話題作に出演し続ける一方で、独特なワードセンスを持っていることから“天然キャラ”と言われることもある愛され男子、若手俳優の杉野遥亮だ。そんな彼が連続ドラマ初主演&初の悪役を演じる「スカム」にちなみ、若干3年という短い役者人生ながら確固たる軌跡を残してきた彼の、これまでの仕事ぶりとその魅力を掘り下げるドラマ&映画5作品を紹介。
『キセキ ーあの日のソビトー』(’17)
人気ヒップホップグループGReeeeNの楽曲「キセキ」の誕生秘話を、実話をもとに描いた人間ドラマ。本作で杉野は、人気実力派俳優にして事務所の先輩でもある菅田将暉、19年上半期に“無敵ピンク”で大ブレイクを果たした横浜流星、役者としてこちらも年々評価を高めている成田凌と並んで、グリーンボーイズのメンバーSOH(ソウ)役に抜擢され、俳優デビュー。役者になりたてほやほやの初々しい表情と、駆け出しながらも先輩たちと肩を並べ懸命に演技に臨む姿は、今となっては貴重。実際にグリーンボーイズとしてCDデビューも果たし、さいたまスーパーアリーナで行われたGReeeeNライブにゲストライブ出演も果たした彼らの生の歌声、とりわけ超低音ボイスでラップを披露する杉野の歌声も必聴。
「福岡恋愛白書13『キミの世界の向こう側』」(’18)
九州朝日放送のローカル・ドラマとして制作された、福岡の視聴者が体験した実話を基にした純愛ストーリーの第13弾で、実はドラマ初主演を叶えている杉野。本作で彼は、耳の聞こえない女性に一目惚れした、明るく真っ直ぐな男子大学生・蒼太を好演。彼女を振り向かせるために必死で手話を覚え、何度断られても正面から気持ちをぶつけていく蒼太の一生懸命さが、観る者の胸を突く。また、劇中で話す博多弁も新鮮で、ヒロインにかける何気ない言葉や、思いを伝えるセリフの数々が、より力強く心に残る。好きな人のためにただひたすら頑張る普通の青年を、ひたむきに真っ直ぐに演じた杉野の、等身大の演技が光る! 余談だが、これも自身初となるであろう“父親役”を演じる姿もあるので必見だ。
「グッドモーニング・コール our campus days」(’18)
高須賀由枝による漫画をドラマ化し、ダブルブッキングで同じ部屋に住むことになってしまった高校生男女の秘密の同居生活と恋の行方を描いた「グッドモーニング・コール」の続編を、オリジナルで描いたドラマ。大学生になった菜緒(福原遥)と上原(白石隼也)に訪れる新たな出会いとハプニングを描く本作で杉野が演じたのは、上原の恋のライバル、夏目柊。この夏目役で杉野は、史上最高の2番手男子を怪演! ヒロインを陰ながら助け、見守りながら、伝えられない思いに苦しむ切ない表情は、悶絶もの。本作のすぐ後に放送されたドラマ「花にけだもの」での強引で色気満載のけだもの男子・柿木園豹役も話題となり、SNSなどで注目度が急上昇。俳優・杉野遥亮の存在が徐々に大きくなっていくのを感じさせる2作品となった。
『L♡DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』(’19)
渡辺あゆ原作の少女漫画を、14年に剛力彩芽と山﨑賢人で映画化し、“壁ドン”ブーム、さらにはドS男子ブームを巻き起こし、元祖・少女漫画実写化作品となった映画『L♡DK』(’14)の続編。幸せな同居生活を送る葵(上白石萌音)と柊聖(杉野)の前に、柊聖のいとこ・玲苑(横浜流星)が現れたことから始まる、ドキドキの三角関係の行方を描く。本作で杉野は、前作で山﨑が演じ好評を博した役どころを、プレッシャーを見事にはねのけ熱演。クールに見えて負けず嫌い、ツンデレで彼女を振り回しつつも実は一途な柊聖を、文句なしにカッコよく演じ、観客のハートを鷲掴みにした。壁ドンの枠を軽く超えた “持ち上げドン”に、風呂上りに彼女の髪を乾かす優しい眼差し、身長差30センチのキスシーンなどなど、これでもか!と繰り出される萌え&胸キュンシーンに、トキメキが止まらない!?
「ミストレス~女たちの秘密~」(’19)
一人では抱えきれない秘密を持つ4人の大人の女性たちの人生と選択を描いた人間ドラマ。杉野が演じるのは、自殺した父親の主治医だった女性・香織(長谷川京子)を、父の不倫相手ではないかと疑う青年・貴志だ。疑いをかけながらも彼女にどうしようもなく惹かれていく貴志の、捨てられた子犬のような佇まいから、ちょっと危うい眼差しに変わっていく過程。やがて結ばれる香織との大人っぽく激しいキスシーンや、彼女に向ける幸せそうな笑顔に、視聴者からは“やばい!”の声が続出! 常日頃から「年上の女性が好き」と公言している杉野が見せる、年上女性への一途な思い、胸を締め付けるような切ない恋の結末…。その演技に、大人の女性たちの心がのきなみ持って行かれた。学生時代のキラキラな恋だけでなく、大人の恋の物語でもその魅力をいかんなく発揮できることを証明して見せた一作だ。
1つドラマや映画に出演するたびに、「あの人は誰!?」と、その魅力にはまる人が増えていく、奇特な俳優・杉野遥亮。それは、イケメンだから、スタイルがいいからというだけではない。その見た目以上に、観た人を虜にする何かを発信できる確実な演技力があるからだ。最近では、人生一発逆転を狙う起業家青年を演じたドラマ「新しい王様」で藤原竜也や香川照之といった大先輩の俳優陣とも堂々と渡り合い、デビュー当時から憧れていたという俳優・松坂桃李と共演した『居眠り磐音』では時代劇にも初挑戦するなど、役者として着実に実力をつけていく姿が眩しい杉野。止まることなく躍進し続ける彼の今後からも目が離せない。(文・深田尚子)
「スカム」
6月30日(日)よりMBS/TBSにて順次放送開始(全9話)
MBS:6月30日(日)より、毎週日曜 24時50分~放送
TBS:7月2日(火)より、毎週火曜 25時28分~放送
演出:小林勇貴
原案:鈴木大介「老人喰い」(ちくま新書)
脚本:継田淳
出演:杉野遥亮 前野朋哉 山本舞香 戸塚純貴 福山翔大 水間ロン 若林拓也 華村あすか 栁俊太郎 山中崇 和田正人 西田尚美 杉本哲太 大谷亮平
【ストーリー】 名門私立大学卒業後、大手企業に就職し、順風満帆な勝ち組人生を歩んでいた草野誠実(杉野遥亮)。しかし、リーマンショックにより、入社わずか半年で新卒切りに遭う。時を同じくして、父親が病に倒れ、父親の命を救うには保険の効かない高額な治療を受けなければいけないという事態に。さらには、再就職先が見つからず、銀行には教育ローンの返済を催促される始末。理不尽な社会に絶望し、追い詰められた誠実は1日で数十万円稼げるという怪しげなバイトをすることに。それは、オレオレ詐欺でターゲットとなった老人が振り込んだお金をATMから引き出す“ダシ子”という仕事だった。そして、その仕事で気概を認められた誠実は、直接、老人に振り込め詐欺の電話をかける“かけ子”という仕事を強要されることになる。地獄の研修、個性的な仲間たちとの出会い、初めての成功、リーダーへの抜擢…誠実は詐欺稼業での躍進に葛藤しながら、いち早くお金を稼ぎ、裏社会から抜け出そうとするが…。はからずも、詐欺師として裏社会でのし上がっていってしまう彼に訪れる結末とは!?
(C) 「スカム」製作委員会・MBS