2005年に発表され、単行本、文庫あわせ累計70万部を超える、村上春樹の小説「東京奇譚集」(新潮文庫刊)に収録の短編作品を、吉田羊、佐野玲於、村上虹郎の共演で映画化した『ハナレイ・ベイ』が10月19日に公開初日を迎え、20日に新宿ピカデリーにて行われた公開記念舞台挨拶に、キャストの吉田羊、佐野玲於、村上虹郎、松永大司監督が登壇した。
初めに、昨年9月に撮影した本作がついに公開を迎え、主人公サチを演じた吉田は「約1年をかけて、皆様にお披露目できることが感無量です」と挨拶した。本作ではピアノに挑戦し、「クランクインの1か月前に譜面が上がり、当時は舞台の本番中で、稽古の合間を縫って1日8時間ぐらいずっと練習をしていました」とのこと。さらに英語の台詞も「発音重視」で練習を重ねていたと明かした。
本作では、サーフィンに挑戦した佐野と村上。サチの息子・タカシを演じた佐野は「朝4時、5時に家を出て、千葉で2時間練習して仕事に戻るという生活をしていました。去年の夏、クランクインする1、2か月前ですね。監督も練習に来てくれて、一緒に海に入って練習しました」と撮影前からじっくりサーフィンに取り組んでいたと語った。
ここで、本作のキャッチコピー、“<人生で一番大切な人>に会いたくなる希望の物語”にちなみ、自身が最も大切だと思う人は?という質問が。吉田は「この作品で共に闘った、“戦友”だと思っている松永大司監督。私の女優人生において非常に大切な存在になったなと思っています」とコメント。さらに「いつか監督に『また一緒に撮影をしたいです』と言っていただける俳優になりたい」と続け、それを受けて松永監督は「嬉しいです」と喜んでいた。
佐野は「選びきれないですけれども…」と前置きしつつ、「例えば、友人や仲間が亡くなってもう会えない。そうなった時、その人にとってこの映画が一歩踏み出せるような映画になったら、自分も作品に参加した意味がある。観た人も『観てよかった』と思ってもらえたら、誰かを救える気がします」と自身の気持ちを重ねながら本作への想いを語った。一方、村上は「佐野玲於…!」と答え、佐野は「ありがと(笑)」と照れ笑いを浮かべていた。
さらに、原作や劇中で描かれる、主人公サチが日本人サーファーの高橋に“異性にモテる三箇条”を諭すシーンに関連して、キャスト陣が考える条件をフリップで発表。吉田が挙げた“筋肉を褒める”に関して、吉田から「男の人ってやっぱり褒められるために鍛えてるの?」と問われた佐野は「はい!」と笑顔で答え、会場を沸かせていた。
イベントの最後には、佐野から吉田へ、撮影地であるハワイのオアフ島で購入したパワーストーンをサプライズプレゼント。佐野は「羊さんを救う、お守りのようなアイテムになれば」とプレゼントを選んだとのことで、吉田は「嬉しいです。息子の愛を感じます」と笑顔を見せていた。
『ハナレイ・ベイ』
10月19日(金)より全国ロードショー中
監督・脚本・編集:松永大司
原作:村上春樹「ハナレイ・ベイ」(新潮文庫刊「東京奇譚集」)
出演:吉田羊 佐野玲於 村上虹郎 佐藤魁 栗原類
配給:HIGH BROW CINEMA
【ストーリー】 それは突然の知らせだった。ピアノバーのオーナーでシングルマザーのサチは、息子タカシが、ハワイのカウアイ島にあるハナレイ・ベイで亡くなったことを電話で知る。サーフィン中の事故で、大きな鮫に襲われて死んだという。サチはハナレイ・ベイに向かい、もの言わぬ息子と対面を果たした。息子の遺骨と共に日本へ帰ろうとした矢先、彼女はふと足をとめ、息子が命をおとしたハナレイ・ベイへと向かう。サチはチェアを持って海岸に行き、本を読んで時間を過ごした。時折、じっと海を見つめながら。毎年、この「行為」は続いた。タカシの命日の時期にハナレイ・ベイを訪れ、数週間過ごすのだ。同じ場所にチェアを置き、10年間。だが、彼女は決して海には近づかない。ある時、偶然出会った、2人の若い日本人サーファー。まだ世間知らずな彼らに息子の姿をダブらせるサチ。そんな時、2人から“ある話”を耳にする。「赤いサーフボードを持った“右脚のない日本人サーファー”がいる」と…。
©2018 『ハナレイ・ベイ』製作委員会