将棋界に奇跡をもたらした異色の棋士・瀬川晶司五段の自伝的小説を、豊田利晃監督が実写映画化した『泣き虫しょったんの奇跡』が9月7日より公開中。このほど、本作の公開と豊田監督の20周年写真集『MOVIE STILLS FROM TOSHIAKI TOYODA FILMS 1998-2018』の発売を記念した“豊田利晃監督オールナイトミーティング”が、9月22日テアトル新宿にて開催され、ゲストに千原ジュニア、渋川清彦、新井浩文、豊田利晃監督が登壇し、舞台挨拶が行われた。
監督が「『ポルノスター』が公開された際に月に一度、監督と千原兄弟が朝まで行っていたライブ」と説明する本イベントには、深い時間にもかかわらず多くの客が訪れ場内は満席に。ゲストらが登場するとそれぞれ一言ずつ挨拶しイベントはスタートした。
本イベントでは、『ポルノスター』(98)、『UNCHAIN アンチェイン』(01)、『青い春』(02)の三本が上映されるが、まず話題は千原ジュニアが主演を務め、渋川も出演し、監督の映画デビュー作となった『ポルノスター』に。主演に迎えたジュニアについて、大阪で知り合いよく遊ぶ間柄だったという。監督は「当時、彼が19歳で、僕が24歳。ジュニアを主演に映画を撮ると決めて、それが実現した作品ですね」と振り返る。一方当時の撮影現場について、「友達からのスタートだったので、『豊田!』とも呼べないし、無理して『監督』と呼ぶようにしてたのは覚えてますね」と茶目っ気たっぷりに明かしたジュニア。さらに「当時、豊田と映画の試写に行ったことがあって。その日は豊田の実家に泊まらせてもらって寝ていたんですが、ふと起きると豊田が勉強机で何か書いているのに気づいて。何してんやろと思ったら、数時間前に観た映画の“自分だったらこう脚本を書く”というのを、一人でひたすら書いていて。それを見て、ほんまに映画好きなんやなと感じましたね」と明かし、監督の並々ならぬ“映画愛”が垣間見えるエピソードも飛び出した。
一方で、監督との出会いは『UNCHAIN アンチェイン』の試写を観に行ったことがキッカケだったと明かしたのは、新井浩文。その後、オーディションを経て『青い春』への出演に至るが、監督は「新井が演じた青木役を、色んなところから『やりたい』という声は上がっていたんですが、全部跳ね飛ばした」といい、「映画的には(松田)龍平と対照的な雰囲気が良いなと」抜擢した理由を明かした。さらに『青い春』にも出演している渋川は「ワンシーンのみの出演でしたが、監督から何か面白いことをやるように要求されて。毎作品そうですが、大変でしたね。必死に食らいついてました」と本作について振り返る。一方で、監督は新井演じる青木が屋上で立ち尽くすシーンの撮影が楽しかったと語る。「夕方から撮影を開始し、カットをかけたのは朝8時で。“撮ってる”という充足感がたまらなかった。なかなかないワンカットですよね」と回顧。同時にクランクアップの日であったこともあり、印象的だったという。そんな本作から16年が経過しているものの、今もなお監督と“豊田組”キャストらは頻繁に交流しているそうで、新井は「“豊田組”は絆が深いと思います。男同士、みんな仲良いんです」と明かした。
そして話は、既に鑑賞し「すごく良かった!役者さん全員良かったですよね」とジュニアも大絶賛する、現在公開中の『泣き虫しょったんの奇跡』に。個性的な奨励会員・清又役を演じた新井は「うちは松田龍平が大好きなんで。改めて龍平はスゴいなと感じましたね。監督が元々奨励会にいたこともあって、将棋のシーンも他の将棋映画に比べてかなりこだわっていて。スゴい作品が出来たなと」と、改めて本作の魅力を力説した。さらに、本作で主人公・しょったんに対し、藤田(小林薫)と共にプロ編入試験の話を持ち掛ける新聞記者・新條役を演じた三浦誠己に対し、ジュニアは「『ポルノスター』を撮ってるときに現場で付き人に近い仕事をしていて。だからこうやって豊田作品に役者として出ている姿を見ると、感慨深いですね」と語るなど、本イベントならではの貴重な裏話も飛び出した。
イベントの最後は、ゲストが一言ずつ挨拶。そして監督が「たくさんの方にお集まりいただけて嬉しいです。最後まで楽しんでください」と、これからオールナイトで上映される『ポルノスター』、『UNCHAIN アンチェイン』、『青い春』を鑑賞する観客に向けメッセージを送ると、大きな拍手が沸き起こる中、ゲストらは会場をあとにした。
『泣き虫しょったんの奇跡』
9月7日(金)より全国ロードショー中
監督:豊田利晃
脚本:瀬川晶司「泣き虫しょったんの奇跡」(講談社文庫刊)
音楽:照井利幸
出演:松田龍平 野田洋次郎 永山絢斗 染谷将太 渋川清彦 駒木根隆介 新井浩文 早乙女太一 妻夫木聡 松たか子 美保純 イッセー尾形 小林薫 國村隼
配給:東京テアトル
【ストーリー】 26歳。それはプロ棋士へのタイムリミット。小学生のころから将棋一筋で生きてきた“しょったん”こと瀬川晶司の夢は、年齢制限の壁にぶつかりあっけなく断たれた。将棋と縁を切りサラリーマンとして暮らしていたしょったんは、アマ名人になっていた親友の悠野ら周囲の人々に支えられ、将棋を再開することに。プロを目指すという重圧から解放され、その面白さ、楽しさを改めて痛感する。「やっぱり、プロになりたい―」。35歳、しょったんの人生を賭けた二度目の挑戦が始まる―。
©2018『泣き虫しょったんの奇跡』製作委員会 ©瀬川晶司/講談社