鋤田正義 × 立川直樹が登壇!『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』初日舞台挨拶レポート

時代の寵児たちをカメラに収めてきた日本人写真家、鋤田正義の軌跡をたどるドキュメンタリー映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』が5月19日に公開初日を迎え、新宿武蔵野館にて鋤田正義と、鋤田の写真展をプロデュースした経験もある立川直樹が登壇し、トークセッションが行われた。

初日の朝9時45分上映からの初回終了時の舞台挨拶にも関わらず、会場は満席と大盛況ぶり。そんな中、本作主人公でもある写真家・鋤田正義と、鋤田の写真展のプロデュースを担当したことのある立川直樹が登場すると、会場は大きな拍手に包まれまた。

鋤田は、「本日は朝早くからお越しいただきましてありがとうございます」と足を運んでくれた観客へまずは感謝の気持ちを伝えた。立川から「早速ですけど、私自身も出演しましたが、自分を追った映画を観てどうでしたか」と聞かれた鋤田は、「1回は観たんですけど、半分は覚えてないんですよ。やっぱり恥ずかしくって、どうも落ち着かなくて。時間がたたないと実感しないのかもしれないですね。この映画の撮影の際は、監督に言われたまま動いていました」と茶目っ気たっぷりに笑顔で答えた。

現在鋤田の故郷・福岡県直方(のおがた)市で開催されている写真展の話題になり、鋤田は「明日の20日までですが、「ただいま。」展を、生まれ育った直方市の人口は約5万人なのですが、1万人を超えるお客様が足を運んでくれてます。直方市だけではなく、福岡、遠くは東京近郊などからもわざわざ足を運んでくれていて、本当にうれしいです」と笑顔で語った。

「5年前のことになってしまうんですが、鋤田さんの写真展をプロデュースして、鋤田さんがこんなことをやっている人だとわかってもらえて嬉しかった。鋤田さんの人生って本当に映画みたい!」と長年付き合いのある立川が鋤田の印象を語った。

舞台に飾られたポスターに目が留まった立川が、ボウイとイギーの撮影のことを切り出すと、「このイギーの写真は、2回目のタイミングでソウルのスタジオを借りて撮影したんですよ。1回目は1977年、ボウイと一緒に来日した際に、それぞれ1時間ずつもらって撮影したんです。ボウイの圧倒的な表現力に、その時イギーは戸惑っていたみたいに感じました。でもソウルで2回目に撮影したときは、イギーは以前よりも自身で表現しようとしていてすごく表情が良かった」と鋤田が懐かしそうに語ると、立川が「運慶の仏像みたいでしたよね」と回答。「そうそう。イギーはいつも上半身裸で。今も昔もライブ中は裸でパフォーマンスして、かつ客席に飛び込んでましたよね。ボウイは着込んでカッコイイ。イギーは傷だらけになってもカラダで表現しようとしてたよね」と当時を振り返った。

映画の冒頭でも描かれている布袋寅泰の人生を変えたマーク・ボランのギターを持った写真の話しになると、「彼は群馬の小さな楽器店でマーク・ボランの写真に衝撃を受けて、ふと目線を下げたら店内にギターがあって、この道(=ミュージシャン)に進んだということを対談した時に聞いて。この一件にびっくりしたし、嬉しかった。自分の写真が役立って」と誇らしげに語った。

「今月に80歳の誕生日を迎え、国内外で写真展、そして映画、アーティストのポートレート撮影と、写真を通して多くの人に知ってもらい、巨匠といわれるようになってしまったんですよね。ポートレートの撮影が難しくなったような気がして。撮影の時は同等でありたいんです。“SUKITA”に撮られるという気持ちを撮影対象者が持ってしまうと同等ではなくなってしまうようで。有名にはなりたくないかな」と表現することの難しさを吐露。「国内外で写真展は数多くやってきたが、きっかけの時期かなと思っている。今後は風景やスナップに移ろうかな」と新たな挑戦を熱く語った。

最後には、5月5日に満80歳となった鋤田にお祝いのバースデイケーキならぬ“バースデイどらやき”が贈られて、満面の笑顔に。「映画も写真展も多くの人に見てほしいです。宣伝してください」とアピールしていた。

『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』
5月19日(土)より新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
監督:相原裕美
出演:鋤田正義 布袋寅泰 ジム・ジャームッシュ 山本寛斎 永瀬正敏 糸井重里 リリー・フランキー クリス・トーマス ポール・スミス 細野晴臣 坂本龍一 高橋幸宏 MIYAVI PANTA 是枝裕和 立川直樹 高橋靖子
配給:パラダイス・カフェ フィルムズ

【作品概要】 デヴィッド・ボウイをはじめ、世界的アーティストの代表的なポートレートやアルバムジャケットを数多く手がけてきた日本人写真家がいる―。鋤田正義、この5月で80歳。ボウイとの親交は40余年に及び、マーク・ボランを撮った1枚は、ギタリスト・布袋寅泰の人生を決定づけた。本作では鋤田自身が写真への情熱を語るだけでなく、錚々たるアーティストたちが貴重な撮影秘話を披露し、彼の人柄や創作活動に迫ってゆく。

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