クリント・イーストウッド監督最新作で、2015年に発生したテロ“タリス銃乱射事件”を描く映画『15時17分、パリ行き』が3月1日より上映中。このほど、イーストウッド監督が日本のために語ったインタビュー映像が公開された。
インタビュー映像では、本作の映画化のきっかけについて、イーストウッド監督が「すぐにこれはいいアイデアだとピンと来た。頭の中で映像化することから始まって、彼らと初めて会って事の次第をすべて聞かせてもらったんだ」と語り始める。主人公のスペンサー、アレク、アンソニーの3人の故郷であるサクラメントは、監督が青春時代を過ごした場所という共通点もあって興味をかき立てられ、何よりも違う家庭環境で親友として一緒に育った彼らを気に入り、いい作品になると確信したという。
主人公3人について、イーストウッド監督は「性格はまったく違っていて、それでいて非常によく似てもいる。同じ地元で同じ環境だからね。長年の固い友情でしっかりとつながっている。お互いにとても敬意を払っていて、自分の手柄だなどとは誰も言わないんだ」と、あうんの呼吸で結ばれた幼なじみのつながりを説明。3人が英雄視されることに違和感を抱いていることに対して、「彼らは単に自分たちがいるべき場所にいたのだと感じているようだ」と答えながらも、「アンソニーの父親はサクラメントの教会で牧師をしている。だから彼には宗教的な背景があって、今回の出来事を神が見守って、力を貸してくれたのだと考えている」と指摘した。そして、事件への遭遇に対する3人の捉え方はそれぞれ異なるが、彼らは基本的には“運命が味方してくれた”と感じていると明かした。
当事者本人を起用しての撮影は、「私はただそこに座って、みんながリラックスして考え過ぎないようにしていただけだった。緊張した雰囲気や会話は好きじゃない。だからみんなが普段通りにできるよう心がけた」と、現場の空気感を大事にしたと振り返る。現場では“アクション”という掛け声ではなく、“ムーブ”のひと言で撮影を進め、カメラを回してキャストと会話をしながら撮影したようだ。また、いきなり主役デビューを飾った3人には演技の才能があったことを認め、本人を起用するという挑戦の受け入れられ方については「観客がどう思うかなんて予想できない。作品は作品でしかない。あとは気に入ってもらえたら幸いだよ」とマイペースを崩さない。
もし自分が列車に居合わせていたらという質問には、「座席の下に隠れていただろうね。細くなって座席の下にいたさ」と笑いながら、「冗談さ。想像もつかない。誰もそんなことが起こるとは…。彼らだってあんな現場に遭遇するとは思っていなかったはずだ。何が起こるかなんてわからない」と、いつ、どこで何が起こるか分からない世界の今を考えながら答えている。続けて、テロリストに勇敢に立ち向かった3人は、自分たちの幸運にとても感謝していたことを付け加えた。
映画化を決める上で最も重要なことについて、イーストウッド監督は「例えば1冊の本を読むと、誰にでも好き嫌いや印象に残る作品が出てくる。私の場合はその時に心に残った話なんだ。数々の障害や長年の悩みや悪い記憶を克服するとかね。過去や背景があるキャラクターが好きなんだ。今回の3人の生い立ちにも背景がある」と述べ、続けて第65回アカデミー賞で作品賞、監督賞を始め4部門受賞に輝いた『許されざる者』を引き合いに出して説明する。「『許されざる者』は素晴らしい脚本で、主人公は己の過去に苦悩する人物だった。自らの行いを通じて、自分が犯した過ちの良い面と悪い面に対して向き合おうとするんだ。大事なのは良い物語であること、それが絶対的に重要だ」と、映画化を決定づけるのは“良い物語”であると断言している。
『15時17分、パリ行き』
3月1日(木)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他にて上映中
監督:クリント・イーストウッド
出演:アンソニー・サドラー アレク・スカラトス スペンサー・ストーン
配給:ワーナー・ブラザース映画
【ストーリー】 2015年8月21日、アムステルダム発パリ行きの高速列車タリスが発車した。フランス国境内へ入ったのち、突如イスラム過激派の男が自動小銃を発砲。乗務員は乗務員室に逃げ込み、500名以上の乗客全員が恐怖に怯える中、幼馴染の3人の若者が犯人に立ち向かった。
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