『心と体と』イルディコー・エニェディ監督 × 『勝手にふるえてろ』大九明子監督 映画美学校マスタークラス トークイベント レポート

映画『心と体と』の日本最速試写会と映画美学校のマスタークラスが、1月31日、アテネ・フランセ文化センターにて行われ、初来日中のイルディコー・エニェディ監督と、最新作『勝手にふるえてろ』が大ヒット公開中の大九明子監督が講師として登壇した。矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)の司会のもと、映画制作を志す学生など約100名に向け講義が行われた。

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本作は、ハンガリーはブダペストの食肉処理場で出会った孤独な男女がとある事件をきっかけに夢を共有していたことを知り、心を通わせていくラブストーリー。2017年ベルリン国際映画祭では審査員長をつとめたポール・ヴァーホーヴェンから絶賛され金熊賞(最高賞)など4冠を獲得したほか、本年度アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされている。

エニェディ監督は「たくさんの方に来ていただきとても嬉しいです。今日は二人の監督から映画制作者の方々へ何か伝えられることがあると思います」、大九監督は「監督の一ファンという視点でもお話を伺えたらと思います」と挨拶。お互いの最新作の感想を求められると、大九監督は「私が20年間、映画を撮るときに意識的に、無意識的にやってきたことがすべて詰まっている作品で、あらゆるところに共感する気持ちで拝見しました」と語り、エニェディ監督は「とても素晴らしかったです。主演の方(松岡茉優)の演技も素晴らしい。どんなに才能がある俳優がいても、演出家がきちんと演出しなければまったく意味を成しません。ユーモアも深さもあって、パワフル。ちょっとアニメーション的なところもあって、ダイレクトに伝わってくる、爽やかな風のような作品でした」と述べて称えあった。

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司会の矢田部より、講義の前に日本最速上映が行われた『心と体と』の着想について聞かれたエニェディ監督は「春先の美しい日に散歩をしていた時、私もすれ違う人も、表には全く見せないのに、心の中にはものすごくパッションがあるように感じて(このフィーリングを映画にしたら素敵だと思い)、すぐに家に帰って脚本を書き始めたんです」と述懐。「いつもは1年くらいかけて脚本を書くのですが、今回に関しては4週間で書き上げてしまいました。なぜだかわからないけれどまるで自動書記のように、ディテールまですらすらと。主役のふたりのキャラクターに関しては過去の設定など(事前に)何も考えませんでした」と、いつもと異なるスタイルで制作がスタートしたと語った。

矢田部が、エニェディ監督作には『心と体と』以外にも動物が出演する作品があると紹介し、本作で登場する鹿の撮影についての話題に。大九監督はその演出方法に興味津々の様子。本作については、何十頭もの候補から二頭選び、数か月かけてトレーニングを行ったうえ、人間らしく見えるよう撮影方法に気を遣ったという。大九監督がさらに「(頭の中にあったイメージ通りに)『三歩あるいて首を上げて…』と鹿が動くように、動物トレーナーさんにお願いしたんですか?」と尋ねると、エニェディ監督は「実はあれは脚本通りに撮れたんです。ものすごくラッキーでした。夕暮れのすごく短い時間の美しい光の中で、しかも雪が降ってきたりして」と明かし場内を驚かせた。

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最後に、来場者より「映画制作のパッションの源は?」という質問が出ると、エニェディ監督は「私にとって映画が一番効率の良い唯一のコミュニケーション方法。映画を通じて色々な人と語り共有したい。私は(ヒロインの)マーリアと同じようにコミュニケーションがとても苦手なので、今日はたくさんの質問をいただいてすごく嬉しいです。感想をいただくのが私にとっての喜びです」とにこやかに語った。

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『心と体と』
4月14日(土)より新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサほか全国順次ロードショー
監督・脚本:イルディコー・エニェディ
出演:アレクサンドラ・ボルベーイ ゲーザ・モルチャーニ レーカ・テンキ エルヴィン・ナジ
配給:サンリス

【ストーリー】 ハンガリー、ブダペスト郊外の食肉処理場。代理職員として働くマーリアはコミュニケーションが苦手で職場になじめない。片手が不自由な上司のエンドレは彼女を気に掛けるが、うまく噛み合わず…。そんな不器用な二人が急接近するきっかけは「同じ夢を見た」ことだった。恋からはほど遠い孤独な男女の少し不思議で刺激的なラブストーリー。

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