アランチャ・アギーレ監督が熱く語る!映画『ダンシング・ベートーヴェン』特別試写会 オフィシャルレポート

天才振付家モーリス・ベジャール没後10周年にあたる今年、ベジャールの代表作「第九交響曲」の舞台裏を捉えたドキュメンタリー映画『ダンシング・ベートーヴェン』が、12月23日より公開される。このほど、日本公開に先駆け、11月21日、本作の特別試写会(主催:在日スイス大使館/協力:アンスティチュフランセ東京)が実施され、来日中のアランチャ・アギーレ監督が上映後のトークショーに登壇した。スイス大使館文化部長ジョナス・プルヴァ氏と、本作製作の経緯や作品に込めた思い、そして敬愛するモーリス・ベジャールへの思いなどをたっぷり語った。

IMG_4822_toris

奇しくも試写会の翌日(11月22日)が10回目の命日にあたるモーリス・ベジャール。彼は古今東西の芸術を取り入れ、ベートーヴェン「第九交響曲」やベルリオーズ「ロメオとジュリエット」、ワーグナー「ニーベルングの指環」、そしてラヴェル「ボレロ」、ストラヴィンスキー「春の祭典」など、傑出した大作を次々発表した。さらに日本文化にも造詣が深く、三島由紀夫をテーマにした『M』、「仮名手本忠臣蔵」を基にした『ザ・カブキ』などを振付けており、バレエ界に革新をもたらした天才振付家として、いまなお色あせることなく世界中から愛され、日本にも多くのファンを持つ。

そんなベジャールの魅力について、アランチャ・アギーレ監督は、「私がベジャールの仕事の中で、最も惹かれたのは、喜び、歓喜、そして強いエネルギーです。これらがすべて観客に向かうことに非常に感銘を受け、魅了されました。彼は天才であり、彼の作品は時間を超えて生き続けるものだと思っています!」とベジャールのバレエスクールで学んだ経歴をもつアギーレ監督ならではの言葉で、改めてその功績に深い敬意を表した。

また、本作の中でダンスをどうとらえようとしたのかという質問にアギーレ監督は、「ダンスは演劇と同じように束の間の儚い芸術で、ライブであるダンス自体をフィルムに残すことは、その魅力を殺すようなものであるとも言えます。しかしながらカメラで撮影することによって、それらの痕跡を残すことはできる。ある種の感情やライブのスペクタクルが生み出す、いわば香りのようなものを残すことができればと思いました」と語った。

さらに、「私たちはダンサーに舞台以外の生活があるということを時に忘れてしまいます。私はこの映画の中で、ダンサーたちの舞台以外の生活やそこでの彼らの表情も見せたかった」とし、「撮影する中で一貫して奇跡のような瞬間を感じてきました。ちょうどベートーヴェンが生涯愛したシラーの詩のように、本作を通して様々な国籍を持つ人々と出会い、様々な文化の中で仕事をすることは私にとっても非常に大きな喜びでした」と当時を振り返り、上映後の感動冷めやらぬ満員の観客から大きな拍手が沸き起こり、イベントは終了した。

IMG_4832_toris▲アランチャ・アギーレ監督(左)と スイス大使館 文化・広報部長ジョナス・プルヴァ氏

dancingB_main

『ダンシング・ベートーヴェン』
2017年12月23日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA他にて公開
振付:モーリス・ベジャール
監督:アランチャ・アギーレ
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲「交響曲第9番 ニ短調 作品125」
出演:マリヤ・ロマン モーリス・ベジャール・バレエ団(エリザベット・ロス ジュリアン・ファヴロー カテリーナ・シャルキナ 那須野圭右 オスカー・シャコン 大貫真幹) 東京バレエ団(上野水香 柄本弾 吉岡美佳) クリスティン・ルイス 藤村実穂子 福井敬 アレクサンダー・ヴィノグラードフ 栗友会合唱団 ジル・ロマン(モーリス・ベジャール・バレエ団芸術監督) ズービン・メータ(イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団音楽監督)
配給:シンカ

【ストーリー】 スイス、ローザンヌ。「第九交響曲」出演のために過酷な練習に取り組むモーリス・ベジャール・バレエ団のダンサーたち。第二幕のメインをジル・ロマンから任せられた才能豊かなソリスト、カテリーナは踊る喜びに満ち溢れていた。しかしある日、カテリーナは妊娠が発覚し、メインを下ろされてしまう。一方で、お腹の子の父となるオスカーは生まれてくる子のために良き父親になろうとしていた。キャリアが中断されることへの不安と産まれてくる子供への愛情のあいだで揺れ動くカテリーナ。様々な想いを抱えながらダンサーたちは、東京での第九のステージに挑む。

© Fondation Maurice