映画『50年後のボクたちは』公開記念トークイベント! 星野概念「マイクとチックは人生について考える、よーいドンの時期」

ドイツの大ベストセラー小説を、『ソウル・キッチン』『消えた声が、その名を呼ぶ』の名匠ファティ・アキンが実写化した『50年後のボクたちは』が大ヒット公開中!「こんな経験したかった!」「心から大好きだ!と言える映画にめぐりあえた」などSNSでも反響が大きく、“今観るべき映画”の一本となっている。そして9月22日(金)には公開を記念して精神科医でミュージシャンの星野概念さんを迎えてトークイベントが行われた。

星野概念さん①

あいにくの雨の中、会場に集まった人達は、皆マイクとチックという2人の14歳に心を掴まれて、スカッと晴れ晴れした表情を覗かせていた。イベントに登壇した星野さんははじめに「リチャード・クレイダーマンのメロディは普遍的なもの。でもこの作品の中ではそれが甘酸っぱく、初期衝動的な曲に聞こえたのが印象的」と話し、14歳という大人でも子供でもない年齢が、人生の中でどんな役割を果たすのかについて精神科医の目線から語った。「14歳っていうなんとも絶妙な時期の2人ですが、学童期から青年期に移行するちょうど中間くらいの年齢なんです。学童期というのは、社会に出て行く準備が出来ていない人々のこと。そして、青年期は社会の中でどう生きて行こうかと考える人々のことで、マイクとチックはちょうど駆け出しの青年期なんですね。社会で生きることを考えるというのは、“自分は一体どういう人間なのか”ということを考えることで、それはアイデンティティ(=同一性)を獲得することなんですよ。青年期にはアイデンティティを獲得しなければいけないんです。その頃何をやっていたか、なんて僕はもう思い出せないんですけど、でもNBA選手になりたかったんですよね。身長の問題で断念しましたけど(笑)」と分かりやすく解説する星野さん。「マイクとチックもちょうどこの映画でよーいドンして出発しはじめたばかりです」。

星野概念さん②

本作の登場人物について、星野さんが特に印象に残っているのはチックだと言う。「まず第一印象であの髪型は誰だってビックリするでしょ!しかも学生っぽくない感じで学校に現れて14歳なのにお酒を飲んで運転してって…。周りになかなかいないですよね。実は18歳だけど14歳と偽っているんじゃないかってちょっと思うんですよ」とチックの見目のインパクトに驚いたと話すと、トークを聞いていた人たちもうんうん、と頷いていた。「彼がなんでお酒を飲んだり運転したり、普通は大人がすることをやっているのかと考えると、それは早く大人にならなきゃいけなかったんだと思います。アイデンティティを早く持たなければいけない理由があったんですよ。これは僕個人の考えですけど、チックはきっとお金持ちの大変な家庭環境の元に育ったのではないのかなと。大変な家庭で生きていくタフさを持って、サバイバル能力が身に付いた。自分がどう生きていくかということを考えなければいけなかったのだと彼を見て感じました」そしてマイクについては「お母さんは問題を抱えてて、父親からジャンプパンチ食らわされて、普通なら非行に走りそうなところだけど、家っていう居場所は確保されていたからグレなかった。まあ性格が穏やかなこともあると思いますが。イザについてはチックと同じくサバイバル能力がありますね」とそれぞれの個性的なキャラクターの内面部分についても語った。

映画の中で語られる『50年後のボクたちは』というタイトルの意味にもなった言葉について「彼らの言葉から、どうせいつか死ぬ、なんて想像はないだろうなと思いました。先のことを考えていない無謀さの魅力ってありますよね。でたらめな人の方がかっこいいもん。好きですね、そういう人」とチックとマイクの14歳だからこそのはちゃめちゃぶりを熱く語った。数々の少年ロードムービーものがある中で、そのジャンルがいつまでも廃れないことについては「全人類に共通することだから。パンチがあるし新鮮な体験だから、初恋より普遍的なものだと思います。『50年後のボクたちは』も共感できるんですよね」と本作が誰にでも親しむことの出来るものであると締めくくった。

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『50年後のボクたちは』
9月16日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
監督・共同脚本:ファティ・アキン
原作:ヴォルフガング・ヘルンドルフ(「14歳、ぼくらの疾走」)
出演:トリスタン・ゲーベル アナンド・バトビレグ・チョローンバーダル
配給:ビターズ・エンド  

STORY 14歳のマイクはクラスのはみだし者。同級生からは変人(=サイコ)扱い、両親の仲もうまくいっていない。そんなある日、チックというちょっと風変わりな転校生がやって来た。夏休み、2人は無断で借用したオンボロ車ラーダ・ニーヴァに乗って南へと走り出す。旅の途中で訪れる、いくつもの出会いと別れ。やがて無鉄砲で考えなしの旅は、マイクとチックにとって一生忘れることのできないものになっていく――。

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