山形国際ドキュメンタリー映画祭2017 東京・記者会見で全容を発表!

アジア初の国際ドキュメンタリー映画祭として 1989年から隔年で開催されてきた、山形国際ドキュメンタリー映画祭は、今年で記念すべき15回目を迎え、10月5日~12日まで8日間開催される。9月5日、東京某所で映画祭の全容発表となる記者会見が行われた。

2017東京記者会見

オープニング作品は『銀輪』『西陣』『つぶれかかった右眼のために』、クロージング作品は『表現に力ありや「水俣」プロデューサー、語る』に決まった。121の国と地域から応募された1,146本より厳選した15作品が上映されるインターナショナル・コンペティション部門では、『ニッポン国VS泉南石綿村』の原一男監督と『願いと揺らぎ』の我妻和樹監督が入選。日本人監督が揃って入選するのは、97年開催以来20年ぶりの快挙となる。また、アジアのドキュメンタリー作家を応援し、発表の場を生み出すことを目的とした、アジアの作家の成長を誰よりも強く望んだ小川紳介監督の意志を受け継ぐ意味を込めて「小川紳介賞」が設けられているアジア千波万波では、河瀬直美監督やアピチャッポン・ウィーラセタクン監督ほか、同部門での上映をきっかけに、国際映画祭の舞台へと巣立っていく作家が後を絶たない。今年のアジア千波万波部門は63の国と地域から645本の応募があり、上映作品21作品のうち日本の作品が3作品選ばれている。

今年の目玉となるのがアフリカ特集であり、関連イベントして、アフリカ音楽を味わいつくす「アフリカナイト」も行われる。また、『山の焚火』などで日本でも良く知られている、スイスを代表する映画作家のフレディ・M・ムーラー特集も注目だ。『最後通告』(1998)や『僕のピアノコンツェルト』(2006)といった劇映画は日本でも公開されてきたが、初期の実験映画や、芸術家を対象とするドキュメンタリー作品がまとまって上映されるのは、1986年にアテネフランセ文化センターが特集上映を組んで以来、三十年ぶりとなる。ムーラーは、山形で集団的映画製作を続けた、日本のドキュメンタリー映画作家・小川紳介とも親交があり、山形県牧野村を来日時に訪問している。ムーラーには、「山三部作」と呼ばれる作品(『われら山人たち』『山の焚火』『緑の山』)があるが、山や辺境に暮らす人々に焦点を当てた二人の映画作家の共通点や相違を見出すこともまた、YIDFF ならではの目的の一つと考えている。アラブに関する映画の特集として 3 回目となる『政治と映画:パレスティナ・レバノン 70s-80s』では、60年代末にはじまる世界的革命運動/闘争の中で、世界の映画人が、イギリス統治下の 1930年代にまで遡る「パレスティナ革命」に共鳴して作った「ミリタント映画」などを特集。

そして、本映画祭ならではの企画『やまがたと映画』では、「世界一の映画館」と言われながらも歴史的な大火の火元となった酒田市の伝説的映画館グリーン・ハウスをめぐる上映と展示、また、脚本家伊藤和典の実家である上山トキワ館にて撮影された押井守監督の実写作品の上映という、今はなき山形の二つの映画館についての企画を通して、我々と映画と地域を繋ぐ場所、映画館のマジックを浮かびあがらせる。

日本のいまを独自の視点で捉えたドキュメンタリーを紹介する日本プログラム、その他、特別招待作品として、本映画祭とも縁があり、作家として、批評家、研究者としても大きな功績を遺した松本俊夫監督を追悼し『薔薇の葬列』、三面マルチ上映『つぶれかかった右眼のために』ほかドキュメンタリー、実験映画の短中編を上映する。また、土本典昭監督の水俣シリーズなど数多くの記録映画のプロデューサー、故高木隆太郎氏の仕事に迫った『表現に力ありや「水俣」プロデューサー、語る』をクロージング上映。沖縄の現在にカメラを向け続け、最前線の現実を可視化する三上智恵監督の『標的の島 風かたか』。小川紳介と親交を結び、特集で取り上げるフレディ・ムーラーの代表作『山の焚火』。サンティアゴ国際ドキュメンタリー映画祭との友好企画として『盗まれたロダン』を特別上映。

最後にスペシャルゲストとして登壇したインターナショナル・コンペティション部門『ニッポン国 VS 泉南石綿村』原一男監督は「私はこれまで、尖った人たちを主人公に映画を撮ってきました。しかし今回の映画の主人公は、まったく尖っていない普通の人たちです。普通の人たちを撮るのがこんなにも難しいのかと、七転八倒しながら制作しました」とコメント。同部門『願いと揺らぎ』我妻和樹監督は「「コンペ出品のお知らせをいただいてびっくりしました。多くの人に観ていただきたい内容になっています」とコメントした。

<山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017 開催概要>
会期:10月5日(木)~12日(木) 8日間
会場:山形市中央公民館(アズ七日町)、山形市民会館、フォーラム山形、山形美術館、とんがりビル KUGURU ほか
公式 HP: www.yidff.jp/home.html