詩人・菅原敏が登壇!ジム・ジャームッシュ監督最新作『パターソン』トークイベントレポート!!

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『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)や、『沈黙-サイレンス-』(16)に出演し、今やハリウッドの次世代を代表する俳優となったアダム・ドライバーが主演。「君の事を思いながらこのシーンを書いた」というジム・ジャームッシュ監督たっての希望で、永瀬正敏が『ミステリー・トレイン』(89)以来 27 年ぶりにジャームッシュ作品に再出演を果たした映画『パターソン』。本作でも、ジャームッシュの独特でオフビートな作風は健在、カンヌでも絶賛を受け、まさにこれまでの彼のフィルモグラフィの一つの到達点と呼べる傑作となった。

8月26日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開となる映画『パターソン』の公開を記念して、詩人である菅原敏を招いたトークイベントが、8月12日にブルーボトルコーヒー 青山カフェで行われた。

異業種とのコラボレーション、ラジオやテレビでの朗読など、幅広く詩を表現する詩人の菅原敏が登壇し、参加者にはイベントをイメージしたドリップコーヒーとワッフルが提供され、和やかな雰囲気の中、トークイベントが開催された。

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印象に残ったシーンとジャームッシュ作品について
「映画中のセリフで“詩の翻訳はレインコートを着てシャワーを浴びるようなものだ”というがあるのですが、最近私の方も超訳をした本を出したので、気に入っています。ジャームッシュは、詩を書くキッカケになった監督であり私のルーツの一つで、初期の作品に出ていたトム・ウェイツやジョン・ルーリーといったミュージシャンから紐解いたアメリカの詩人に興味を持ちました。今作は、オフビートな感じで、これまで監督が積み重ねてきたものが詰まっていて、素敵だなと感じました」

映画に印象的に登場するマッチ箱について
「映画を象徴するシンボルみたいなもので、主人公の暮らしはマッチ箱の中のように小さな生活なんだけど、暖かさがある」と話し、詩人として、主人公との暮らしと自分自身を重ね合わせた詩も朗読した。

主人公の視点について
「バスの運転をしている時も、自分の目とどこか上の方から観察する目を持っていて、“詩人は時代を見つめるものだ。客観的に見つめる目を持つこと”と言われますが、パターソンもそういう眼差しを持っていると感じます。私自身もそういう目を持っているといいなあと思います」
「主人公は、生活のどこにもある詩情をポケットに入れて持ち帰って、なんでもないようことに隠れている小さな宝石を見つけて過ごしていて、豊かな暮らしだと感じました」

詩の制作について  
「朝起きた瞬間は夢が残っていたりして、夢と現実がくっついたりする瞬間があるので、朝の時間は面白いですが、もっぱら締め切りに向き合うのは深夜です(笑)」
 
詩とカフェについて  
「コーヒーをテーマに1日1遍の詩を書くという企画があって、そのときには毎日いろんな喫茶店にいって、コーヒーの風景を見ていましたし、普段もコーヒーを飲みながら、外で詩情に浸ります。流れている時間の中で、コーヒーを飲むことが句読点になりますね」
 
ブルーボトルコーヒーでは、コーヒーそのものを体感してもらうために、シンプルなグラスカップにしていることを聞いて  
「この空間もシンプルで、居心地よく、コーヒーが映えますね。本作も過度な装飾めいたものがなくて、シンプルですね」  

詩の表現方法について  
「ビート世代の詩人たちが憧れであり、詩人になるキッカケだったのですが、彼らは黒人のジャズをバックに詩を読むというスタイルで、言葉と音の着地点としてその詩人がいた。そういうところから私の詩は生まれているのだと思います」
 
イベントの最後には、菅原自身の著書「かのひと 超訳 世界恋愛詩集」(東京新聞出版局)から映画にもその名が登場するエミリ・ディキンスンと、クリスティーナ・ロセッティの詩が朗読され、参加者はその詩に聞き入った。また、イベント終了後には参加者に劇中のパターソンのお弁当をイメージしたランチボックスが提供された。

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『パターソン』
8月26日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町/ヒューマントラストシネマ渋谷/新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:アダム・ドライバー ゴルシフテ・ファラハニ 永瀬正敏  
配給:ロングライド

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