「ヒトラーは当時の日本人にとって…」海老名香葉子が語る衝撃の体験談。映画『ハイドリヒを撃て!』トークイベント付き特別先行試写会レポート

第二次世界大戦直下にチェコの統治者でホロコーストを推し進めたナチスNo.3、ラインハルト・ハイドリヒ暗殺を描いた史実サスペンス『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』。本作のトークイベント付き特別先行試写会が8月8日(火)、アキバシアターで行われ、随筆家の海老名香葉子が登壇した。

海老名香葉子さん1

本作はナチスを題材にした映画のひとつで、1942年に実際にチェコで起きた事件を取り上げている。その当時の日本について聞かれた海老名は、「子供たちがヒトラー!ヒトラー!と叫んでいました。ヒトラーは当時日本人の中では神様のような存在でした」と振り返り、今では考えられない状況に観客を驚かせた。幼少期から新聞を読んでいた海老名は、後々ヒトラーが恐ろしい人物であったことを知り、「なんて人がいたのか。独裁者一人のためにどれだけの人が苦しみ、犠牲になり、死んでいったのか分からない…。そんな思いでした」と語った。本作では、ラインハルト・ハイドリヒを暗殺するため、7人のチェコの兵士たちが立ち上がる。彼らの行動に海老名は、「命を惜しまない愛国心に浸りきった方たちでしたね。私も愛国少女でした。小学5年生のとき、駿河湾から敵船が上陸するかもしれないと毎日竹やり訓練をしていました。教師からは『敵兵はお前たちの倍の大きさがある。だから突くときは上の方を突け!』と指導されていました」と、子供までも巻き込む戦争のむごさを語った。

戦争の体験者として後世へ反戦争について執筆を続けている海老名。「広島、長崎、沖縄には慰霊塔がありますけれど、東京にはないんです。私は東京大空襲で家族を失いましたが戦争孤児ではないのです。というのも、親族の遺体が見つかっていないので、遺族とはみなされない。なので3月10日に行われる慰霊祭には参加できません」と述べ、「遺族の遺体が見つかっていないということは、孤児の証明書が出ない。なので配給も受け取れませんでした。本当に生きる戦い、苦しい時代でした」と手を固く握りしめながら当時の体験を述べ、戦争の悲惨さを伝えた。

最後に本作について、「私はこの作品を二度観ました。部屋を真っ暗にして作品に入り込みました。涙があふれて止まらなかったです。そして、戦争というのはなんと愚かで悲しいものなのかと、何万人も人が死んでいるのにも関わらず、勝者は拍手するばかり。戦争ほど恐ろしいものはないと教えていくれる作品。主演の二人も演技ではないのではないかと疑ってしまうくらいこちらも見入ってしまい、目を離してはいけないと強く感じました。ぜひ観ていただきたいです」と、感想とともに反戦争への熱いメッセージを残し、客席からは拍手が沸き起こった。映画『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』は8月12日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

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『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』
2017年8月12日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:ショーン・エリス
出演:キリアン・マーフィ ジェイミー・ドーナン ハリー・ロイド シャルロット・ルボン アンナ・ガイスレロヴァー
配給:アンプラグド

STORY 第二次世界大戦直下、ナチスはヨーロッパのほぼ全土に占拠地域を広げていた。ヒトラーの後継者と呼ばれ、ナチス第三の実力者であるラインハルト・ハイドリヒは、ユダヤ人大量虐殺の実権を握っていた。イギリス政府とチェコスロバキア亡命政府はハイドリヒ暗殺計画を企て、ヨゼフ(キリアン・マーフィ)、ヤン(ジェイミー・ドーナン)ら七人の兵士の暗殺部隊を、パラシュートによってチェコ領内に送り込む。ヨゼフとヤンはプラハの反ナチス組織や家族と接触し、暗殺計画を進めていく。ついに無謀なミッションは実行されるが、ハイドリヒ襲撃に憤慨したナチスは常軌を逸する残虐な報復を始める。

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